作成日:
2025年4月13日
更新日:
2025年9月4日

障害者雇用とは?メリット・条件・助成金など、制度内容の情報ガイド

[監修者]北川 庄治

デコボコベース株式会社 最高品質責任者(CQO)

東京大学大学院 教育学研究科
博士課程 単位取得満期退学

通信制高校教諭、障害児の学習支援教室での教材作成・個別指導 講師を経て、現在は療育プログラムの開発、保護者や支援者向けの研修を実施

▼この記事の3つのポイント

  • 障害者雇用は、自分の体調や特性に合わせた働き方ができるよう配慮された制度で、法律でもしっかり守られています
  • 働きやすい環境を整えるためのサポート機関や就労支援サービスがあり、一人ひとりに合った職場探しができます
  • 助成金や合理的配慮の義務など、企業側にも支援があるため、安心して働き続けられる土台が整いつつあります

障害者雇用ってよく聞くけど、どういうものなの…?

障害者雇用は、法律で定められた雇用制度のひとつです。障害者雇用では、抱えている障害に応じた職業紹介や職業指導などが受けられます。

今回は障害者雇用の意味や、メリット・デメリットなどをご紹介します。また実際に障害者雇用の制度を活用する際の方法なども解説していきます。障害者雇用での就職を考えている方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。

障害者雇用とはどういうもの?

出典:photoAC

障害者雇用とは、障害者雇用促進法という法律で定められている雇用制度です。

※雇用制度とは、会社やお店で働く人と雇う人が、どのように働くかやお金をもらうかを決めるルールのことを指します

障害者雇用の目的は、さまざまな障害のある人が、障害の特性に合わせた働き方ができることです。障害者雇用では、会社や自治体などが、一般雇用枠とは別に障害者雇用枠を用意しています。

障害者雇用枠を用意すると、会社にとっても社会にとってもメリットがあります。例えば、以下に解説する3つの要素が挙げられます。

共生社会の実現障害があること、ないことに関係なく、すべての人が仕事を通じた社会への参加ができる状態が実現する
労働力の確保障害のある人の特性を強みとして考え、貴重な労働力を確保することができる
生産性の向上障害のある人に寄り添った職場環境をつくれば、会社全体の生産性が向上する
出典:厚生労働省「障害者雇用のご案内」

障害者雇用の対象者は?障害者雇用として働く条件

出典:unsplash

障害者雇用の対象者は、「障害者手帳(身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者福祉手帳)を持っている人」です。障害の種類は人によりさまざまですが、主に以下の3つに大別されます。

  • 身体障害者
  • 知的障害者
  • 精神障害者

障害者雇用と一般雇用、働き方はどう違う?

出典:photoAC

ここでは、障害者雇用と一般雇用の働き方の違いについて解説します。障害者手帳を持っている場合でも、障害者雇用だけではなく一般雇用の求人にも応募することが可能です。

それぞれの特徴の違いを学び、より自分の状態にあった働き方を選択していきましょう。

一般雇用で働く場合

一般雇用で働く場合は、障害のない従業員と同じ条件で働くことになります。企業が定める条件を満たしていれば誰でも応募でき、障害者手帳の有無は関係ありません。選択できる職業の幅が広く、専門職も豊富にあるため、経験や実績に応じたキャリアアップ(仕事でスキルや経験を増やして、もっと良い仕事や役職につくこと)が期待できるのも魅力です。

ただし一般雇用の場合は、周囲からの障害に対する理解が得にくい点がデメリットです。給料が増えれば責任も増え、障害者雇用と比べて仕事の難易度が高まったり、働き方がハードになったりするリスクもあります。

障害者雇用で働く場合

障害者雇用で働く場合は、自身の障害に配慮された働き方ができるのが大きなメリットです。面接や入社の際に、障害に関して企業の担当者と理解を深められるため、自分の状態にあった働き方ができます。

障害者雇用では、「就職した後に不当な差別をしてはいけないこと」が法律で定められています。障害における配慮もしっかりと受けられるので、お互いにとって無理のない形で働ける点が魅力です。

障害者であることは周囲にオープンにすべき?

