障害者の就労支援とは? 種類や利用条件、相談先までわかりやすく解説
▼この記事の3つのポイント
- 就労支援とは、就職の準備から職場への定着まで、障害のある方が自分のペースで働けるようにサポートする福祉制度です
- 障害者手帳がなくても、医師の診断書があれば就労支援を利用できる場合があるため、まずは相談してみることが大切です
- 相談先はひとつではなく、就労移行支援事業所・ハローワーク・福祉窓口など自分の状況に合った窓口を選べます
働きたいけど、なかなかうまくいかない……

「働かなければという焦りはあるのに、どこから動けばいいかわからない」「スマホで調べても、似たような言葉が並んでいて頭に入ってこない」そんな状態でこの記事にたどり着いた方もいるかもしれません。
過去に職場でうまくいかなかった経験があると、次の一歩がとても重く感じられます。「また同じことを繰り返すのでは…」「自分には無理なのかもしれない」そんな気持ちになる方も多いことでしょう。
就労支援とは「すぐに就職する」ことだけを目指す制度ではありません。生活リズムを整えることから始めたり自分のペースで職場を試したりしながら、働く力を少しずつ育てていく仕組みです。
いきなり働くのが不安な方でも
- 週に数日から通う
- 簡単な作業から始める
- 体調に合わせてペースを調整する
といった形で、無理なくスタートできます。
この記事では、就労支援の種類や利用条件、相談先をわかりやすく解説します。ご自身に合った支援を見つける参考としてお役立てください。
そもそも就労支援とはどんな制度?

就労支援とは障害や病気などの理由で、働くことや仕事を続けることが困難な人をサポートする制度です。仕事について練習したり働きやすい環境を整えたりすることで「働きたい」気持ちを応援します。
この制度は「障害者総合支援法」という法律にもとづいてつくられており、 4つの種類があります。
- 就労移行支援
- 就労継続支援A型
- 就労継続支援B型
- 就労定着支援
それぞれ目的や対象は違いますが、ほとんどの場合、無料か安い費用で利用できるのが特徴です。「お金がかかりそうだから無理かも…」とあきらめる前に、まずはどんな制度か知ってみましょう。
就労支援は一度利用したら続けなければならないものではなく、見学や体験だけでも利用できます。複数の事業所を比較することも可能なため、自分に合う環境を選べる点も安心できるポイントです。
あわせて読みたい ▼ 就労支援について
障害者向けの就労支援サービスの種類

