【発達障害】仕事でミスばかりしてしまう理由|今すぐできる対処法も解説
▼この記事の3つのポイント
- 発達障害に仕事のミスが多いのは、脳の働きが独特だから
- 障害の程度や特徴に応じた「自分なりの対処法」を見つけよう
- 配慮を受けながら働く選択肢を知ることも大切
仕事でミスばかり…そんな自分が嫌になる…

発達障害がある方は、普通の人以上に「得意」と「不得意」の差が生まれやすいものです。ときには「誰にでもできることができない」と悩んでしまうこともあるでしょう。対策のためには、自分の特性に応じたベストな改善方法を取り入れる必要があります。
今回は発達障害で悩む方のために、仕事のミスを減らす方法やミスした後の適切な行動についてご紹介します。がむしゃらに覚えようとするだけでは、心がすり減ってしまうものです。特性ごとの対策を踏まえ、ストレスが少ない方法でミスを減らしていきましょう。
発達障害のある方が仕事でミスが多くなりやすい理由

ここでは、発達障害のある方が仕事でミスが多くなりやすい理由をご紹介します。発達障害は、普通とは少し異なる脳の働きを持っているのが特徴です。行動やコミュニケーションの癖や傾向を把握し、自分に合った改善方法につなげていきましょう。ストレスのない環境づくりには、深い自己理解から始めるのがおすすめです。
情報を一時的に覚えておく「ワーキングメモリ」に特徴がある
発達障害のある方は、脳のワーキングメモリに独特な特徴があります。ワーキングメモリとは作業記憶とも呼ばれ、仕事や日常生活における情報を一時的に記憶する能力です。発達障害のある方は、ワーキングメモリが低い傾向にあります。
たとえば注意欠陥多動性障害(ADHD)ではワーキングメモリが低いことから、何に注意をするべきかわからず、忘れ物や遅刻に悩まされがち。学習障害(LD)では、一時的な記憶力の低さが計算や推論、読み書きに影響を与える可能性があります。
注意を持続させたり切り替えたりする機能に特徴がある
注意の持続や切り替えにも、発達障害ならではの特徴があります。上記のワーキングメモリの低さも同様で、短期的な記憶力を保ちにくいため注意が持続できず、今見たものをすぐに忘れてしまいがち。
また脳のプランニングの低さにも特徴があります。プランニングとは、指示された情報に対して、効果的な解決方法を決めるための機能です。優先順位を決めるのが苦手であるため、やることがわかっていてもなかなか進まず、注意力や集中力が持続しません。
曖昧な情報や暗黙のルールの処理が難しい
発達障害のある方は、曖昧な情報や暗黙のルールを理解することに対して、ハードルの高さを感じます。たとえば「これ、適当にやっといて」という指示は、発達障害にとって超難問。「適当ってどれくらい?」「手を抜いていいの?間違えててもいいの?」と頭がグルグルして思考がフリーズしてしまいます。
コミュニケーションで空気を読むのも苦手な傾向にあり、普通の人であれば言わないような言葉を言って周囲をギョッとさせることも。当人に悪意はないのですが、周りからは「変わっている人」「空気が読めない自分勝手な人」と認識され、孤立してしまうことが珍しくありません。
ADHDとASDの特性が重なり合い、原因が複雑になるケースも
発達障害と一言でいっても、その種類はさまざま。複数の発達障害が重なり合っていると、専門医でも原因を解明しにくく、問題の解決が複雑になるケースもあるようです。ADHDと自閉スペクトラム症(ASD)の重複が代表的であり、当人に合う対処法を見つけるまで長い期間を有する場合があります。
たとえば対人コミュニケーションを一例に挙げると、ADHDは話の脱線や聞き逃しなどが特徴的。ASDは空気を読むのが苦手な点や一方的な会話になりやすい点が特徴的です。両方の特性が重複する場合、当人はさまざまなケースの失敗を体験しているため、明確な原因や「一番なくしたい失敗パターン」が自分でも認識しきれず、診断を困難にします。
ミスが多いのは、怠けているからではない

発達障害は脳の特徴が独特です。脳の働きは気合いや根性ではコントロールできません。眩しいものを見たら思わず目をつむるように、脳から発せられる信号に従っているだけなのです。発達障害のある人のミスは、決して怠けではありません。
しかし発達障害の有無は見た目からはわからないため、職場や学校では「何度も同じミスをするからやる気がない」「本当はわかっているのにわからないフリをしている」と誤解をされてしまいがちです。
とくに「発達障害を周りにオープンにしたくない」と思っている人は、日々多くのストレスを抱えているでしょう。発達障害は悪いものではないという前提のうえで、周りとより円滑にコミュニケーションを取れる働き方を身につけていくことが大切です。
仕事のミスを減らすために今日から試せる対処法