出典:photoAC

障害者雇用は、障害があることをオープンにする働き方です。そのため、会社の人事や上司に障害を抱えることを隠すことはできません。

ただし、同僚など日常的に一緒に働く周囲の人に隠すことは可能です。一般的には、周囲にもオープンにしたほうがさまざまなメリットがあります。

例えば障害の特性を伝えることで、障害が理由でミスをした場合でも適切な配慮を受けられる可能性があります。ただし、伝えたくない内容までオープンにする必要はありません。

障害者雇用で働くメリット

出典:photoAC

ここでは、障害者雇用で働くメリットをご紹介します。障害者雇用は、「障害者雇用促進法」という法律によって守られています。また障害の種類や程度に応じて、自分ならではの配慮をしてもらえるのも魅力です。

自分に適した環境・業務で仕事ができる

障害者雇用で働くメリットとして、自分にあった環境・業務で仕事ができることが挙げられます。障害者雇用では一人ひとりの障害の状況に合った配慮を受けられるため、長く無理なく働き続けられるでしょう。

たとえば通勤ラッシュを避けた出勤時間に調整してもらえたり、定期面談で体の状態について確認してもらえたり。企業によっては、自分用のマニュアルを作成してもらえる場合もあります。また業務量の調整や、通院時の休暇などにおいて企業に相談しやすい点もメリットです。

周囲に障害を理解してもらえるケースが多い

障害者雇用は、周囲に障害を理解してもらえるのもメリットの1つです。障害者雇用促進法では、企業が障害者に「合理的配慮」をおこなうことが定められています。

「障害者の合理的配慮」とは、障害のある人が周りの人と同じように学校や仕事で活躍できるように、無理のない範囲で助けたり環境を整えたりすることです。例えば、車いすの人には段差をなくしたり、聞こえにくい人には文字で説明したりすることを指します。

そのため、不当な扱いを受けたり、障害への配慮がされなかったりなど、不利な状況が生じることはありません。

障害者雇用で働くデメリット

出典:unsplash

ここでは、障害者雇用で働くデメリットをご紹介します。障害のある人にとってさまざまなメリットがある障害者雇用ですが、一方でいくつかのデメリットも存在します。それぞれを詳しくみていきましょう。

障害者手帳がなければ求人に応募できない

障害者雇用で働くデメリットとして、障害者手帳がなければ求人に応募できないことが挙げられます。

障害者手帳の取得には、障害者雇用への応募資格も含むさまざまなメリットがあります。しかし、障害者手帳を取得するのは簡単ではないため、後回しにしている人も少なくありません。

たとえば障害者手帳の発行では、医療機関による診断書や診断料が必要です。障害の症状や状態によっては診断を受けることも難しく、発行に行きつくまで時間がかかる可能性があります。

また障害者手帳の更新時は、再度診断書の提出が求められます。症状が軽くなった場合は手帳を保有できなくなるため、今後の就労状態を不安に感じて取得を諦める人もいるでしょう。

障害者雇用枠の母数が少ない傾向にある

障害者雇用のデメリットでは、そもそも障害者雇用枠の母数が少ないことが挙げられます。求人自体の数が少ないため職種の幅が狭まってしまうことはデメリットの1つでしょう。

障害者雇用枠の数は、法律によって定義が定められています。具体的には、従業員を40人以上雇用している事業主は、障害者を1人以上雇用する必要があります。また民間企業の法定雇用率は、2.5%(現在移行期間中で、令和8年度より2.7%)です。

言い方を変えれば、企業はこの数値以上の障害者雇用枠を備える必要はありません。

出典:
厚生労働省「事業主の方へ」
参考厚生労働省「障害者雇用率制度について」

障害者雇用で働くための社会制度は?

出典:photoAC

障害者雇用枠を備えている企業を探すためには、社会制度を活用していきましょう。ここでは、障害者雇用で働くための社会制度や方法をご紹介します。就労や求職に関連する情報に特化した制度を活用することで、自身で探すよりも効率的なリサーチがかなえられるでしょう。

ハローワーク(公共職業安定所)

ハローワークでは、障害者雇用に関連する情報提供を幅広くおこなっています。

障害について専門的な知識を持つ職員を配置しており、就職に関する相談に乗ってもらえます。また一人ひとりに合った求人の提出を事業主に依頼したり、採用面接に同行したりなどのサポートも可能です。

出典:ハローワークインターネットサービス「ハローワークのサービスについて(障害のある方向け)」

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターでは、障害者への職業リハビリテーションサービスを実施中です。

基礎的な相談やセミナー、企業内研修、ジョブコーチ支援など、障害者雇用や障害者の職場定着に関する支援を幅広く展開しています。

就労移行支援

就労移行支援は、障害者総合支援法に基づく就労支援サービスです。

障害者が一般企業への就職を目指す際に、必要なスキル・知識の向上に関するサポートをおこないます。多くの就労移行支援事業所は、前年度の所得に応じて無料で利用できる可能性があります。

障害者雇用で働くまでの流れ

出典:photoAC

ここでは、実際に障害者雇用で働くまでの流れをご紹介します。求職から就労までは長い道程に感じられるかもしれませんが、タスクを一つひとつリストアップして明文化すれば、今自分がとるべき行動が明瞭になります。自分のペースを大切にしながら、一歩ずつ前に進んでいきましょう。

