作成日:
2026年3月14日
更新日:
2026年3月16日

大人になって気づく学習障害|特徴の理解と診断・サポートの受け方

▼この記事の3つのポイント

  • 大人の学習障害(LD/SLD)の特徴やタイプ(読字・書字・算数)を理解し、自分の困りごととの関係を整理できる
  • ADHDやASDとの違い、診断を受けられる医療機関や流れを知り、相談の選択肢がわかる
  • 仕事での具体的な対処法や合理的配慮、活用できる支援機関を知り、次の一歩を考えられる

大人になってから気づく学習障害ってあるの…?

胸に手を当てる人
画像出典:PhotoAC

子どもの頃から「読むのが遅い」「計算がどうしても苦手」など困り事があったのに、理由がわからないまま大人になった方もいます。学習障害は子どもの問題と思われがちですが、大人になってから気づくケースもあります。これまでの苦手さに名前がつくことで、見え方が変わることもあるでしょう。

本記事では大人の学習障害について解説していきます。困り事や不安の解消にお役に立てれば幸いです。

学習障害(LD/SLD)とは|基本的な知識

クエスチョンマーク
画像出典:PhotoAC

学習障害(LD/SLD)は、知的な遅れがないにもかかわらず、読み書きや計算など特定の分野に困難がみられる発達障害のひとつです。特に大人の学習障害では、仕事や日常生活で困り事として現れることがあります。

知的な遅れはないが、特定の学習に困難がある状態

学習障害は全体的な知的発達に遅れがあるわけではなく、読む・書く・計算するなど特定の学習領域に限って困難があらわれる状態を指します。

たとえば、文章を読むのに強い負担を感じる、文字を書くと極端に疲れてしまう、数字を扱う場面で混乱しやすい、といった様子がみられることもあるでしょう。

「理解できない」のではなく、情報を処理する方法に偏りのある場合があります。

現在の正式名称は「限局性学習症(SLD)」

現在、学習障害は医学的には「限局性学習症(SLD:Specific Learning Disorder)」と呼ばれ、診断の場面で使われています。

「限局性」とは、すべての学習が難しいという意味ではありません。読むことや書くこと、計算など、特定の分野にかぎって困難がみられる状態です。

なぜ大人になってから学習障害に気づくのか

頭を抱える女性
画像出典:PhotoAC

子どもの頃は「少し苦手なだけ」と受け止められ、そのまま大人になることもあります。しかし、仕事で読む量や書く機会が増えると困難が目立ち、学習障害の可能性に気づく方もいるでしょう。大人になってから学習障害に気づくケースの詳細を解説します。

子どもの頃は「苦手科目」として見過ごされやすい

子どもの頃は、以下のように読み書きや計算の困難があっても「その教科が苦手なだけ」と受け止められ、学習障害として気づかれないことがあります。

  • 国語だけ極端に点数が低い
  • 音読になると急に詰まる
  • 計算問題だけ時間がかかる

周囲も本人も、努力で乗り越えられるものだと考えてしまいがちです。そのため、このような偏りがあっても「得意不得意の範囲」として見過ごされることがあります。

仕事での困難がきっかけで診断に至るケースもある

学生時代は周囲のサポートや試験の工夫で何とか乗り切れていても、仕事では読む量や書類作成、計算処理の正確さなどが求められます。その中でミスが続いたり極端な疲労を感じたりして、はじめて強い違和感を覚える方も少なくありません。

「なぜ自分だけうまくできないのだろう」と悩み、調べるうちに学習障害を知り、医療機関で相談して診断に至るケースもあります。

学習障害(LD/SLD)の3つのタイプと特徴

チェックリスト
出典:PhotoAC

学習障害(LD/SLD)には主に、読むことに困難があるタイプ、書くことに困難があるタイプ、計算に困難があるタイプの3つがあります。それぞれ特徴を詳しくみていきましょう。

ディスレクシア(読字障害)|文字を読むことへの困難

ディスレクシア(読字障害)は、文字を正確かつ流暢に読むことに困難がみられる状態です。知的な理解力とは別に、次のような文字情報の処理に負担がかかることがあります。

  • 文章を読むのに時間がかかる
  • 音読になると強い緊張やつまずきがある
  • 行を飛ばして読んでしまう
  • 読んでも内容が頭に入りにくい

文字を読むことが難しいのは「怠けている」と受け取られがちですが、実際には脳の情報処理の特性が関係していることがあります。

ディスグラフィア(書字表出障害)|文字を書くことへの困難

ディスグラフィア(書字表出障害)は、頭の中では考えがまとまっているのに、それを「文字にする」段階で強い負担が生じる状態です。次のように話せば伝わるのに、書くとなると急に難しくなることがあります。

