作成日:
2025年12月5日
更新日:
2025年12月16日

精神疾患の経験があっても仕事はできる?精神障害と向き合いながら働く方法

▼この記事の3つのポイント

  • 精神疾患や障害を抱えていても、自分らしく働くことはできる
  • 自身の状態や性質を理解したうえで、症状に合った職場・仕事を選ぶことが大切である
  • ストレスサインを把握して、心の負担をケアしながら働ける

精神疾患・精神障害の経験があっても働ける……?

頭を抱える女性
出典:photoAC

精神疾患や精神障害の診断を受けた際「自分はもう仕事ができないのでは」「今まで通り働けないのでは」と不安を抱く方も多いでしょう。

結論からいうと、精神疾患や精神障害を患っていても、働くことはもちろん可能です。そのうえで、より無理なく自分らしく働くためには、精神疾患や精神障害の特徴に応じた「仕事の選び方のコツ」を知ることが大切です。

今回は、精神疾患と向き合いながら働くポイントや、仕事探しに役立つサービスなどをご紹介します。自分の心を守りながら働くポイントを知り、仕事と治療の両立を目指しましょう。

知っておきたい。精神疾患の種類について

医療現場のデスク
出典:photoAC

自分とマッチした仕事を見つけるためには、自身が抱える精神疾患の特徴について理解を深める必要があります。以下に、厚生労働省が取り上げている「精神疾患(精神障害)の代表的な特性」を記載します。

  • 統合失調症……幻覚や妄想が特徴的。意欲や集中力が低下し疲れやすくなる。
  • 気分障害……気分の波が症状として現れる。うつ病や双極性障害などが含まれる。
  • てんかん……一時的に脳の一部が過剰に興奮し、発作が起こる。意識消失やけいれんなど発作のタイプは、個人により異なる。
  • 依存症……自らの力では制御できないほど過度に依存している状態。アルコール・薬物・ギャンブルなどが代表的。
  • 高次脳機能障害……脳にダメージを受けることで生じる、認知や行動に影響を及ぼす障害。記憶障害や注意障害などを含む。

仕事探しでは、まず「自分はどの精神疾患に当てはまるのか」を把握したうえで、状態や症状に応じたリサーチを進めていきましょう。

以下の記事では、精神疾患の種類を一覧で解説しています。病名や症状についてさらに詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

出典:厚生労働省「精神障害(精神疾患)の特性(代表例)」

精神疾患と向き合いながら仕事するためのポイント

コーヒーを持つ女性
出典:photoAC

ここでは、精神疾患と向き合いながら仕事するためのポイントをご紹介します。精神疾患を抱えながら働く際は、苦しみを気合いで乗り越えようとするのではなく、疾患の症状に寄り添った対処が必要です。長期的に働き続けるためにも、心や生活を安心・安定させていきましょう。

まずは主治医と相談して、OKをもらう

精神疾患を抱えていると、冷静なつもりでも視野が狭まり、判断力が低下しがちです。働き方を決める際は自己判断せずに、まずは主治医と相談してOKをもらいましょう。精神疾患において、主治医は往々にして「自分より冷静に自分の状態を判断できる存在」です。

症状の波や薬の副作用、ストレスとの相性など医療的な視点を踏まえて、判断してもらうことが大切です。自分は「今すぐ働きたい」と思っていても、主治医が「NO」と言うのであれば必ず理由があります。

日常生活のリズムをしっかりと整える

安定して働き続けるためには、仕事以前に生活リズムが安定している状態が求められます。具体的には、十分な睡眠時間・規則正しい食事・適度な運動や休息です。これらが整っていない環境では、精神的に健康な人であっても体調を崩してしまうでしょう。

精神疾患を患いながら働くのであれば、なおのこと日常生活のリズムを整えることが大切です。まずは現在の生活リズムから見直しつつ「仕事を始めても今のリズムがキープできるのか?」を基軸に考えて判断していきましょう。

自分が安心して働ける条件を整理する

「安心して働ける条件」は、人によって異なります。たとえば残業が無いことなのか、人との会話が少ないことなのか、在宅業務で完結することなのか。自分にとっての優先順位を決めて尊重することで、長期的な就労につながります。

条件を整理するためには、精神疾患の症状や重さへの理解が必要です。「自分がストレスを感じる要素や環境」を洗い出し、安心して働ける条件をまとめましょう。具体的な条件を挙げられるのであれば、仕事探しがスムーズになるだけではなく、職場とのミスマッチも防止できます。

無理なく働き続けるための職場と環境選びとは?

