障害者雇用枠(障害者枠)とは?制度の基本から始め方までわかりやすく解説

デコボコベース株式会社 最高品質責任者(CQO)
東京大学大学院 教育学研究科
博士課程 単位取得満期退学
通信制高校教諭、障害児の学習支援教室での教材作成・個別指導 講師を経て、現在は療育プログラムの開発、保護者や支援者向けの研修を実施
障害者雇用枠って具体的にはどんなものなの……?

「一般雇用枠とは何が違うのか」
「自分は対象になるのか」
「給料が下がったり、キャリアが伸びづらくなったりしないか」
障害者雇用枠という言葉は聞いたことがあっても、詳しくは知らないという方も少なくありません。
この記事では、どんな障害のある人が対象になるのか、制度の仕組み、受けられる配慮の内容を、順を追って解説します。
▼この記事の3つのポイント
- 障害者雇用とは、障害者が安定して働くための制度であり、障害者手帳を持つすべての人が対象
- 原則として給料・キャリア面での差はないが、時短勤務や業務量を調整することで一般雇用と差が出ることがある
- 障害者雇用枠で働くには自分に合う働き方を整理し、支援機関や転職サービスを活用することが大切
【制度の基本】障害者雇用枠(障害者枠)とは?

障害者雇用枠(障害者枠)とは、障害のある人が安定して働けるよう、企業が設けている雇用の枠のことです。障害や特性に合わせた配慮を受けながら働けます。
障害者雇用制度を簡単に説明すると?
障害のある人が、能力や特性を活かして働き続けられるよう、法律で定めた制度です。安定して社会に参加し、生活を続けられるようにすることを目的としています。
入社のときから、業務量や勤務時間、職場の環境が障害や特性に合わせて調整されます。無理なく働き続けられるよう、さまざまな配慮を受けられる仕組みです。
加えて、企業には一定の割合で障害のある人を雇う義務があります。この基準を満たした企業には、障害のある人が働きやすい環境を整えるための調整金や助成金が支給されることになっています。
障害者雇用を支えている法律
障害者雇用を支えているのは、「障害者雇用促進法」という法律です。
この法律では、障害のある人の雇用を進めること、働くための訓練や支援を充実させること、雇用の場での差別をなくすことなどが定められています。
もともとは「身体障害者雇用促進法」という名前で、1960年に作られた法律です。その後の改正によって、知的障害のある人や精神障害のある人も対象に加わりました。
【豆知識】法定雇用率について
一定の規模以上の企業には、障害のある人を一定の割合で雇う義務があります。この割合を「法定雇用率」と呼び、次のように定められています。
- 民間企業:2.5%(令和8年7月以降は2.7%)
- 国・地方自治体:2.8%(令和8年7月以降は3.0%)
- 都道府県などの教育委員会:2.7%(令和8年7月以降は2.9%)
対象になるのは、令和8年6月までは労働者40.0人以上、令和8年7月からは37.5人以上の民間企業です。これらの企業には、障害のある人を1人以上雇うことが求められています。
障害者雇用枠の対象となる人

障害者雇用枠の対象となるのは、原則として身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳のいずれかを持っている人です。
障害があると感じていても、手帳がない段階では、障害者雇用枠での採用の対象に含まれないのが原則です。
ただし、手帳を申請中の人を受け入れる企業もあり、運用には幅があります。気になる場合は、応募先や支援機関に確認してみてください。
障害者手帳について
障害者手帳は、医師の診断書をもとに、自治体が障害の認定を行ったうえで交付されます。
障害者雇用枠での採用を考えている場合は、まず医療機関を受診し、診断書を受け取ったうえで、自治体に手帳を申請する流れになります。
手帳を持っていれば、障害の程度や種類は問われません。
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対象となる障害の種類

障害者手帳を持っている人は、3つの区分すべてが障害者雇用枠の対象です。それぞれの代表的な例をまとめました。
- 身体障害者:視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、ペースメーカー植え込み、ストマ造設など
- 知的障害者:ダウン症、脳性まひなどで知能指数(IQ)が70~75以下の人
- ※手帳が交付される知能指数(IQ)のボーダーラインは自治体ごとで異なります。
- 精神障害者:統合失調症、うつ病、発達障害(ADHD、自閉スペクトラム症など)アルコール依存症など
対象となる障害は幅広いため、自分の障害で手帳が交付されるかどうかは、自治体や医療機関に確認してみてください。手帳が交付されれば、障害者雇用枠での採用の対象になります。
出典:厚生労働省「障害者雇用促進法における障害者の範囲、雇用義務の対象」
障害者雇用と一般雇用の違い