  • 字のバランスが安定しない
  • 漢字を思い出せず何度も止まる
  • メモを取っているうちに話についていけなくなる
  • 文章を書くと内容がまとまりにくい

理解できていないわけではなく「書く」作業そのものに大きなエネルギーが必要になるケースが多いようです。周囲からは見えにくい負担を抱えている可能性があります。

ディスカリキュリア(算数障害)|数字や計算への困難

ディスカリキュリア(算数障害)は、数字の概念や計算の理解に困難がみられる状態です。たし算やひき算のような簡単な計算でも、とっさに答えが出にくかったり桁の繰り上がりや繰り下がりでつまずいたりすることがあります。

時間やお金の計算がとっさにできず、不安を感じる方もいるでしょう。本人の努力や意欲の問題ではなく、数字のとらえ方に特性が関係していることがあります。

学習障害と他の発達障害との違い・関係性

クエスチョンマーク
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学習障害は読み書きや計算など特定の学習に困難がみられる特性です。一方で、ADHDやASDなど他の発達障害とは特徴が異なりますが、重なってあらわれることもあります。それぞれ詳しく解説します。ご覧ください。

ADHD(注意欠如・多動症)との違い

ADHD(注意欠如・多動症)は、不注意や多動性、衝動性といった特性が中心となる発達障害です。忘れ物が多い、集中が続かない、思いついたことをすぐに行動に移してしまうなどの様子がみられます。

一方、学習障害は読む・書く・計算など特定の学習領域に困難があらわれる点が特徴です。ただし、学習障害とADHDが併存する場合や困り事が重なっていることもあります。

ASD(自閉スペクトラム症)との違い

ASD(自閉スペクトラム症)は、対人関係のとらえ方やコミュニケーションの特性、興味や行動の偏りなどが中心となる発達障害です。相手の気持ちを読み取るのが難しかったり、予定の変更に強い不安を感じたりすることがあります。

学習障害は、主に読み書きや計算といった学習面に困難があらわれる点が異なります。ただし、ASDと学習障害があわせてみられる場合もあるようです。

大人の自閉症についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事もあわせてご覧ください。

あわせて読みたい ▼ 大人の自閉症|自閉スペクトラム症(ASD)の特徴や対処法

学習障害かもしれないと思ったら|診断を受けられる場所と流れ

社会人
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学習障害かもしれないと感じたら、一人で抱え込まず専門機関に相談することが大切です。ここでは、診断を受けられる場所や一般的な流れについて紹介します。

診断を受けられる医療機関

学習障害の診断は、発達障害を扱っている医療機関で受けることができます。大人の場合は、子ども専門ではなく「成人の発達障害」に対応しているかを確認することが大切です。

  • 精神科
  • 心療内科
  • 発達外来のある総合病院
  • 大学病院の専門外来

予約制が多く、初診までに時間がかかる場合もあります。不安があるときは、事前に電話で「大人の学習障害の相談が可能か」を確認しておくと安心です。

診断までの一般的な流れ

診断までの流れは医療機関によって異なりますが、いくつかの段階を経て進められることが一般的です。

まずは問診で、これまでの困り事や子ども時代の様子、現在の生活や仕事での状況について確認されます。その後、必要に応じて知能検査や読み書き・計算に関する心理検査が実施されることもあるでしょう。

検査結果や聞き取り内容をもとに、医師が総合的に判断します。診断は一度で決まる場合もあれば、複数回の受診を通して慎重に検討されることもあります。結果が出るまでに時間がかかる可能性があるため、時間にゆとりをもって受診の計画を立てることが大切です。

仕事での困り事と対処法

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学習障害があると、仕事の中で読む・書く・計算に関わる業務に負担を感じることがあります。ここでは、具体的な困り事と現実的な対処法を整理します。

読むことへの対処法

読むことに強い負担を感じる場合は「無理に頑張る」よりも環境や方法を工夫することが助けとなります。

たとえば、文章を音声で読み上げてくれるアプリを活用する、重要な部分にマーカーを引いて視線の迷いを減らす、長文は小さなまとまりごとに区切って読む、などの工夫が挙げられます。

「会議資料は事前に共有してもらう」「口頭での説明を補足してもらう」など、周囲の協力で負担が軽くなることも。自分に合う方法を少しずつ試していくことが大切です。

書くことへの対処法

書くことに強い負担がある場合は「正確に書こう」と力を入れすぎるほど疲れやすくなります。まずは、負担を減らす工夫を取り入れることが重要です。

  • パソコンやタブレットで入力する
  • 音声入力を活用する
  • 定型文やテンプレートを用意する
  • 漢字変換機能や校正ツールを使う

すべてを手書きでする必要はありません。仕事の目的は「きれいに書くこと」ではなく「内容を伝えること」です。道具を使うことは甘えではなく、自分に合った方法を選ぶ工夫のひとつです。

