適応障害で退職したい…辞める判断の目安や伝え方・使える制度まとめ
もう限界かもしれない…でも、辞めるのは逃げなのかな……?

適応障害は、特定の環境で強いストレスを受け、心や体に不調が現れている状態を指します。程度によっては、これまで通りの生活を送ることが難しくなる場合もあります。
仕事に支障が出ている場合は、退職することも選択肢のひとつ。つらい環境から離れることは、自分を守るための前向きな一歩になります。
この記事では、適応障害で働く人に向けて、会社を辞める目安や伝え方をまとめました。何をすればよいかを整理しながら、自分のペースで進んでいきましょう。
▼この記事の3つのポイント
- 退職を考えてよいかには目安があるため、つらいときは一人で抱えこまず、医師に相談しながら判断しましょう
- 大切なのは無理に働き続けることではなく、まず体を休めて、回復に合わせて自分のペースで次の働き方を選び直すことです
- 傷病手当金や失業手当などの制度を知っておくと、療養している間のお金の不安を減らすことができます
適応障害で退職を考える目安・サインとは?

ここでは、適応障害で退職を考えるときの目安となるサインを紹介します。
「辞めたほうがいいのか、まだ続けられるのか」と迷っている方も多いかもしれません。当てはまるサインが多いほど、心や身体に負担がかかっている状態だと考えられます。
なお、退職するかどうかや、そのタイミングは、自分だけで判断せず、医師に相談しながら決めていくと安心です。
心身の不調が日常生活にも影響している場合
適応障害になると、身体に不調が現れることがあります。
軽い頭痛や疲れで済むうちはまだしも、眠れない、食べられないといった状態が続き、毎日の生活に支障が出てきたら注意が必要です。ここまでくると、退職や休職を考える目安の一つになります。
◼︎たとえば……
- 休日もよく眠れず、朝まで不安が続いている
- 食欲が落ちて、体重が減り続けている
- 家事や入浴さえ、つらく感じてしまう
出典:厚生労働省「適応障害」
ストレスの原因から離れられない場合
つらさの原因が職場にある場合、その場にいる限り、原因から距離を取るのは簡単ではありません。適応障害をやわらげるには、まずストレスのもとから離れることが必要だといわれています。
異動も休職も難しく、逃げ場がないと感じるなら、退職が選択肢のひとつになるでしょう。
◼︎たとえば……
- 異動や休職を相談できる状況ではない
- 業務連絡を見るだけで、強い動悸が起こる
- 家にいても仕事の連絡が絶えず、気が休まらない
自分を責める毎日が続いてしまっている場合
「自分が悪いんだ」と責め続けてしまうときも、退職を考える目安の一つです。
自分を責めるほど心の余裕は失われ、ものごとを冷静に見られなくなっていきます。その結果、本当は自分のせいではないことまで、自分の責任だと抱えこんでしまうのです。
一度職場から離れて、落ち着いて考えられる状態を取り戻すことが、回復への一歩になります。
◼︎たとえば……
- 「自分が悪い」と考え続けてしまう
- 何日もミスを引きずって、眠れなくなる
- 誰かに褒められても、素直に受け取れない
退職を決めた場合の流れ