障害者雇用と一般雇用の大きな違いは、採用のときに障害の情報を企業と共有し、必要な配慮を受けられるかどうかにあります。そのほかにも、次の表のような違いがあります。
| 項目 | 障害者雇用 | 一般雇用 |
|---|---|---|
| 給料・キャリア | 原則として一般雇用と同等。ただし特性や能力によって上がりにくい場合がある | 給料・キャリアともに一般的 |
| 配慮の受けやすさ | 受けやすい | 受けにくい場合がある |
| 応募条件 | 障害者手帳を持っていること | なし |
| 障害の開示 | あり | 自分で選べる |
| 仕事内容の幅 | 特性や能力に合わせて業務内容が調整される | 幅広い業務を任されやすい |
給料・キャリアの違い
障害者雇用だからという理由だけで、給料が下がったりキャリアアップの機会がなくなったりすることはありません。同じ業務の内容・量・在籍年数であれば、一般雇用と同等の給与を支払うことが原則とされています。
一方で、障害の程度や特性によって、任される業務が限られたり、同じ仕事に時間がかかったりする場合もあるでしょう。
無理なく働くために業務量や勤務時間を抑えていると、キャリアアップに時間がかかることも少なくありません。こうした事情から、給料やキャリアの面で不利だと受け取られてしまうケースがあります。
あわせて読みたい ▼ 障害者雇用の給料・年収について
配慮の受けやすさの違い
障害者雇用では、採用の時点で障害について企業と情報を共有し、どんな配慮を受けたいかをすり合わせていきます。そのため、業務量や働く環境を調整してもらったうえで、最初から働き始められる場合がほとんどです。
一般雇用では、上司や同僚に障害を伝えるかどうかを自分で決められます。伝えないという選択も可能で、その場合は周囲の理解が得られず、十分な配慮を受けにくいこともあるでしょう。
あわせて読みたい ▼ 合理的配慮の具体例について
応募条件・障害の開示の違い
一般雇用には特別な応募条件がなく、誰でも応募できます。障害を開示するかどうかも自由に選べるのが特徴です。
一方、障害者雇用枠で応募するには、障害者手帳を持っていることが条件となります。採用の面談では、自分の障害について企業に伝えることになります。
なお、障害者手帳を持っていても、一般雇用枠で応募することも可能です。障害を開示したいか、配慮をしっかり受けたいか、それとも業務やキャリアの面で制限なく挑戦したいか。こうした点を整理すると、どちらの枠が自分に合うかを考えやすくなります。
障害者雇用枠で働き始めるためのステップ

障害者雇用枠で働きたいと思ったときは、いきなり応募するのではなく、自分に合う働き方を整理しながら、段階を追って進めるのがおすすめです。
ハローワークや求人サービスを活用すると、無理のないペースで就職活動を進められます。
1. 自分の特性と希望する働き方を整理する
まずは、どのような環境なら無理なく働けるかを、自分の中で整理してみましょう。
たとえば、仕事で関わる人数が少ない職場が合う人もいれば、電話対応が少ない職場が向いている人もいます。
勤務時間や通院への配慮の必要性、苦手な業務などを把握しておくと、職場選びのミスマッチを防ぎやすくなります。自分の不調がどんな場面で出やすいかを振り返っておくのも役立つでしょう。
2. 相談先を選ぶ
障害者雇用での就職活動は、一人で進めるよりも、支援機関を活用したほうがスムーズに進みます。
代表的な相談先には、ハローワークや障害者就業・生活支援センター、就労移行支援事業所、障害者向け転職サービスなどがあります。
求人の紹介だけでなく、応募書類の添削や面接練習、職場定着の支援を受けられる場合も。サポートの内容はそれぞれ異なるため、何に困っているかに合わせて選ぶとよいでしょう。
| 相談先 | 特徴 | こんな人におすすめ |
|---|---|---|
| ハローワーク | 全国に窓口があり、障害者雇用専門の担当者へ相談できる。求人検索や職業紹介を無料で受けられる | ・幅広く求人を見たい ・公的機関で相談したい ・地域密着の求人を探したい |
| 障害者就業・生活支援センター | 就職支援だけでなく、生活面も含めてサポートを受けられる | ・生活リズムに不安がある ・長く働き続けられるか不安 ・就職後の相談先も欲しい |
| 就労移行支援事業所 | 働く準備を整える訓練施設。ビジネスマナーやストレス対処法などを学べる | ・すぐ働く自信がない ・ブランクが長い ・体調を整えながら就職したい |
| 障害者向け転職サービス | 専任アドバイザーが求人紹介や企業との調整をサポートしてくれる | ・自分に合う職場を探したい ・非公開求人も見たい ・転職活動を効率的に進めたい |
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3. 求人を探して応募する
相談先が決まったら、実際に求人を探して応募します。障害者雇用の求人は、ハローワークのほか、障害者専門の求人サイトやスカウト型サービスでも見つけられます。
最近は、自分で応募先を探すだけでなく、希望条件に合う企業からスカウトを受けられるサービスも増えてきました。ぜひ、自分に合ったものを使ってみてください。
たとえばデコボコエージェントでは、特性や働き方の希望をふまえた「マッチング重視」の求人紹介に加え、企業とのカジュアル面談を通じて職場の雰囲気を確かめながら進めることもできます。
いきなり応募するのが不安な人でも、自分に合う環境を見極められるでしょう。
あわせて読みたい ▼ 障害者雇用の仕事探しについて
4. 書類選考・面接を受ける
応募したあとは、履歴書による書類選考、そして面接へ進みます。
障害者雇用では、障害の特性や必要な配慮について確認されるため、どんな環境なら働きやすいかを整理して伝えるのがポイントです。
不安がある場合は、支援機関に書類の添削や面接練習をサポートしてもらう方法もあります。
5. 内定・入社の手続きをする
内定後は、勤務条件や配慮してほしい事項を確認しながら、入社の手続きを進めます。
通院の頻度や苦手な業務、体調面で配慮してほしい点は、入社前に企業と共有しておくと安心につながるでしょう。
就職後も定着支援を受けられる場合があり、働き始めてからの不安や悩みを相談することも可能です。どんな支援があるかを事前に確認しておくと、より落ち着いてスタートできます。
あわせて読みたい ▼ 障害者雇用の就職活動について
障害者雇用枠(障害者枠)についてよくある質問

