【ADHD】マルチタスクが苦手…作業中の困りごとや対処法を徹底解説
▼この記事の3つのポイント
- マルチタスクが苦手なのは努力不足ではなく、脳の特性によるものであると理解できる
- シングルタスク化や見やすくするなど、日常で実践できる具体的な対処法がわかる
- 自分に合った働き方や支援サービスを知り、無理なく働く選択肢が広がる
マルチタスクがうまくできなくて困っている…

「電話しながらメモを取る」「作業中に話しかけられると頭が真っ白になる」など、マルチタスクがうまくできずに困っていませんか。
周囲は当たり前にこなしているように見えるため「自分の努力が足りないのでは」と責めてしまう方もいるかもしれません。しかし、その苦手さは個人のだらけではなく、特性による可能性があります。
本記事では、困り事の背景と具体的な対処法をわかりやすく解説します。
ADHDの方がマルチタスクを苦手に感じる理由とは

ADHDの方がマルチタスクを苦手に感じやすいのは、脳の情報処理や注意の切り替えに関わる特性が影響しているためです。複数の作業を同時に進める際、負担が大きくなりやすい傾向があります。
ワーキングメモリの特性が関係している
ワーキングメモリとは「一時的に情報を覚えながら処理する力」のことです。たとえば「電話を聞きながらメモを取る」という場面で使われます。ADHDの方はこの働きに負担がかかりやすく、情報を同時に保持するのが難しい傾向です。
そのため、途中で内容を忘れてしまったり作業が抜け落ちたりしやすくなります。
実行機能の特性がタスクの切り替えを難しくしている
実行機能とは「計画を立てる・優先順位をつける・行動を切り替える」といった力のことです。ADHDの方は、この切り替えがスムーズにいかない可能性があります。
たとえば、作業中に別の仕事を頼まれると頭の中が混乱してしまい、元の作業に戻るのが難しくなることが挙げられます。結果として作業の中断やミスにつながりやすくなるため、注意が必要です。
苦手の原因は努力不足ではなく脳の情報処理の違い
マルチタスクが苦手なことを「自分の努力不足」と感じてしまう方も多いかもしれません。しかし、マルチタスクが苦手なのは意欲や性格の問題ではなく、脳の情報処理の違いによるものとされています。
同じ作業でも感じる負担の大きさは人によって異なります。苦手さを正しく理解することで自分を責めるのではなく、自身に合った工夫を見つけるきっかけだと考えてみましょう。
ADHDの方がマルチタスクで困りやすい場面

ADHDの方は、複数の作業を同時に求められる場面で困りやすい傾向です。とくに、割り込みが多い環境や注意の切り替えが必要な状況では、混乱やミスが起こりやすくなるかもしれません。
ここから困りやすい場面を詳しくみてみましょう。
電話対応しながらメモを取ることが難しい
電話対応では、相手の話を理解しながら重要な情報を記録することが大切です。しかし、同時に複数の情報を処理することが求められるため、ワーキングメモリ(頭の中で同時に覚えたり考えたりする力)に負担がかかりやすくなります。
その結果「話を聞くこと」に集中するとメモが追いつかず「書くこと」に意識を向けると内容を聞き逃してしまうといった状況が起こりやすくなるのです。
割り込みの仕事が入ると、元の作業に戻れなくなる
作業に集中している最中に別の仕事を頼まれると、頭の中で処理していた内容が途切れてしまうこともあるでしょう。ADHDの特性として、タスクの切り替えや情報の保持が難しいため、一度中断すると元の作業内容を思い出せなくなる場合があるため、注意が必要です。
割り込みの仕事が入った結果、どこまで進めていたかわからなくなり、最初からやり直すことになってしまうこともあります。
優先順位がつけられず、締め切りに間に合わない
複数の業務を同時に進める際、どれから手をつけるべきか判断に迷ってしまうかもしれません。ADHDの特性として、優先順位を整理することに負担を感じやすく、緊急度や重要度の見極めが難しい場合があります。
優先順位がつけられず、比較的取り組みやすい作業から手をつけてしまい、気づいたときには締め切りが迫っているといった状況に陥ることも。
ミスを繰り返すことで自信を失ってしまう
作業中の抜け漏れや確認ミスが重なると「またできなかった」と感じてしまい、自信を失ってしまうことがあります。周囲から指摘を受ける場面が続くと「自分は仕事ができないのではないか」と不安が強まる恐れがあるため、注意が必要です。
ミスを繰り返すと新しい業務にも消極的になり、本来の力を発揮しにくくなるケースもみられます。
苦手なマルチタスクをカバーする具体的な対処法