就労支援には4つのサービスがあります。名称が似ていて混乱しやすいのですが、目的や対象はそれぞれ異なります。まず全体像を表で確認してみましょう。
| サービス名 | 目的 | 雇用形態 | 対象 |
|---|---|---|---|
| 就労移行支援 | 一般企業への就職準備 | なし | 就職を希望する18〜65歳未満の方 |
| 就労継続支援A型 | 支援を受けながら就労 | あり(最低賃金保証) | 一般就労は難しいが、雇用契約できる方 |
| 就労継続支援B型 | 自分のペースで就労機会を得る | なし(工賃制) | 雇用契約での就労が困難な方 |
| 就労定着支援 | 就職後の職場定着サポート | なし | 障害福祉サービスを経て就労した方 |
出典:厚生労働省「就労選択支援」
一般企業への就職を目指す「就労移行支援」
就労移行支援は、一般企業への就職を希望する障害のある方が、就職に必要な知識やスキルを身につけるための訓練を受けられるサービスです。
- ビジネスマナーの習得
- パソコンスキルの訓練
- コミュニケーションの練習
- 職場実習
上記のような、段階的なプログラムが用意されています。
「いきなり就職活動は不安」「自分がどんな仕事に向いているかわからない」という方にも向いており、自己理解を深めるところからサポートしてもらえます。自分のペースで通所日数を調整できる事業所も多く「まずは週2日から」という形で始めることも可能です。
支援員が一人ひとりの目標や状況に合わせた自分専用のサポートプラン(個別支援計画)を作成し、継続的にサポートします。利用期間は原則2年間で、対象は18歳以上65歳未満の一般就労を希望している方が中心です。
大切なのは「就職すること」だけがゴールではない点です。働き続けられる環境を見極めながら、無理のない形で一歩ずつ進んでいける仕組みになっています。
雇用契約を結んで働く「就労継続支援A型」
就労継続支援A型は、事業所と雇用契約を結んだうえで働きながら就労スキルを身につけるサービスです。一般企業での就職が難しい方に向いています。最低賃金以上の給与が保障されており、一定の条件を満たす場合は社会保険への加入も可能です。
週3〜5日、1日4〜6時間程度の勤務形態が多く、支援スタッフのサポートを受けながら働けます。主な仕事内容は以下の通りです。
- データ入力
- カフェ・レストランのスタッフ
- 商品の包装・発送
- 清掃
「働いた経験は積みたいけれど、一般企業への就職にはまだ不安がある」方にとって、就労継続支援A型は中間ステップとしての機能を有します。スキルや経験を積みながら、自分のペースでキャリアを育てていける場所といえるでしょう。対象は原則18歳以上65歳未満、事業所と雇用契約を結んで働ける状態であると判断された方です。
自分のペースで通える「就労継続支援B型」
就労継続支援B型は、一般就労や就労継続支援A型での就労が難しい方が、雇用契約を結ばずに就労の機会を得られるサービスです。体調が悪いときは休みやすく、通所日数や時間も柔軟に調整できます。「まず社会参加のリズムをつくりたい」「働くことへの不安を少しずつ和らげたい」方にも向いています。
「就職できるほどの体力や自信がまだない」状態でも、まず通うことから始められるのがB型の特徴です。焦る必要はなく、自分のペースで少しずつ働く感覚を取り戻していけるでしょう。
仕事の対価は賃金ではなく工賃として支払われます。工賃は作業内容や通所日数によって変わるため「どれくらい通えるか」「どんな作業ができるか」によって金額に差が出ます。
事業所によっては平均工賃を公開している場合もあるため、見学時に確認しておくと安心です。
B型の利用期間に制限はなく、体調や状況に合わせて継続的に通うことができます。能力が向上した場合は、A型や一般就労への移行を視野に入れることも選択肢のひとつです。
出典:厚生労働省「令和6年度工賃(賃金)の実績について」
就職後の不安をサポートする「就労定着支援」
就労定着支援は、障害福祉サービスを利用して一般就労した方が、長く安定して働き続けられるようにサポートする制度です。「職場の人間関係がうまくいかない」「仕事のペースについていけない」「生活リズムが乱れてきた」といった就職後の悩みに支援員が寄り添い、必要に応じて職場と調整します。
具体的には、以下のような支援が受けられます。
- 定期的な面談で悩みや困り事を整理する
- 職場との間に入って、働きやすい環境づくりをサポートする
- 体調や生活リズムの乱れを一緒に見直す
実際には次のような相談が寄せられることもあります。
- 上司の指示が理解しづらく、何度も聞き返してしまう
- 職場の人間関係に疲れてしまい、出勤がつらくなっている
- 仕事のスピードについていけず、自信をなくしている
- 生活リズムが崩れ、遅刻や欠勤が増えてきた
「せっかく就職できても、また続かないのでは…」と不安を抱えている方は多いようです。就労定着支援は、そうした不安に対して「一人で抱え込まなくていい」という安心感を提供してくれる制度です。
また、就職後は「相談できる相手がいない」と孤立しやすい時期でもありますが、定着支援を利用することで、困ったときにすぐ相談できる環境を保つことができます。小さな違和感の段階で対処できるため、大きなトラブルを未然に防ぎやすくなる点もメリットです。
利用開始は就職から7か月目以降で、最長3年間(1年ごとに更新)サポートを受けられます。就職をゴールとせず「働き続けること」を一緒に支えてくれる仕組みです。
障害者手帳を持っていなくても就労支援は利用できる?

「障害者手帳がないから、就労支援は自分には関係ない」と思っていませんか。実際には、手帳がなくても利用できる場合があります。
医師の診断書があれば利用できる場合がある
就労移行支援や就労継続支援を利用するには「障害福祉サービス受給者証」が必要です。この受給者証は、障害者手帳がなくても主治医の診断書や意見書、または自立支援医療受給者証(医療費の自己負担を減らすための証明書)で申請できる自治体が多くあります。
つまり、医師の診断を受けており就労に困難があると認められれば、手帳なしでも利用申請の可能性があるのです。ただし判断は自治体によって異なるため、まずはお住まいの福祉窓口や就労移行支援事業所に相談してみることをおすすめします。
精神障害や発達障害も就労支援の対象になる
就労支援の対象は身体障害だけではありません。例えば、以下のような障害や病気のある方も対象です。
- 「うつ病」「適応障害」「統合失調症」などの精神障害
- 「自閉スペクトラム症(ASD)」「注意欠如・多動性症(ADHD)」などの発達障害
- 難病
「発達障害の傾向があると言われたけれど、正式な診断ではないから…」と迷っている方もいるかもしれません。そのような場合でも、医師の意見書があれば利用が認められるケースがあります。まずは主治医に相談してみることが、次の一歩につながるでしょう。
「自分の状態は軽いから、支援を受けるほどではないかも」と遠慮しなくて大丈夫です。就労に困難を感じているのなら、その気持ちを大切にしてください。支援を受けることは、自分の力を最大限に発揮するための選択なのです。
就労支援を利用するまでの流れと相談先