ここでは、適応障害で退職を決めたあとの流れを紹介します。
あくまで一般的な流れなので、まずはお勤め先の制度を確認しておくと安心です。会社によっては、退職ではなく休職で解決できる場合もあります。
退職を決める前に、会社に相談できる余地がないかを振り返っておくと、選択肢が広がるでしょう。
就業規則を確認し退職希望日を決める
適応障害で退職を決めたら、まずは会社の就業規則を確認します。退職までに必要な期間を正しく把握したうえで、有給休暇の消化や通院の予定を組んでいきます。
生活面の準備も含めて、体調に無理のない日程を決めることが大切です。予定を立てるだけでも負担が大きいときは、医師や家族に相談しながら進める方法もあります。
退職届の提出と引き継ぎ
退職日が決まったら、退職の意思を会社に正式に伝え、必要に応じて退職届を提出します。
会社によっては様式が決められている場合もあるため、まずは就業規則や担当部署に確認しておくと安心です。とくに指定がなければ、「退職届 テンプレート」などで検索すると、参考になる雛形が見つかります。
業務の引き継ぎは、自分のできる範囲で整理すれば十分です。丁寧にできるに越したことはありませんが、無理に完璧を目指す必要はありません。
資料にまとめきれない部分は、簡単なメモで残す形でもよいでしょう。
【要チェック】退職時に受け取る・確認する書類
退職するときは、今後の手続きに必要な書類を確認しておきます。
たとえば、離職票、源泉徴収票、雇用保険被保険者証、年金手帳などは、失業手当の申請や転職、確定申告のときに必要になる場合があります。
また、休職や通院をしている方は、傷病手当金や失業手当についても調べておくと安心です。申請に期限がある制度もあるため、わからない点は早めに会社やハローワークに確認しておくとよいでしょう。
あわせて読みたい▼適応障害での休職について
【豆知識】リワーク(職場復帰支援プログラム)について
適応障害で退職する前に、休職を選ぶ方も少なくありません。精神疾患で休職している間は、リワークプログラム(職場復帰支援プログラム)に参加できる場合があります。
リワークでは、決まった時間に施設へ通い、通勤を想定しながら、仕事に近いオフィスワークや軽作業に取り組みます。復職後の定着を支える仕組みもあり、段階的に社会復帰を目指せるのが特徴です。
リワークは、実施する機関によって、医療機関で行う「医療リワーク」、地域障害者職業センターで行う「職リハリワーク」、企業内で行う「職場リワーク」の3つに大きく分けられます。
それぞれ目的や費用が異なるため、詳しくはお住まいの地域の情報を確認してみてください。
退職理由は会社にどう伝えるべき?

ここでは、適応障害で会社に退職理由を伝えるときのポイントを紹介します。まずは「いつ伝えるか」を決めて、そこから逆算して予定を組んでいきましょう。
時期|誰に・いつ伝えるか
退職を伝える相手は、直属の上司が一般的です。就業規則で決められた期限よりも早めに相談できると、その後の手続きもスムーズに進みます。
ただし、心身の負担が大きいときは、無理にベストなタイミングを待たなくても構いません。
とくに出勤がつらいほど不調が強いときは、人事部や産業医に直接相談する方法もあります。
内容|退職理由はどこまで伝えるか
退職を伝えるとき、適応障害について細かく説明する必要はありません。「体調の問題で働き続けるのが難しい」「今は療養に専念したい」といった、簡潔な伝え方でも大丈夫です。
職場への不満を強く伝えると、話し合いが長引きやすくなります。まずは、退職の意思を落ち着いて確実に伝えることを優先すると、やり取りもスムーズに進むでしょう。
心身の不調で会社とのやり取りが難しい場合
心身の不調が重く、会社とのやり取り自体がつらいときは、一人で無理に対応しなくても構いません。
たとえば、家族や信頼できる人に同席してもらう、やり取りをメール中心にするといった方法があります。退職の手続きでは、きちんと対応すること以上に、自分の心と体を守ることを大切にしてください。
退職後に使える経済的な支援制度