マルチタスクが苦手でも、工夫や環境調整によって負担を軽減することは可能です。ここでは、日々の業務に取り入れやすい具体的な対処法をわかりやすく紹介します。
マルチタスクをシングルタスクに分解する
マルチタスクが負担に感じる場合は、作業を細かく分けて「ひとつずつ取り組む」ことが有効です。複数の作業を同時に進めようとすると混乱しやすくなるため、あえてシングルタスクに分解することで集中しやすくなります。
たとえば、以下のように工程ごとに分けてみましょう。
- 電話対応:まずは話を聞くことに集中する
- メモ:通話後に内容を整理して書き出す
- 対応:必要な作業をひとつずつ進める
このように順番を決めて取り組むことで頭の中の負担が軽くなり、ミスの予防にもつながります。
ToDoリストでやるべきことを可視化する
頭の中だけでタスクを管理しようとすると、抜け漏れや混乱が起こりやすくなります。そのため、やるべきことをToDoリストとして書き出し「見える化」することが効果的です。
視覚的に整理することで今すべきことが明確になり、安心して作業に取り組めます。
ポイントは、できるだけ具体的に書くことです。たとえば「資料作成」ではなく「資料のタイトルを決める」「1ページ目を作る」など細かく分けると取り組みやすくなります。
また、完了したタスクにチェックを入れることで達成感も得られ、モチベーションの維持にもつながります。
優先順位を「緊急度」と「重要度」で整理する
複数のタスクがあるときは「緊急度」と「重要度」で整理すると、優先順位がつけやすくなるでしょう。頭の中だけで判断するのではなく、次のように紙やメモに書き出して分類することで、今やるべきことが明確になります。
- 緊急かつ重要:すぐに取りかかる
- 重要だが緊急ではない:計画を立てて進める
- 緊急だが重要ではない:可能であれば他の人に依頼する
- 緊急でも重要でもない:後回し、またはやらない
このように整理することで迷いが減り、効率よくタスクに取り組みやすくなります。
ポモドーロ・テクニックで集中と休憩のリズムを作る
ポモドーロ・テクニックは、短時間の集中と休憩を繰り返す時間管理の方法です。一定時間だけ作業に集中することで注意がそれにくくなり、効率よく取り組めます。一般的には「25分作業+5分休憩」を1セットとして進めます。
長時間続けて頑張ろうとすると疲れやすく、集中力も低下しやすくなるもの。あらかじめ休憩を挟むことで無理なく続けやすくなるのがポイントです。「あと少しだけ頑張れば休める」と見通しが立つことで、心理的な負担も軽減されます。
メモやツールを活用して頭の外に情報を出す
頭の中だけで情報を管理しようとすると、注意が分散しやすくなります。そのため、メモやツールを活用して「頭の外」に情報を出すことが効果的です。たとえば、思いついたことややるべきことはすぐにメモアプリやノートに書き出すのです。
タスク管理アプリを使えば、優先順位や締め切りも整理しやすくなります。視覚的に情報が見えることで抜け漏れを防ぎ、安心してひとつの作業に集中できるはずです。
作業環境を整えて集中しやすくする
周囲の刺激を減らし、自分が落ち着いて取り組める状態を作ることが大切です。次のように環境を少し工夫するだけでも、集中力の持続につながります。
- 机の上は必要な物だけにして、視界をすっきりさせる
- スマホの通知はオフにし、気が散る要因を減らす
- 静かな場所やお気に入りの音楽で集中しやすい空間を作る
- 作業時間を決めて、メリハリをつける
自分に合った環境を見つけることで、無理なく集中できる状態を保ちやすくしましょう。
苦手なことを周囲に伝えるのは“甘え”ではない

苦手なことを周囲に伝えるのは、決して甘えではありません。特に発達特性などによる困り事は、本人の努力だけで解決できない場合も多くあります。そのため、職場や学校に配慮を求めることは大切です。
日本では、障害者差別解消法という法律によって、困り事がある人に対して「できる範囲で配慮すること」が求められています。
つまり、苦手なことがあっても一人で抱え込む必要はなく、周りに伝えれば働きやすいように工夫してもらえる仕組みがあります。こうした配慮によって、安心して自分の力を発揮できる環境を整えることが欠かせません。
困り事を共有することで周囲の理解が進み、ミスの予防や働きやすさの向上にもつながります。
参考:内閣府.合理的配慮の提供に関するガイドライン
【全体】リーフレット「「合理的配慮」を知っていますか?」 印刷用 p3
職場で配慮をお願いするときの伝え方