就労支援を利用したいと思っても「どこに連絡すればいいかわからない」方も多いでしょう。ここでは主な相談先と利用開始までの流れを紹介します。
利用の流れは、以下の通りです。
1. 相談・見学
2. 受給者証の申請
3. 認定調査・交付
4. 事業所と契約・利用開始
どのステップも相談先のスタッフが一緒に進めてくれるため、一人で抱え込まなくて大丈夫です。就労支援の相談先はひとつに限られているわけではなく、自分の状況や目的に応じて選ぶことができます。
「まずは話を聞いてほしい」のなら就労移行支援事業所「求人を見ながら考えたい」のならハローワークなど、目的に合わせて使い分けることが大切です。
また一つの窓口で決めきれない場合は、複数の相談先を利用して比較することもできます。それぞれの担当者の対応や提案内容を知ることで、自分に合ったサポートを見つけやすくなるでしょう。
まずは就労移行支援事業所の見学・相談がおすすめ
「最初の一歩を踏み出したい」という方には、就労移行支援事業所への見学・相談が最もおすすめです。無料で見学や体験ができる事業所が多く、支援員に自分の状況を話しながら、どのサービスが合っているかを一緒に考えてもらえます。受給者証の申請手続きをサポートしてくれる事業所もあります。
「相談するだけでいいのか」と不安に感じなくて大丈夫です。多くの事業所が、まず話を聞くことを大切にしています。体調が不安定な方や外出が難しい方向けに、オンライン相談を実施している事業所もあるため、「今の状態では行けない」と諦めずに問い合わせてみてください。
ハローワークの障害者専門窓口も活用できる
ハローワーク(公共職業安定所)には、「専門援助部門」と呼ばれる障害者向けの専門窓口があります。障害者手帳がない場合でも相談できるため、気軽に立ち寄れる窓口です。受けられるサポートは主に以下の通りです。
- 求人の紹介
- 就労に関する相談
- 職業訓練の案内
- 面接練習
地域によっては就労支援ナビゲーターという専門の担当者が配置されており、継続的なサポートが受けられます。「まずは求人の雰囲気を知りたい」「どんな仕事が自分に向いているか相談したい」という段階から、気軽に足を運んでみてください。
出典:厚生労働省「ハローワークにおける障害者への就労支援」
障害者就業・生活支援センターに相談する方法もある
全国各地に設置されている「障害者就業・生活支援センター(通称:ナカポツ)」は、就労支援に加えて日常生活のサポートも行っている機関です。地域の医療機関や福祉機関と連携しながら、就職活動から職場定着まで幅広く支援してくれます。
「仕事のことだけでなく、生活面の不安も相談したい」「離職してから生活リズムが崩れている」という方に特に向いているでしょう。就職後も継続して支援を受けられるため、「働き始めてからも誰かに相談できる場所がほしい」という方にとって、心強い存在です。利用には医師の診断書が必要な場合がありますが、センターによって異なるため、事前に確認しておくと安心です。
市区町村の福祉窓口でも情報を得られる
お住まいの市区町村役所にある「障害福祉課」や「福祉相談窓口」でも、就労支援に関する情報提供や受給者証の申請サポートを受けられます。担当者があなたの状況に合った機関を紹介してくれるため「最初の入り口」として利用しやすい窓口といえます。
利用は無料で、電話での相談も受け付けています。外出が難しい状況でも気軽に連絡でき「どんなことを話せばいいかわからない」場合も「就労支援について相談したい」と一言伝えるだけで大丈夫です。
多くの相談窓口では、現在の状況や困っていることを簡単に伝えるだけでも、担当者が話を整理しながら一緒に考えてくれます。無理に結論を出す必要はなく「少し話を聞いてみる」だけでも大丈夫です。小さな行動が、今後の選択肢を広げるきっかけになるでしょう。
自分のペースで仕事を探せるサービスもおすすめ!

就労支援と並行して自分に合った求人を探したい方には『デコボコエージェント』がおすすめです。
デコボコエージェントは、精神障害や発達障害など障害のある方が、自分のペースで配慮のある求人を探せるサービスです。主な特徴を紹介しましょう。
- 企業が「配慮ポイント」を明示して求人を掲載しているため、在宅勤務・残業なし・フレックスタイム制など条件を確認しながら探せる
- 企業からスカウトが届く仕組みがあるため「自分からアピールするのが苦手」な方も利用しやすい
- 登録から応募・カジュアル面談・内定までオンラインで完結でき、外出が難しい時期でも安心
- 応募前にカジュアル面談や企業訪問で職場の雰囲気を確認できるため、ミスマッチを防ぎやすい
- 利用料は登録から入社まで、ずっと無料
就労支援を活用しながら自分のペースで働こう

就労移行支援・就労継続支援A型・B型・就労定着支援は、それぞれ目的と対象が異なります。障害者手帳がなくても、医師の診断書があれば利用できる場合があるため「自分には関係ない」と思わずに、まずは相談してみることをおすすめします。
過去にうまくいかなかった経験は、あなたの弱さではありません。環境や準備が整っていなかっただけかもしれないのです。「また失敗するかもしれない」という不安を抱えながらでも、小さな一歩を踏み出すことが、少しずつ自信を取り戻すきっかけになるでしょう。
制度を活用することは決して特別なことではなく、働く人に与えられた大切な権利です。焦って次の仕事を決める必要はありません。支援を上手に活用しながら、自分らしいペースで前に進んでいきましょう。
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※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の治療法や診断を推奨するものではありません。症状にお悩みの方は、必ず医師などの専門機関にご相談ください。


