障害者手帳の申請|どんな人がもらえる?手続きの流れとメリット
▼この記事の3つのポイント
- 障害者手帳には「身体障害者手帳」「精神障害者保健福祉手帳」「療育手帳」の3種類があり、それぞれ対象や支援内容が異なります
- 「窓口での相談→診断書の作成→書類の提出→審査→交付」が申請の流れであり、必要書類や診断書の準備が必要です
- 障害者手帳を活用することで、生活や仕事での支援が受けやすくなり、自分らしい暮らし方・働き方を実現するきっかけとなります
障害者手帳って必要?どこでもらえるの?

「自分は手帳の対象になるのかな?」
「手帳の申請手続きって難しいんじゃないの?」
障害者手帳について、こんな不安や疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
障害者手帳は、生活や仕事で生じる困り事を減らし、さまざまな支援を受けやすくするための制度です。うまく活用することで、暮らしや働き方の選択肢が広がります。
この記事では、障害者手帳の種類や対象者、申請方法の流れ、受けられるサポートについてやさしく解説していきます。
まず知っておきたい、障害者手帳の3つの種類と対象者

障害者手帳には、身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳・療育手帳の3つの種類があります。各手帳の特徴と対象者について解説していきます。
身体障害者手帳|身体の機能に障害がある方
身体障害者手帳は、目・耳・手足・内臓など身体の機能に障害があり、日常生活や社会生活で支援が必要な方が対象の障害者手帳です。障害の程度は「身体障害者福祉法」や「身体障害者程度等級表」で定められており、1級から6級に区分されます。数字が小さいほど障害の程度が重くなっています。たとえば1級とは、両眼の失明や重度の難聴など日常生活に大きな支障がある状態です。
身体障害者手帳を持つことで、税金の控除や公共交通・水道・電気などの料金割引、福祉サービスの利用など経済的支援が受けられるわけです。また、障害者雇用枠での応募資格を得られる場合もあり、職業選択の幅も広がります。
等級や支援内容は自治体によって異なるため、申請前に確認しましょう。
参考:障害者手帳|厚生労働省
精神障害者保健福祉手帳|精神疾患がある方
精神障害者保健福祉手帳は統合失調症やうつ病、てんかん、発達障害など精神疾患のある方が対象です。一時的ではなく、長期間にわたり日常生活や社会生活に制約がある方が取得対象です。申請には「初診日から6か月以上経過している」ことを条件とする自治体もあります。
精神障害者保健福祉手帳を取得することで、税金の控除や公共料金の割引、交通機関や公的施設の利用料減免などの経済的支援が受けられます。さらに医療費助成や居宅介護、就労支援などの福祉サービスを利用しやすくなるのも大きなメリットです。
等級は1~3級に分かれ、1級がもっとも支援が必要な状態を示します。疾患の有無・生活への影響・社会参加のしづらさなど総合的に判断して決定されます。
参考:障害者手帳|厚生労働省
精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について|厚生労働省
障害者手帳・障害年金|国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所
療育手帳(愛の手帳など)|知的障害がある方
療育手帳は、知的障害(知的発達症)があると判定された方が対象の障害者手帳です。自治体によっては「愛の手帳」「みどりの手帳」などと呼ばれます。
18歳未満は児童相談所、18歳以上は知的障害者更生相談所で知能検査や面談を受け、障害の程度が判断されます。発達障害であっても知的な遅れがない場合は、療育手帳の対象とはなりません。場合によっては、精神障害者保健福祉手帳の対象になることもあります。
手帳を取得すると、税金・公共料金・交通費の割引をはじめ、学校や職場での配慮、生活支援などの福祉サービスを受けやすくなります。自治体によって区分方法は異なり、「A(重度)」「B1(中度)」「B2(軽度)」などが一般的です。なかには、IQ35以下でAと判定する地域もあり、判定内容によって受けられる支援が変わります。
参考:障害者手帳|厚生労働省
障害者手帳の申請から交付までの5つの流れ