自分の困り事と理由を簡潔に伝え「こうしてもらえると助かります」と具体的な配慮を提案しましょう。感謝の気持ちも添えると、前向きに受け入れられやすくなります。
まず自分の「苦手」と「こうすれば対応できる」を整理する
配慮をお願いする前に、自分の「苦手」と「対応方法」を整理しておくと、相手にも伝わりやすくなるでしょう。以下のようにあらかじめ言葉にしておくことで、具体的に相談しやすくなります。
- 苦手な場面や状況(例:マルチタスク、電話対応)を書き出す
- どのようなときに困りやすいかを具体的に整理する
- ミスが起こりやすいパターンを振り返る
- 自分なりにうまくいった対処法をまとめる
- 「こうしてもらえると助かる」という配慮を考える
「苦手」と「対応方法」を整理しておくことで、自分自身の理解も深まり、無理のない働き方にも役立ちます。
伝える相手とタイミングを選ぶ
配慮をお願いするときは、伝える相手とタイミングを選ぶことが重要です。忙しい時間帯や大勢の前で話すと、相手も十分に話を聞けず、意図が伝わりにくくなります。できるだけ1対1で落ち着いて話せる場面を選ぶことを意識してみてください。
相談相手は信頼できる上司や先輩、人事担当者など、安心して話せる人を選ぶとよいでしょう。最初からすべてを伝えようとせず、まずは1番話しやすい相手に、小さなお願いをひとつだけ伝えることから始めるのがおすすめです。
具体的な伝え方の例を知っておく
具体的な伝え方をあらかじめ知っておくと、いざ相談するときに落ち着いて話しやすくなります。ポイントは「苦手なこと」と「どうすれば対応できるか」をセットで伝えることです。
できないことだけでなく、次のような代わりの方法を伝えることで、相手もイメージしやすくなります。
- 「電話対応中にメモを取るのが難しいため、通話後に内容を整理する時間をいただけると助かります」
- 「会議中は理解に集中したいので、録音をもとに後から議事録を作成させていただけないでしょうか」
- 「複数の指示を同時にいただくと混乱しやすいため、ひとつずつ伝えていただけると確実に対応できます」
できる限り具体的に苦手な業務の内容や、どのような対応が必要かを伝えられるよう整理してみてください。
マルチタスクが少ない仕事や働き方を選択するのも方法

マルチタスクが苦手な場合は、業務内容や働き方を見直すのもひとつの方法です。シングルタスク中心の仕事を選ぶことで、無理なく力を発揮しやすくなります。
シングルタスク中心の仕事を選ぶ
シングルタスク中心の仕事を選ぶことで、ひとつの作業に集中しやすくなり、ミスの軽減やストレスの緩和につながります。業務の切り替えが少ない環境は、安定して力を発揮したい方に向いています。
- データ入力や事務作業(決まった手順で進める業務)
- 工場のライン作業(同じ工程を繰り返す仕事)
- 清掃スタッフ(作業内容が明確でルーティン化しやすい)
- 倉庫内作業(ピッキングや仕分けなど)
- 在宅ワーク(自分のペースでひとつずつ進められる)
自分に合った働き方を選ぶことで、無理なく継続しやすい環境を整えましょう。
障害者雇用という選択肢を知っておく
障害者雇用という働き方を知っておくことも、大切な選択肢のひとつです。障害者雇用では、あらかじめ特性や困り事を共有したうえで、業務内容や働き方に配慮を受けながら働くことができます。無理のない範囲で業務が調整されるため、自分のペースを保ちやすくなるでしょう。
専門の支援員や相談窓口がある職場も多く、困ったときに相談しやすい点も特徴です。一般雇用だけでなく、自分に合った環境で長く働くための選択肢となるため、安心につながります。
自分に合った働き方を見つけるために活用できるサポート

就労移行支援やハローワークなどの支援機関を活用すると、自分に合った働き方を一緒に考えてもらえます。活用できるサポートを知り、安心して就職活動を進めていきましょう。
無料で相談できる公的な支援機関
無料で相談できる公的な支援機関を活用すると、働き方や就職について専門的なサポートを受けられます。ひとりで悩まず、気軽に相談できる場所を知っておくことが安心につながります。
- ハローワーク(求人紹介や職業相談、応募書類のサポートなど)
- 地域障害者職業センター(職業評価や職場定着の支援、専門的な相談)
- 障害者就業・生活支援センター(仕事と生活の両面からの継続的なサポート)
自分に合った支援機関を見つけることで、無理のない働き方を一歩ずつ考えていくことが大事です。
自分のペースで求人を探せるサービス
自分のペースで求人を探したい方には、自分のペースで求人を探せるサービスの活用がおすすめです。特性や希望条件に合わせた求人を紹介してもらえるため、無理なく仕事探しを進められます。
また、応募や面接に不安がある場合も、相談しながら進められるため安心です。オンラインでの相談にも対応しており、体調や生活リズムに合わせて利用できる点も魅力です。
少しでも気になる方は、まずはお気軽に当社までご相談ください。あなたに合った働き方を一緒に考えていきます。
自分らしく働ける場所を見つけよう

自分らしく働ける場所を見つけることは、長く安心して働くために大切です。苦手なことを無理に克服しようとするだけでなく、自分の特性に合った環境を選ぶことで力を発揮しやすくなります。
働き方はひとつではありません。自分に合う方法を少しずつ探しながら、無理のないペースで前に進んでいきましょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の治療法や診断を推奨するものではありません。症状にお悩みの方は、必ず医師などの専門機関にご相談ください。
看護師・保健師資格保有。大学卒業後、大学病院集中治療室で7年勤務し、新生児から老年期まで幅広い患者の急性期ケアを経験。保健師として活動し、看護大学非常勤講師も務める。その後、高齢者施設や看護小規模多機能施設に従事し、老年期医療に携わる。急性期から慢性期まで、幅広い年齢層の患者ケアに携わる。現在は臨床経験を活かし、認知症や介護に関する記事、クリニックのコラムなど医療情報の執筆活動も行っている。