ここでは、発達障害のある方が仕事上のミスを減らすための対処法をご紹介します。発達障害はあくまで特性であり、能力そのものではありません。特性を理解すれば効果的な対処法がわかります。自身の障害の特徴を振り返りながら、無理なく始められる対策を探していきましょう。
タスクを見える化して抜け漏れを防ぐ
発達障害のある方がミスを減らすためには、タスクを「見える化」させて抜け漏れを防ぐ方法が有効です。やるべき業務を頭の中だけで管理するのではなく、ToDoリストやリマインダーなどに書き出す習慣をつけましょう。
メモはデスクの上やパソコンの画面脇など、つねに視界に入る場所に置くことが大切です。大きなタスクと小さなタスクに分解して記載すれば、優先順位も把握しやすくなります。その結果「何から取り組むべきかわからない」という課題も解決しやすくなるでしょう。
発達障害のある方はワーキングメモリが低い傾向にあるため、脳のメモリをなるべく使わない取り組みが効果的です。情報や記憶を視覚化させて脳の外に追い出すことで、つねに最新の状態を把握しやすくなります。
口頭での指示はその場でメモに残す
ワーキングメモリが低い発達障害は、口頭で指示を受けてもすぐに忘れてしまいがちです。言われたことをしっかり覚えておくために、指示はその場でメモに残す習慣をつけましょう。注意したいのは「後で書こう」をしないこと。メモ書きを後回しにすると、メモを書く行動すらも忘れてしまうリスクがあります。
行動の目安としては、指示を受けた瞬間にノートやメモ帳を開くことが大切です。いつでも取り出せるようにポケットに入れて持ち歩き、耳から入った情報をリアルタイムで記録していく習慣をつけましょう。
また思い込みでメモを取らないために、書き終えたらその場で「~ということでお間違いないですか?」と確認も取ります。聞き間違いや解釈違いを防げるだけではなく、本気で仕事に取り組む姿勢が伝わり「やる気がない奴」といった誤解防止にもつながります。
チェックリストを使って確認の手順を固定する
発達障害のある方がミスを減らすためには、チェックリストを最大限活用していきましょう。「やった・やってない」が一目でわかるチェックリストは、発達障害のビジネス必需品。確認の仕組みづくりから取り組むことで、注意不足によるミスを根本から解決できます。
とくに何度も同じ部分でミスしている場合は、今日からでもチェックリストを作成しましょう。信じるべきは自分の記憶ではありません。「目の前のチェックリスト項目にチェックが入っているかどうか」だけが真実である、と割り切りましょう。
もちろんチェックリスト導入時は、やったらすぐに書きこむ習慣づくりも大切です。確認の際は目で見るだけではなく、指さし確認や声だし確認も取り入れると確実性が上がります。まずはメールの送信前や書類の提出前など、ルーチンワークからリスト化してみましょう。
マルチタスクを避けて一つずつ取り組む
発達障害のある方は、マルチタスクが苦手な傾向にあります。複数の業務を同時にこなそうとすると、脳がオーバーヒートして思考が停止してしまいがち。無理して取り組んだ結果、どのタスクも中途半端な達成度になってしまった経験がある方も多いのではないでしょうか。
たとえ複数の業務を頼まれた際も、実際に着手・思考するのは一つだけに絞りましょう。「今はこれだけをやる」と意図的に意識を切り替え、ほかのタスクは視界から外す習慣をつけてください。タイマーを使って「一つの作業に取り組む時間」を明確に区切ると、脳も作業も切り替えやすくなります。
社会人である以上、マルチタスクから完全に逃れることは困難です。だからこそ、一つを確実に終わらせてから次の作業に移る取り組みを始めましょう。マルチタスクを「シングルタスクの連続」と捉えれば、全体を効率的に終わらせやすくなります。
スケジュールや締め切りを目に見える形で管理する
チェックリストの項でも触れたように、発達障害のある方は「あらゆる情報を見える化させる取り組み」が重要です。スケジュールや締め切りに関しても同様に、視覚的に管理できるかたちに切り替えていきましょう。
発達障害のある方にとって、時間という見えない概念は大敵です。カレンダーやガントチャートのツールなどを活用し、数字やマス目で時間・期間を管理できる体制をつくりましょう。デスクの目立つ位置にカレンダーを配置するだけでも効果的です。
また締切日や重要な取引などは、赤文字やマルなどで目立つように装飾をすること。文字だけで記すのではなく、見るからに重要であることがわかるような装飾を施すことで、確認ミスを防げます。タイマーを設け、数日前や数時間前から「残り日数・残り時間」を表示するツールを使うのも効果的です。
集中しやすい作業環境を自分でつくる
発達障害の種類によっては、周りの環境によって注意力が散漫になりやすいことも。注意力が低い状態で取り組んだ仕事にはミスが多くなります。精度の高い仕事をするために、自分にとって集中しやすい作業環境をつくりましょう。
効果的な環境づくりのためには、自分にとっての「集中力が下がる要素」を洗い出すことから始めます。たとえば電話の呼び出し音、電車の音、周りの話し声、香水や食べ物の香り、蛍光灯の明かり……。人によって要素は異なるからこそ、自分ならではの苦手な対象を明確にすることが大切です。
特定したらできる限り対処しつつ、余計な情報を減らす取り組みも始めましょう。たとえばスマホの通知を切ったりブラウザの不要なタブを閉じたり、デスクトップアイコンを整理したり。小さな一つひとつの工夫が、仕事の集中力を向上させてくれます。
ミスを防ぐ&ミスをしてしまったときのポイント