ここでは、適応障害で会社を退職したあとに使える、経済的な支援制度を紹介します。
すべてを一人で抱えこむ必要はありません。使える制度は上手に活用しながら、少しでも経済的な余裕を持って、新しい生活を始めていきましょう。
傷病手当金(在職中に申請する場合)
傷病手当金は、健康保険に加入している方を対象とした手当です。仕事以外の病気やケガで会社を休み、給与が受け取れないときに、健康保険から支給されます。
連続して3日間休んだあと、4日目以降の休んだ日が支給の対象です。支給される期間は、支給開始日から通算して1年6か月までとされています。
▼利用する際のポイント
- 受け取るには、医師による「働けない状態」の証明が必要になる
- 退職後も、一定の条件を満たせば継続して受け取れる場合がある
- 支給される期間(通算1年6か月)のうちに、次の生活の見通しを立てておく
出典:協会けんぽ「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」
失業手当(失業保険)
失業手当(失業保険)は、会社を退職した方が生活の心配をせずに次の仕事を探せるよう、国から支給されるお金です。受け取るには、働く意思と能力があること、求職活動をしていることなどが条件になります。
ただし、適応障害ですぐには働けない場合、この条件を満たせないことも。そのときは「受給期間の延長」を申請しておくと、体調が回復してから受け取れるようになります。
▼利用する際のポイント
- 退職後は早めにハローワークへ相談に行く
- すぐに働けないときは、受給期間の延長手続きを検討する
- 求職活動と認められる条件を、あらかじめ確認しておく
出典:厚生労働省「ハローワークインターネットサービス 雇用保険手続きのご案内」
あわせて読みたい▼失業手当の受け取り条件と手続きについて
自立支援医療制度
自立支援医療制度は、通院でかかる医療費の自己負担を、原則1割に軽減できる公費負担医療制度です。
適応障害を含む精神疾患で、継続的な通院や治療が必要な方が対象になります。診察費だけでなく、薬代も対象です。
▼利用する際のポイント
- 対象にならない費用を確認しておく(カウンセリングや入院費など)
- 有効期限は原則1年。続けて使うには更新の手続きがいる
- 利用できる医療機関や薬局が決められているため、事前に確認する
適応障害で退職した後はどうする?次の一歩の考え方

ここでは、適応障害で退職した方に向けて、退職後にやることを紹介します。
何より大切にしたいのは、自分の体調です。心と身体、そして生活を整えながら、無理のない範囲で一歩ずつ進んでいきましょう。
まずは療養と生活リズムの立て直しに専念する
適応障害で退職したあとは、まず療養と生活リズムの立て直しに専念します。本来の思考力や判断力を取り戻すには、健康な心と身体、そして安心できる環境が欠かせません。
つらい状態のまま急いで次を目指すと、ストレスやプレッシャーから症状が悪化してしまうこともあります。
休養は、未来へ進むための前向きな準備期間です。自然と「動けそう」と思えるようになるまで、必要な休息をとっていきましょう。
選択肢1. 一般雇用で再就職する
適応障害による退職後でも、一般雇用での再就職は十分に可能です。
症状への配慮が必要な場合は、オープン就労(障害や病気のことを企業に伝えて働く方法)という形で相談することもできます。
ただし、新しい職場を選ぶときは、前の職場で適応障害につながった原因から離れることが大切です。障害のある方向けの転職サービスを使うと、自分に合った職場環境を探しやすくなります。
選択肢2. 障害者雇用(障害者枠)や特例子会社に就職する
働きやすい環境を整えたい場合は、障害者雇用という選択肢があります。
障害者雇用では、障害や疾患の内容・程度に応じて、企業から合理的配慮を受けられるのが特徴です。
なお、障害者雇用の一つの形として、特例子会社という働き方もあります。障害特性に合わせた設備や支援体制が整っていることが多く、安心して働きやすい環境とされています。
選択肢3. 就労移行支援を活用する
適応障害での退職後は、就労移行支援を利用する方法もあります。
就労移行支援は、障害のある方の就職をサポートする場で、就職に必要な知識やスキルを身につけられます。
ただし、就労移行支援事業所そのものは職業紹介を行っていないため注意が必要です。ハローワークや地域障害者職業センターなどと連携しながら、その人に合った職場を見つける支援を受けることができます。
あわせて読みたい▼適応障害からの転職を考える方へ
迷ったときは専門家に相談しよう