障害者手帳は、申請すればすぐに受け取れるわけではありません。自治体によって審査方法は異なりますが、書類や主治医の意見書、判定など、段階を経て交付されるものです。障害者手帳の申請から交付までの流れを順に解説します。
1. 申請窓口で相談し、申請書類を入手する
障害者手帳を申請したいときは、まず住んでいる市区町村の障害福祉課などの窓口に相談しましょう。そこで、申請の手続き方法や必要な書類の説明を受け、申請書や診断書の用紙を受け取ります。
18歳未満の方は、児童相談所が窓口になる場合もあります。自治体によっては、あらかじめ予約が必要だったり指定された判定日に出向いたりする必要があることも。まずは、自分が対象となる手帳の種類や申請の流れについて説明を受け、理解しておきましょう。
2. 主治医に相談し、診断書を作成してもらう
障害者手帳の申請には、医師が作成した診断書が必要です。診断書の作成日は、申請日の3か月以内を条件とする自治体が多い傾向です。
また、手帳によってルールが設けられている場合もあります。たとえば、身体障害者手帳の場合は「指定医師」の診断書でなければ受け付けられません。また、精神障害者保健福祉手帳を取得したい場合、初診日から6か月以上経過していることが条件の場合もあります。
診断書の発行には時間がかかることもあるため、申請する日程より余裕をもって依頼しておくと安心です。
3. 必要書類を準備し、窓口に提出する
診断書を受け取ったら、申請に必要な書類をまとめて窓口に提出します。
主な書類は次のとおりです。
- 申請書
- 医師の診断書・意見書
- 写真(縦4cm×横3cm、1年以内に撮影したもの)
- 本人確認書類(マイナンバーカードなど)
- 印鑑(必要な自治体のみ)
自治体によって提出書類や写真のサイズが異なることもあるため、必ず事前に確認しておきましょう。
また、本人が窓口に行けない場合は、家族などの代理人が手続きすることも可能です。
4. 審査・判定
申請書類を提出すると、自治体や都道府県で審査が進められます。
各手帳の審査や判定の特徴は次のとおりです。
- 身体障害者手帳:提出された診断書をもとに「1級~6級」などの等級を判定します。
- 精神障害者保健福祉手帳:精神疾患の種類や日常生活への影響を総合的に審査します。
- 療育手帳:知能検査や面談を実施し、心理判定員や医師が支援の必要度を確認します。
どの手帳でも「どのくらい支援が必要か」を丁寧に判断する流れは共通しています。
5. 審査結果の通知と手帳の交付
審査が終わると、障害者手帳の交付結果が通知されます。交付までの期間は、早い自治体で数週間、一般的には1~2か月ほどです。
結果が出たら、本人または代理人が窓口で手帳を受け取ります。
手帳の有効期限は種類によって異なります。身体障害者手帳は基本的に更新不要ですが、状態が変わったときは再認定が必要です。精神障害者保健福祉手帳は2年ごとの更新制、療育手帳は自治体により3~5年ごとの再判定があります。
手帳を受け取ったあとも、状態の変化に応じて手帳を更新・見直しましょう。
障害者手帳で受けられるメリットは?

障害者手帳は、日常生活や社会との関わりを支えるための制度です。生活・移動・就労など、身近な場面で受けられる主なサポートやメリットを紹介します。
経済的な負担が軽くなる(税金・公共料金など)
所得税や住民税には「障害者控除」があり、本人や扶養している家族が対象です。そのため障害者手帳を持つと、税金の控除が受けられます。一般の障害者なら所得から27万円、特別障害者なら40万円が差し引かれる計算です。
また、公共料金や交通機関、施設利用料の割引が受けられる場合もあります。たとえば水道料金の減免や鉄道・バス運賃、公営施設の利用料割引などです。
手帳の種類や等級、自治体の制度によって内容は異なるため、自分が受けられる支援は窓口で確認してみましょう。
参考:障害者と税|国税庁
自分に合った働き方を見つけやすくなる(障害者雇用)
障害者手帳を持っていると「障害者雇用枠」での就労を選べるようになります。一般就労以外の選択肢が増えることは、大きなメリットです。企業は、障害者雇用枠の社員に対し「合理的配慮」の義務があるため、通院や休憩、勤務時間など、状況に応じて業務内容の調整を相談しやすくなります。
さらに、就労移行支援や就労継続支援といった制度も利用可能です。これらの支援では、仕事に関する相談から就職後のフォローまで長期的なサポートが受けられるため、心強い味方となるでしょう。
日常生活でのサポートが受けられる
障害者手帳は、障害のある方の日常生活を支える役割も果たします。移動や外出に関する割引やサポートは、自治体だけでなく多くの企業でも実施されています。
たとえば、公共交通や通信会社などでは、割引や優遇制度。映画館・美術館・博物館・カラオケといった娯楽施設では、本人と介助者の料金が割引または無料になる場合もあります。また、電車・バス・タクシー・高速道路の運賃割引もあるため、外出や通院のハードルも下がるでしょう。
こうした支援は、外に出るきっかけをつくり、社会とのつながりを保つためのサポートともいえます。家にこもりがちな状況を防ぎ、自分のペースで人と関われる環境を整えていきましょう。
障害者手帳は「レッテル」ではない

障害者手帳の取得は、障害のある方が自分らしく、安定した生活を送るための大切な権利です。
手帳を持つことで「自分は障害者なんだ」とレッテルが張られたように感じるかもしれませんが、そうではありません。手帳を取得したからといって、生活や就労で不利になるわけではなく、むしろ安心して暮らせる基盤を整えられます。
また、手帳を持っていたとしても周囲へ報告の義務はなく、希望すれば返納も可能です。障害自体をオープンにするかどうかも自分で選択できます。
家族や主治医、支援機関に相談しながら、自分にとって必要かどうかをゆっくり考えてみましょう。手帳はあなたをしばるものではなく、より生きやすくするためのツールです。
障害者手帳の申請に関するQ&A