計算への対処法

計算に強い負担を感じる場合は「暗算で素早く答える」ことを前提にしない工夫が役立ちます。正確さを保つために、以下のように道具や手順を取り入れることもいいでしょう。

  • 電卓や計算アプリを積極的に使う
  • 計算式を書き出して順番を整理する
  • ダブルチェックの時間をあらかじめ確保する
  • 金額や数字は声に出して確認する

数字に不安がある場合は、一人で抱え込まず確認できる仕組みをつくることが安心につながります。完璧を目指すより、ミスを防ぐ方法を整えることが現実的です。

職場で受けられる「合理的配慮」とは

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合理的配慮とは、障害のある人が働きやすくなるように、業務内容や環境を必要に応じて調整する取り組みです。ここで具体例や対処法など詳しくみてみましょう。

学習障害のある方への配慮の具体例

学習障害のある方への合理的配慮は、一人ひとりの困り事に合わせて調整されます。大きな変更ではなく、以下のような少しの工夫で負担が軽くなることもあります。

  • 資料を事前に共有する
  • 口頭説明をあわせる
  • 計算業務を分担する
  • マニュアルを視覚的に整理する

すべてを特別扱いするという意味ではありません。本人の特性に合わせて環境を整えることで、力を発揮しやすくすることが目的です。

配慮を受けるために職場へ伝えるときのポイント

配慮をお願いするときは「できないこと」だけを伝えるのではなく「どうすればできるか」をあわせて説明することが大切です。

まずは、自分がどの業務で困っているのかを具体的に整理します。そのうえで「資料を事前に共有してもらえると助かります」「計算は電卓使用を認めてほしいです」など、現実的な提案を添えると話し合いがしやすくなります。

診断書がある場合は共有すると理解が進みやすくなりますが、必ずしも強制ではありません。信頼できる上司や人事担当者に、段階的に相談する方法も配慮を受けるために役立つ方法です。

活用できる支援機関・サービス

話す女性
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学習障害のある方が利用できる支援機関やサービスもあります。困り事を一人で抱えず、専門機関のサポートを受けるという選択肢もあります。

発達障害者支援センター

発達障害者支援センターは、発達障害のある方やその家族を対象に相談・支援している公的な機関です。学習障害についての悩みや仕事・生活上の困り事についても相談できます。

医療機関の紹介や利用できる制度の案内、職場との調整についての助言を受けられるのも特徴です。各都道府県に設置されており、まずは電話や面談で相談することができます。

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所は、障害のある方が一般企業への就職を目指すための訓練・サポートを受けられる福祉サービスです。学習障害があり、仕事での困り事に不安がある場合も利用を検討できます。

ビジネスマナーの練習やパソコン訓練、職場実習などを通して、自分に合った働き方を探すためにも役立つでしょう。就職後の定着について支援している事業所もあります。

障害者雇用で自分に合った働き方を見つける方法も

スーツ姿の女性
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障害者雇用という選択肢も、自分に合った働き方を考えるうえで役立つ方法です。障害者雇用では、特性を前提とした業務内容の調整や合理的配慮を受けながら働ける場合があります。

無理に苦手な業務を続けるのではなく、自分の得意なことや負担の少ない業務に目を向けることで、働きやすさが変わることもあります。どのような仕事があるのかを知ることから始めてみるのもよいでしょう。

発達特性を生かせる職種については、こちらの記事も参考にしてみてください。

あわせて読みたい ▼ 発達障害の特性を生かせる仕事9選!ASD・ADHDなどタイプ別に解説

回復のペースは人それぞれ。自分を大切に進めていこう

社会人
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困り事に気づいたとき「すぐに変わらなければ」と焦ってしまうこともあるかもしれません。しかし、理解が進むスピードや環境を整えるペースは一人ひとり異なります。

大切なのは他人と比べることではなく、自分にとって無理のない方法を少しずつ探していくことです。できなかったことよりも、工夫できたことに目を向けながら、自分を大切にしていきましょう。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の治療法や診断を推奨するものではありません。症状にお悩みの方は、必ず医師などの専門機関にご相談ください。

[ライター]コニーリー 麻弥(看護師 / 保健師)

看護師・保健師資格保有。大学卒業後、大学病院集中治療室で7年勤務し、新生児から老年期まで幅広い患者の急性期ケアを経験。保健師として活動し、看護大学非常勤講師も務める。その後、高齢者施設や看護小規模多機能施設に従事し、老年期医療に携わる。急性期から慢性期まで、幅広い年齢層の患者ケアに携わる。現在は臨床経験を活かし、認知症や介護に関する記事、クリニックのコラムなど医療情報の執筆活動も行っている。

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