障害者雇用を検討する際は、将来の働き方や会社への伝え方など、不安や疑問を感じる人も少なくありません。ここでは、障害者雇用に関してよくある質問をまとめました。
Q. 障害者雇用から一般雇用に戻ることはできますか?
A. 戻ることは可能です。
実際に、障害者雇用で経験を積んでから一般雇用へ転職する人もいます。体調や働き方を安定させるために、一時的に障害者雇用を利用するケースも見られます。「一度選んだら戻れない」制度ではないので、自分に合う働き方を柔軟に考えていけます。
Q. 障害者雇用で正社員になることはできますか?
A. 障害者雇用でも、正社員として働くことは可能です。
実際に、正社員の求人を出している企業も多くあります。ただし、最初は契約社員やパートから始め、勤務状況や体調の安定を見ながら正社員へ登用する企業もあります。求人票で雇用形態や登用制度を確認しておくと安心です。
Q. 障害を会社に伝えたくない場合はどうしたらいいですか?
A. 障害を開示せず、一般雇用で働くという選択もあります。これを「クローズ就労」と呼びます。
クローズ就労には、応募できる職種の幅が広がりやすく、働き方の選択肢も多くなるという面があります。一方で、障害を伝えない場合は、業務量の調整や通院への配慮といったサポートを会社に求めにくくなります。
どちらにも特徴があるため、誰に・どこまで伝えるかは、自分の体調や働き方の希望に合わせて選んでいくとよいでしょう。
Q. 障害者雇用の面接ではどんなことを聞かれますか?
A. 職歴やスキルに加えて、障害の特性や必要な配慮について確認されることが多いようです。
たとえば「苦手な業務はあるか」「通院の頻度はどの程度か」「どんな環境なら働きやすいか」などが挙げられます。できないことだけでなく、働くために工夫している点もあわせて伝えられると、自分の人物像が伝わりやすくなります。
あわせて読みたい ▼ 障害者雇用の採用面接の流れ
障害者雇用は自分らしく働き続けるための選択肢

障害者雇用は、障害や特性に合わせた配慮を受けながら、自分らしく働き続けることを目指せる制度です。対象になるのは、原則として障害者手帳を持っている人で、障害の種類や程度は問われません。無理のないペースで働き続けられる環境を整えやすいのが特徴といえます。
また、ハローワークや就労支援、障害者向け転職サービスなど、就職活動を支える仕組みも整っています。
手帳の取得から面接の受け答えまで、さまざまな場面でサポートを受けられます。一人で抱え込まず、支援を活用しながら、自分に合う働き方を見つけていけるとよいでしょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の治療法や診断を推奨するものではありません。症状にお悩みの方は、必ず医師などの専門機関にご相談ください。

保健師 / ケアマネジャー資格保有。急性期病院に6年間従事し、小児から老年期まで幅広い急性期ケアを経験。その後居宅介護支援施設へ転職し、自宅で過ごす様々な医療ケアが必要な方を支援。その経験を活かし、小児〜老年期、介護ケアなど幅広い記事を執筆しています。