ここでは、障害者手帳の申請に関するよくある質問を紹介します。
Q. 診断書の作成に費用はかかりますか?
障害者手帳の申請自体には費用がかからない自治体が多いようです。しかし、医師に書いてもらう「診断書」や「意見書」には費用がかかる場合がほとんどです。健康保険が使えないため自費扱いとなり、医療機関によって価格は異なります。
一方で、診断書の作成費用を一部助成してくれる自治体もあります。費用や助成の有無は市区町村によって異なるため、事前に確認しておきましょう。
Q. 申請すれば必ず取得できますか?
障害者手帳は、自治体や手帳の種類ごとに定められた基準を満たす必要があります。そのため、申請したからといって必ず交付されるわけではありません。
たとえば、精神障害者保健福祉手帳では「初診日から6か月以上経過している」などの条件があり、障害の程度が該当しなければ交付されません。
手帳の交付は、診断書の内容や日常生活への影響など総合的に判断されます。迷ったときは、医師や自治体の窓口に相談してみましょう。
Q. 申請してから手帳が交付されるまで、どのくらいかかりますか?
障害者手帳の交付までは、一般的に1〜2か月ほどかかるケースが多いようです。早い自治体では数週間で届くこともありますが、審査内容や混み具合によっては時間が延びる場合もあります。
また、診断書の書き直しや書類の不備があると再提出となり、さらに期間が長くなります。就職活動や支援サービスの利用に手帳が必要な場合は、余裕をもって早めに申請しておきましょう。
Q. 申請が通らなかった場合、再申請はできますか?
障害の状態が変わったり新たな障害が加わったりした場合、再度の申請や等級変更を手続きすることができます。また、初回の申請で条件を満たさなかった場合も、診断書の内容や医師の指定、日付の更新などを整えて再提出することが可能です。
申請が通らなかった場合は、書類や審査の手続きに不備がなかったかを一度確認してみましょう。障害の状態だけでなく、診断書の内容や申請の時期が影響することもあります。
また、再申請を考えるときは「今の自分に本当に必要か」をもう一度見直してみることが大切です。
参考:障害者手帳|厚生労働省
Q. 会社や家族に知られずに申請することは可能ですか?
障害者手帳を持っていることや申請中であることを、会社や家族に必ず伝えなければならないという決まりはありません。ただし、税金の控除などを会社経由で申請する場合、人事担当者が手帳の有無を知ることがあります。
また、生計を共にする家族には、税金の申告などの関係で手帳の取得が知られる可能性があるかもしれません。
会社や家族に、手帳の所持を「伝える」「伝えない」は自由ですが、協力を得たほうが安心できる場面もあるでしょう。
Q. 今の職場に、手帳を持っていることを報告する義務はありますか?
障害者手帳を持っていることを職場に伝える義務はなく、どうするかは本人が選べます。
ただし、勤務中の配慮(合理的配慮)を求めたい場合は、手帳を提示して相談することで理解を得やすくなります。
また、控除や手当などを受ける際に、会社との書類のやり取りが発生する場合もありますが、それも本人の選択次第です。必要なときだけ、必要な範囲に伝えれば問題ありません。
Q. 一度取得した手帳を、後から返納することはできますか?
障害者手帳は「一度取得したら一生持ち続けなければならない」ものではありません。症状が改善したり、生活・仕事の状況が変わったりしたときは、返納や等級の見直しを申し出ることができます。
ただし、返納すると利用できなくなる支援もあるため、返納前に内容を確認しておくことが大切です。すべてのサポートを受ける必要はなく、自分の状況に合わせて必要なときだけ手帳を利用しましょう。
Q. 手帳を活かして就職活動をしたい場合、どうすればいいですか?
障害者手帳を持っていれば「障害者雇用枠」での応募が可能です。企業は障害のある方に対し「合理的配慮」の義務があるため、通院や勤務時間など調整しやすくなります。
また、就労移行支援やリワークなどの支援機関が利用しやすくなり、就職前の準備から就職後のフォローまで長期的にサポートが受けられます。
障害者雇用枠の求人は、一般的な求人サイトには掲載されていないこともあります。そのため、障害者の就職・転職に特化した転職エージェントを活用するのもおすすめです。
最初の一歩は「相談」から。手帳を自分の未来につなげよう

障害者手帳は、障害のある方が生活や仕事を安定させるための制度です。取得することで、税金の控除や公共料金の割引などの経済的支援、就労支援や福祉サービスなど、暮らしを支えるサポートを受けられます。
申請の手続きは少し複雑に感じるかもしれませんが、自治体の窓口や主治医、支援機関に相談しながら順番に進めていきましょう。
手帳は「特別なもの」ではなく、あなたが自分らしく働き、暮らしていくための仕組みのひとつです。迷ったときは一人で抱え込まず、まずは相談から始めてみましょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の治療法や診断を推奨するものではありません。症状にお悩みの方は、必ず医師などの専門機関にご相談ください。

看護師として総合病院で10年間勤務。循環器科・救急科にて急性期看護を学びました。結婚を機にクリニックへ転職。現在はWebライターとしても活動しています。子どもの発達に不安を抱き、児童発達支援士を取得。障害のある方の不安に寄り添った記事を執筆します。