ここでは、適応障害に悩む方の就職や復職をサポートしてくれる、相談先をまとめました。それぞれの特徴を紹介しますので、参考にしてみてください。
| 相談先 | 特徴 | 費用 |
|---|---|---|
| こころの耳 相談窓口 (厚生労働省) | ・厚生労働省が運営する相談窓口 ・本人だけでなく家族や人事担当者も利用できる ・心の健康や悩みを専門家に相談できる | 無料 |
| 地域障害者職業センター | ・就職や職場復帰を専門的に支援 ・職業評価やジョブコーチ支援などを実施 ・ハローワークと連携し定着まで支援 | 無料 |
| ハローワーク 専門援助部門 | ・障害のある方の就労支援に特化した部門 ・専門の職員が特性に応じて支援 ・求人票や履歴書、面接の相談ができる | 無料 ※手帳がなくても、医師の診断などで利用できる場合がある |
| 就労移行支援事業所 | ・一般企業への就職を目指す方が対象 ・必要な知識やスキルの訓練を受けられる ・就職活動や定着までサポート | 世帯の所得に応じて上限が決まる ※多くの方が無料で利用 |
| 転職サービス | ・企業と求職者をつなぐサービス ・求人紹介や書類添削、面接対策を実施 ・障害のある方向けのサービスもある | 求職者は基本無料 ※一部、有料プランもあり |
数ある転職サービスの中でも、適応障害に悩む方に向いているのが『デコボコエージェント』です。デコボコエージェントは、障害のある方と企業をつなぐ、マッチング型の就職・転職サービスです。
自分のペースで求人を探せて、企業からスカウトが届くこともあります。特性や強みを活かした働き方を考えたい方は、サービス内容を見てみてください。
出典:厚生労働省「こころの耳 相談窓口案内」
厚生労働省「障害者の方への施策(地域障害者職業センター・ハローワークの支援)」
厚生労働省「障害者の就労支援対策の状況(就労移行支援)」
適応障害での退職に関するよくある質問

ここでは、適応障害での退職に関するよくある質問をまとめました。悩んだときは、主治医や自治体にも相談しながら、不安を一つずつ解消していきましょう。
Q. 適応障害の診断書はどこでもらえる?
A. 適応障害として診察を受けた病院やクリニックの医師に書いてもらえます。
今すぐの休養が必要だと医師が判断した場合は、初診の当日に発行されることもあります。
診断書は医師が患者の状態をもとに作成するため、受診の前に「症状が出始めた時期、きっかけになった出来事、日常生活での支障、今の対処法」などをまとめておくと、スムーズに作成してもらいやすくなります。
Q. 失業手当と傷病手当金は同時にもらえる?
A. 同時には受け取れませんが、順番に受け取ることはできます。
失業手当は「働ける状態」、傷病手当金は「働けない状態」が条件であり、この二つは両立しません。
そのため、まず療養中は傷病手当金を受け取り、回復してから失業手当に切り替える流れになります。この場合、失業手当の受給資格を残すために、ハローワークで「受給期間の延長」を申請しておく必要があります。
詳しくは、ハローワークや支援機関に相談してみてください。
Q. 適応障害であることを会社に隠すとどうなる?
A. どこまで伝えるかは、自分で選べます。
すべてを話す必要はありませんが、まったく伝えないと、不調の理由が共有されず「やる気がない」などと誤解される場合もあります。
一方で、伝えることに不安を感じる方も少なくありません。大切なのは「誰に、どこまで伝えるか」を自分で整理することです。信頼できる上司や産業医など、相談しやすい相手から段階的に話してみる方法もあります。
Q. 適応障害は会社都合の退職になる?
A. 原因が会社にあることが明確な場合は、会社都合の退職になる可能性があります。
たとえば、パワハラやセクハラ、いじめ、過度な長時間労働などが当てはまります。
また、原因が会社側になくても、病気を理由に退職した場合は「特定理由離職者」として扱われ、失業手当の給付が優遇されることもあります。
自分がどれに当てはまるかは、離職票で確認するか、ハローワークに相談すると確実です。
辞めることは「逃げ」じゃない。一つずつ整理しよう

今回は、適応障害のある方の退職について紹介しました。
適応障害では、強い不安や気分の落ち込み、不眠、動悸、倦怠感など、さまざまな心身の不調が現れます。社会生活に支障が出ているとき、退職は決して「逃げ」ではありません。
まずは自分の健康と生活を守ることが、次に進むための土台になります。退職に必要なことを一つずつ整理しながら、周りや支援の力も借りて、自分のペースで進んでいきましょう。

2017年にWebライターとして活動を開始し、数多くのメディアでライターとして活動。年間1,000本以上記事を制作する専門ライター。子ども教育やメンタルヘルス関連のメディアでの活動実績が多い。