ここでは、発達障害のある方がミスを繰り返さないためのポイントについてご紹介します。ミス自体は誰にでもあることですから、必要以上に落ち込む必要はありません。お互いに気持ちよく仕事を続けていくために、対話を通して改善につなげていきましょう。
「確認をお願いしたい」ことをしっかりと伝える
ミスを防ぐためには、指示や教育してくれる相手に対し「確認が必要であること」をしっかり伝えます。社会で働いていると「ご確認お願いいたします」が定例文となりやすく、確認の重要性がないがしろにされているシーンが多いものです。
しかし発達障害のある方にとって、他者による確認は業務の安定に直結します。確認のお願いを「その場の流れで言ってるわけではなく、本当に必要だと感じるから言っている」のだと伝えましょう。他者のチェックにより事前にミスがわかれば、次回の対策にもつながります。
診断名を言わなくても「得意・苦手の共有」で十分伝わる
発達障害のある方にとって、障害のオープン・クローズは大きな悩みです。もちろんオープンにするのも一つですが、言いたくないのであれば無理に伝える必要はありません。障害名を伝えなくても「得意・苦手の共有」で十分にミスは防げます。
障害のない方でも、得意分野や不得意分野はあるものです。発達障害のある方はそれが顕著なだけ。「〇〇が苦手だから一緒に確認してほしい」「わかりやすいやり方があれば教えてほしい」と伝えるだけでも、適切な環境に近づきやすくなります。
注意を受けたときは業務の改善点として受け取ってみる
発達障害のある方がミスを防ぐためには、受けた注意を叱咤ではなく「業務上の改善点」として受け取りましょう。注意を受けても、自分が否定されたように感じる必要はありません。相手の指摘はあなた自身ではなく、あなたの「やり方」に対するものです。
「自分はできないヤツだ」と塞ぎ込むのではなく「次はどうすればミスを防げるのか」の視点を持ち、感情と事実を切り離して考えることが大切です。自分を責めるエネルギーを業務改善に充てることで、コンディションに左右されにくいパフォーマンスを発揮できます。
同じミスを繰り返さないか不安なときは振り返りメモが役立つ
発達障害のある方は、同じミスの繰り返しで落ち込んだ経験も多いのではないでしょうか。注意された内容を忘れてしまう原因はワーキングメモリの低さであり、あなた自身ではありません。ミスを繰り返さないために、情報を視覚化する習慣をつけましょう。
とくにミス専用の振り返りメモは、発達障害の大きな味方となります。「何が起こったのか・なぜ起こったのか、どのような対策したのか」をセットで記録することで、自分専用のメモが完成します。「メモを見れば大丈夫」という安心感があれば、ミスの連鎖を断ち切りやすくなるでしょう。
一人で抱え込まなくて大丈夫。頼れる場所がある