1. 自己分析

障害者雇用の活用を前提とした就職活動をするためには、自分のことを詳しく理解する「自己分析」が必須です。自身の障害の状態や程度、症状などを分析し、職場に説明できる状態にしましょう。

自己分析は面接時にはもちろん、就労後に同僚や上司に説明するためにも役立ちます。障害による苦手なことだけではなく、強みをアピールすることも大切です。

2. 求人情報の収集

障害者雇用枠を自力で探す場合は、インターネットを使った求人サイトのリサーチが基本になります。プロのサポートを受ける場合は、ハローワークや就労移行支援、転職サービスなどを活用しましょう。学生の人は、学校のキャリアセンターも役立ちます。

3. 応募と面接

障害者雇用枠の応募では、面接は避けて通れません。面接では、自身の障害について質問を必ず受けるでしょう。障害を説明する際に、自己分析が役立ちます。できること・できないことを隠さずに明確に伝えることが大切です。また働くうえで配慮してもらいたいことも面接で伝えましょう。

4. 入社前の準備

障害者雇用の入社前の手続きは、一般雇用と大きく変わりません。加入条件を満たしていれば、雇用保険や社会保険への加入義務もある点に注意しましょう。初出勤では入社手続きをおこなうケースが多いため、企業ごとの必要書類を確認してください。

障害者雇用を取り巻く法律や制度・助成金について

出典:photoAC

ここでは、障害者雇用を取り巻く法律や制度・助成金をご紹介します。障害者雇用に関連する知識やサポートを理解すれば、より円滑に就労先が見つかるだけではなく、自分に合う・合わない企業も選定しやすくなるでしょう。

障害者雇用促進法

障害者雇用促進法とは、障害者の職業生活における自立を促進するため、さまざまな措置を総合的に講じる法律です。同時に、障害者の職業の安定も目的としています。法律内では、障害者に対する差別の禁止や、対象障害者の雇用義務に基づく雇用の促進などが制定されています。

出典:厚生労働省「障害者雇用促進法の概要(昭和35年法律第123号)」

障害者雇用率制度(法定雇用率)

障害者雇用率制度(法定雇用率)とは、従業員に占める障害者の割合です。法定雇用率の算出方法は、「対象障害者の常用労働者数+失業している対象障害者数」の数値を「常用労働者数+失業者数」の数値で割ったものになります。法定雇用率は社会の変化に応じ、5年ごとに見直されています。

障害者雇用納付金制度

障害者雇用納付金制度とは、特定の条件を満たした企業に「障害者の雇用の促進を図るための助成金」を支給する制度です。障害者雇用にともなう事業主の経済的負担の調整を目的としています。詳しい条件は、以下の厚生労働省の資料をご確認ください。

出典:厚生労働省「障害者雇用納付金制度の概要」

特例給付金の設置

特例給付金とは、短時間の労働であれば可能な障害者を雇用する事業主に対し、国から支給される給付金です。ただし令和6年4月1日以降の雇用期間については、特例給付金は廃止となっています。

出典:厚生労働省「特例給付金の支給要件等について」

合理的配慮の提供義務

合理的配慮の提供義務とは、事業者と障害者が対話を重ね、労働環境で発生し得る課題の解決を目指す制度です。令和6年4月1日に施行された制度で、障害者が障害の区分や程度によって不利益を被らないために求められます。合理的配慮は、提供にともなう負担が過重でないことも要件になります。

出典:政府広報オンライン「事業者による障害のある人への「合理的配慮の提供」が義務化」

障害者雇用の枠を活用して、安心できる環境で働こう!

出典:photoAC

今回は、障害者雇用の意味やメリット・デメリット、実際に障害者雇用の制度を利用する際の方法などをご紹介しました。

障害者雇用は、障害者一人ひとりが自身の状態や特性に合った働き方をするために、欠かせない制度の一つです。現在障害者雇用は日本各地で広まりつつあります。しかし求人数の少なさをはじめとする課題もまだ多く存在しています。

また障害者雇用に関連する法律や制度は、定期的に改訂されていることにも注目しましょう。社会の変化に応じて障害者雇用の形がどのように変わっていくのかを見定めつつ、自身の働きやすい形を模索することが大切です。

デコボコエージェントでは、障害のある方がやりがいを持って自分らしく働くための、就職・転職をサポートしています。自分の特性とマッチした障害者雇用の求人を検索したり、スカウトを受け取ったりと、気になる企業とつながることができます。

ぜひ、一度ご利用ください。

[ライター]山口 愛未

2017年にWebライターとして活動を開始し、数多くのメディアでライターとして活動。年間1,000本以上記事を制作する専門ライター。子ども教育やメンタルヘルス関連のメディアでの活動実績が多い。

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