仕事現場
出典:photoAC

ここでは、精神障害がある人が無理なく働き続けるための「職場選びのポイント」をご紹介します。職場の環境は、精神障害の悪化や好転に直結する要素です。主治医やカウンセラーとも相談しながら自己理解を深め、後悔のない職場選びにつなげていきましょう。

疾患を踏まえたうえで業務を選択する

無理なく働き続けるためには、精神疾患を踏まえたうえで業務を選択する姿勢が必要です。苦手な業務を避けることは、甘えでも逃げでもありません。自分の状態や特性に客観的な理解を持ち、得意な領域や負担の少ない業務を整理しましょう。

「症状の悪化や再発の要因を避ける環境」を知るためには、主治医との相談も求められます。安定して働きたい人にとって、疾患への理解や業務内容の調整は重要な工夫といえます。自分の状態に合った仕事を選べれば、心身の負担を抑えながら能力を発揮できるでしょう。

柔軟な働き方ができる制度があるかどうかを確認する

精神疾患を抱えながら働く際は、将来的な症状の悪化に備えられると安心感が高まります。もちろん「ずっと元気に仕事を続けられる」のが1番ですが、実際には環境の変化に応じて症状が悪化するケースも少なくありません。

対応策として、柔軟な働き方ができる会社のリサーチが挙げられます。たとえば時短勤務やフレックス制度、在宅勤務、時間調整制度(通院のため)などの制度がある会社であれば、状況に合った働き方を選択しやすいでしょう。制度の有無だけではなく「実際に利用しやすい雰囲気かどうか」もチェックしたいポイントです。

職場の雰囲気やサポート体制を見極める

働きやすい職場の条件には、現場の雰囲気やサポート体制なども含まれます。精神障害を抱えながら働く際は、実際に働く人の口コミや定着率なども調べましょう。安心感のある雰囲気の職場を選べば、業務で困難が生じても不安を抱えにくく、症状の安定につながります。

たとえばトラブル時にフォローしてもらえる文化があるか、無理を強いられないか、上司や同僚に相談しやすいかなどは仕事選びで重要な要素です。また産業カウンセラーやカウンセリングルームなどを備えている会社であれば、メンタルヘルスへの理解が深いことが期待できるので、安心して就労しやすいでしょう。

精神疾患・精神障害の有無を職場に伝えるべき?

頭を抱える男性
出典:photoAC

精神疾患・精神障害を抱えながらの仕事探しでは「疾患や障害の有無を正直に伝えるべきだろうか」と悩みがちですよね。ここでは、オープン就労(伝える)とクローズ就労(伝えない)のメリットとデメリットをご紹介します。それぞれの特徴を理解したうえで、後悔のない就労につなげましょう。

オープン就労|精神疾患・精神障害があることを伝える

オープン就労は、企業に障害を開示したうえで、理解や配慮を得ながら働く方法です。

【オープン就労のメリット】

  • 自分の体調に合わせた配慮(時短・休憩・業務調整)を受けやすい
  • 無理のない働き方を上司や同僚と共有できる
  • 通院や急な体調変化に理解を得やすい
  • 障害者雇用枠で採用されると働き方の自由度が高い
  • 困ったときに相談しやすく、サポートを得やすい

【オープン就労のデメリット】

  • 病気への偏見がある場合、評価に影響する可能性がある
  • 任される業務が限定される場合がある
  • 昇進・昇格などに制限が生じることがある
  • 疾患について説明する心理的負担が大きい
  • プライバシーに関わる情報を伝えるため不安が残る