ここでは、発達障害のある方が仕事で困ったときのサポートについてご紹介します。現代は昔と比べて発達障害への理解も深まっており、企業ごとの相談相手も充実している傾向です。悩みを一人で抱え込まず、然るべき相手や期間に不安をシェアしていきましょう。
産業医・カウンセラーに相談する
発達障害に関連する仕事の悩みは、産業医やカウンセラーの相談対象です。業務上の困難だけではなく、気分の落ち込みや体調不良などの二次障害についても相談できます。とくに産業医の場合、相談によって具体的な仕事への配慮につながる可能性があります。
相談を通して専門機関への受診・治療につながるケースもあるため、現時点で明確な発達障害の診断を受けていない場合でも、積極的に活用していきましょう。強制的な受診の必要はないため、一人で抱え込む前に気軽に相談してみてくださいね。
人事に相談する
長期的に安心して業務に取り組むためには、人事への相談も手段の一つです。困り事の内容次第では、仕事の進め方や環境を調整してもらえる可能性があります。また上司一人の権限だけでは決めきれないような、部署移動やオペレーションの統一なども期待できるでしょう。
もちろんすべての願望がかなうとは限りませんが、今自分が大きな弊害やストレスを抱えていることを伝えるだけでも無駄ではありません。業務自体の変更が難しい場合でも、上司の指示やコミュニケーションに対する助言が期待できます。
職場の外への相談も検討する
職場関係者への相談に抵抗を感じる方は、別の相談窓口を利用していきましょう。たとえば発達障害者支援センターでは、発達障害者への総合的な支援を実施しています。相談支援はもちろん就労支援も実施していますので、転職を検討している人も利用できます。
また大人の発達障害の検査や診断は、精神科や心療内科が対象です。専門医とカウンセラーのサポートを借りることで、特性への理解を深めつつ自分に合った働き方を探しやすくなるでしょう。ほかにも障害者就業や生活支援センター、地域若者サポートステーションなどでも相談可能です。
配慮を受けながら働ける選択肢を知っておくことも大切

ここでは、発達障害のある方が配慮を受けながら働くための選択肢についてご紹介します。発達障害が原因で一般的な就労が難しい場合、一般雇用だけに捕らわれる必要はありません。自分の心が健やかでいられる働き方を探し、安心できる環境でキャリアを築いていきましょう。
障害者雇用枠で配慮のある環境で働く
発達障害(もしくは二次障害)によって障害者手帳を取得していれば、障害者雇用枠での就労を検討できます。障害者雇用枠の最大の魅力は、一般雇用にはない「合理的配慮」です。合理的配慮では、会社の負担にならない範囲で、一人ひとりの障害に合わせた環境づくり&業務調整が実施されます。
たとえば満員電車の時間帯を避けて通勤できたり、リモートワークを増やしてもらえたり、音や香りなどの五感的刺激に配慮してもらえたり。業務内容やキャリアが限定されやすいデメリットを加味したうえで、安心して働ける選択肢として候補に入れましょう。
就労移行支援を利用して働く準備を整える
就労移行支援の活用も、発達障害のある方におすすめの選択肢です。就労移行支援とは、障害のある方が一般企業への就職を目指すための福祉サービスです。就労に必要な知識や能力を伸ばせたり、定着支援を含むさまざまなサービスを受けられたりします。
基本的なパソコンスキルやビジネスマナーも学べるため、初めての就活や転職活動にも効果的。職場見学や実習を通して、企業とのマッチングも測れます。障害者手帳は必須ではなく、医師の診断書や自治体の判断で利用できるケースもあるため、お住まいの自治体の最新情報を確認しましょう。
特性に合った求人を自分のペースで探そう
たとえ障害のない方であっても、自分の希望に完璧に合う求人を探すのは困難です。発達障害の特徴や程度に合った就労先を探すとなると、さらに難易度は上がります。仕事探しの際は焦らず、自分のペースでゆっくり探していく意識を持ちましょう。
仕事探しでは、障害者の雇用に特化したエージェントやサービスの利用がおすすめ。たとえば『デコボコエージェント』は、障害のある当事者と企業をつなぐ就職・転職サービスです。障害者雇用枠求人の検索も無料で可能ですので、ぜひ一度チェックしてみましょう。
ミスの原因を知ることが、自分に合った働き方を見つける第一歩

今回は、発達障害のある方の特徴やミスの対処法などをご紹介しました。発達障害の有無に関係なく、私たちは一人ひとり異なる長所と短所を持っています。ミスしやすいポイントも千差万別であり、対処法も異なるものです。
発達障害だからといって、自分を卑下したり可能性を諦めたりする必要はまったくありません。人には人の、自分には自分の原因と対処法があります。ミスの原因や発生する条件などを振り返りながら、一つひとつゆっくりと改善していきましょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の治療法や診断を推奨するものではありません。症状にお悩みの方は、必ず医師などの専門機関にご相談ください。

2017年にWebライターとして活動を開始し、数多くのメディアでライターとして活動。年間1,000本以上記事を制作する専門ライター。子ども教育やメンタルヘルス関連のメディアでの活動実績が多い。