オープン就労は安心して働ける環境を整えやすい反面、偏見による評価の影響や業務範囲の限定などのデメリットも存在します。職場の理解度や文化によって、働きやすさが大きく左右するといえるでしょう。

クローズ就労|精神疾患・精神障害があることを伝えない

クローズ就労は、障害を隠して一般枠で「健常者と同じ条件や環境」で働く方法です。

【クローズ就労のメリット】

  • 病気を理由に採用や評価で不利になりにくい
  • 希望する業務やキャリアを選びやすい
  • プライバシーを守れる
  • 自分のペースで病状をコントロールしやすい
  • 企業によっては一般枠のほうが待遇が良い場合がある

【クローズ就労のデメリット】

  • 無理をして働き続けてしまい、悪化リスクが高まる
  • 通院や体調変化への配慮を受けにくい
  • 相談相手がいないため孤立しやすい
  • 体調不良による欠勤が理解されにくい
  • 休職・復職の際にスムーズな調整が難しい場合がある

障害や疾患を開示しないクローズ就労では、キャリアの幅が広がりやすいメリットがあります。しかし職場から配慮が得にくい点は、症状の悪化につながるのがデメリットです。自分の体調管理が十分にでき、症状が安定している段階で検討することが推奨されます。

障害者雇用枠や特例子会社で働くのも選択肢のひとつ

和気あいあいとした職場
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精神疾患や精神障害を抱える人の就労では、障害者雇用枠や特例子会社で働くのも一つの手段です。ここでは、障害者雇用と特例子会社の意味・特徴をご紹介します。

※企業によっては、特例子会社は「障害者雇用枠内の制度」という認識もあります。詳しくは、志望企業ごとの制度や仕組みをご確認ください。

障害者雇用枠とは?

障害者雇用枠とは、法律で定められている「障害者の採用枠」です。40人以上の従業員を雇っている会社であれば、障害者を枠内で1人以上雇用する必要があります。

障害者雇用枠で就労するメリットは、障害に対する配慮が期待できることです。地域によっては、一般就労よりも簡単に就職が決まりやすいケースもあります。

以下の記事では、障害者雇用枠についてさらに詳しく解説していますので、あわせて参考にしてくださいね。

特例子会社とは?

特例子会社とは、障害者の雇用促進を目的として設立された子会社です。障害者を雇用する点では、障害者雇用枠と同様です。

しかし特定子会社は「障害者雇用を前提として設立されている」ため、一般的な障害者雇用よりもサポート体制が充実している傾向にあります。また特定子会社は大企業のグループ会社であるケースが多いため、安定した就労が望める点もメリットです。

以下の記事では、特例子会社についてさらに詳しく解説しています。

仕事を安心して続けるためのセルフケアのポイント

仕事をする女性
出典:photoAC

ここでは、精神疾患や精神障害を抱える人が、安心して仕事を続けるための「セルフケア」についてご紹介します。仕事の満足度や職場の安心感は、人生そのものにも大きな影響を与えるものです。穏やかな心理状態で働き続けるために、今からできる準備を進めていきましょう。

自分のストレスサインを知っておくことが大切

安心して仕事を続けるためには、自分ならではのストレスサインを把握することが大切です。ストレスサインは人によって異なりますから、まずは過去にストレスを受けたときの自身の変化を振り返ってみましょう。

  • 夜眠れなくなる(夜更かしが増える)
  • 読書や映画鑑賞など、集中力が必要な娯楽を楽しめなくなる
  • イライラしやすくなる(感情をコントロールできなくなる)
  • 指を噛んだり髪を抜いたりなど自傷行為が増える
  • 肌が荒れたり蕁麻疹が出たりなど、身体的な症状が出る
  • お風呂に入るのが億劫になる など

自己判断だけではなく、家族や主治医から見たときのサインも教えてもらえれば、自分の状態をより客観視しやすくなります。

困ったときの相談先や逃げ道を作っておく

「困ったときや悩んだときに頼れる場所がある」と思うだけでも、精神的に安定した就労につながります。仕事を始める際は、相談先や逃げ道を作っておきましょう。

ヘルプを出せる場所は多いに越したことはありませんが、多ければ良いというわけではありません。家族やカウンセラーなど、少数でも心から信頼できる存在がいることが重要です。

安定して仕事を続けるコツは、適度にガス抜きすること。とくに自分に厳しい人は、苦しみを一人で抱えやすい傾向にあります。支えや逃げ場を用意することも、大切なセルフケアの一つなのです。

完璧を求めず、60点を目指すことがおすすめ

心身に負担を抱えながら働く際は、完璧を追い求めないことを意識しましょう。そもそも、精神的に苦しい状態で仕事を探し、就労に結びついたこと自体が、素晴らしい結果なのです。

100点を求める働き方はストレスを増やし、症状悪化の原因になります。向上心はそのままに、まずは「60点を目指す働き方」を心がけましょう。

真面目で誠実な人であるほど、精神疾患や障害は再発しやすい傾向にあります。「疲れたら休んでも良い」「自分の速度で成長できれば良い」という気持ちを持ち、心が穏やかな状態で働けるペースをつかみましょう。

ひとりで悩まないで。仕事探しに役立つ機関やサービス

仕事
出典:photoAC

ここでは、精神疾患や精神障害を抱える人が仕事を探す際に、役立つ機関やサービスについてご紹介します。仕事選びでは、自分の力だけでもがく必要はありません。就労のプロフェッショナルたちのサポートを受けながら、無理のないペースで探していきましょう。

就労移行支援・就労継続支援

就労移行支援では、以下の内容を支援します。

  • 一般企業での就労に必要な知識・スキル習得のための訓練
  • 求職活動への支援(必要書類のサポートや面接練習など)
  • 実習先や就職先を探すサポート(障害者雇用を検討している企業の訪問)
  • 就職後の相談支援(定着を見据えた相談やアドバイス)

就労継続支援は「疾患や障害などで一般企業へ就労することが難しい人」のために提供される福祉サービスです。就労継続支援事業所と呼ばれる事業所で働き、就労や生産活動の機会を提供します。

ハローワーク

ハローワークは、厚生労働省が運営する「総合的雇用サービス機関」です。仕事を探している人を対象に、以下のようなサービスを無料で提供してもらえます。

  • 職業訓練の申し込み
  • 職業相談
  • 求職申し込み
  • 雇用保険の手続き
  • 求人情報の閲覧 

職業訓練では必要な技能や知識が身につき、無料で資格取得まで目指せます。ITスキルや建設、福祉、美容などさまざまなジャンルのコースが用意されているため、自分らしい就労の実現に近づける点が魅力です。

障害者雇用専門の転職・求人サイト

障害者雇用専門の転職・求人サイトでは、個々の状況に配慮した求人を探せます。業務内容や通院配慮なども、一般求人ではわかりにくい情報が明確に掲載されているため、安心感をもって仕事探しができます。

数あるサイトのなかでも、とくにおすすめしたいサービスが『デコボコエージェント』です。デコボコエージェントでは、障害・特性への配慮などの細かな条件を設定できます。自ら応募するだけではなく企業からもアプローチがあるため、1人で探すよりも多くのチャンスに恵まれます。

精神疾患があっても大丈夫。自分らしい働き方を見つけよう

笑顔の女性
出典:photoAC

今回は、精神疾患や精神障害の経験がある人の就労についてご紹介しました。

私たちは一人ひとり異なる性質や性格を持っています。思考パターンや心の強さ、ストレスを感じる条件なども、それぞれ違って当たり前です。自分らしく働ける職場を探すことは、決してワガママでも甘えでもありません。

仕事選びでは焦らないこと、無理しないことが大切です。心が苛まれるのではなく、心が満ち足りて達成感を抱けるような職場を探しましょう。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の治療法や診断を推奨するものではありません。症状にお悩みの方は、必ず医師などの専門機関にご相談ください。

[ライター]山口 愛未

2017年にWebライターとして活動を開始し、数多くのメディアでライターとして活動。年間1,000本以上記事を制作する専門ライター。子ども教育やメンタルヘルス関連のメディアでの活動実績が多い。

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