作成日:
2025年6月4日
更新日:
2025年11月30日

アスペルガー症候群の特徴や症状とは?治療方法や向いている仕事まとめ

[監修者]北川 庄治

デコボコベース株式会社 最高品質責任者(CQO)

東京大学大学院 教育学研究科
博士課程 単位取得満期退学

通信制高校教諭、障害児の学習支援教室での教材作成・個別指導 講師を経て、現在は療育プログラムの開発、保護者や支援者向けの研修を実施

▼【注意】診断名について

2013年以降、国際的な診断基準(DSM-5)では「アスペルガー症候群」という診断名は廃止され、現在は「自閉スペクトラム症(ASD)」に統合されています。

本記事で解説する「アスペルガー症候群」は、「知的障害や言葉の遅れがない自閉スペクトラム症」の特性を指すものとしてお読みください。

▼この記事の3つのポイント

  • アスペルガー症候群は、生まれつきの特性であり、見た目では分かりにくい困りごとを抱えることがあります
  • 人付き合いや感覚過敏、強いこだわりなどから生きづらさを感じることもありますが、特性を理解することで対処法が見えてきます
  • 困ったときは相談機関や支援制度を活用することで、自分に合った環境で安心して暮らす・働くことができます

アスペルガー症候群って?生きづらさと関係ある…?

出典:photoAC

アスペルガー症候群は発達障害のひとつです。おもに、コミュニケーションに困難を感じる特性があり「周囲と会話が成り立たない」「なぜ怒っているのかがわからない」などと感じることもあるかもしれません。

そのような状態が続くと、学校へ行くのが怖くなったり、会社に行けなくなったりして生きづらさを感じる可能性があります。

アスペルガー症候群の特徴は、日常生活に支障をきたすものがあるため、生きづらさと密接に関係しているといえるでしょう。

「アスペ」と呼ばれることに傷ついたことはありませんか?

出典:photoAC

アスペルガー症候群は略して「アスペ」といわれることがあります。「アスペ」を「空気が読めない」「話が通じない」という意味で「あなた、アスペでしょ」と使う方がいるかもしれません。

アスペルガー症候群の方は、好きで空気が読めない言動をするわけではなく、当事者も困惑しているのです。

アスペルガー症候群とは何か、特徴や困難なことについて、まだ世間に浸透しきれていない部分があると考えられます。偏見の多い疾患であるともいえるでしょう。

そもそもアスペルガー症候群とは?

出典:photoAC

そもそもアスペルガー症候群とは、次のように定義されています。

アスペルガー症候群とは、知的発達の遅れを伴わない、かつ自閉症の特徴のうち言葉の発達の遅れを伴わないものである。

出典:文部科学省 参考3 定義と診断基準(試案)等

知的障害や言葉の遅れなど、明確な障害がみられないことから、見逃されやすい発達障害といえるでしょう。

アスペルガー症候群の当事者であっても、自覚がないまま大人になる人もいると言われています。

大人として社会に出てから「自分と周りは何かが違う」「うまく人間関係が築けない」などと感じ、発達障害に気づくこともあるのです。

アスペルガー症候群の特徴

出典:photoAC

ここからは、アスペルガー症候群の特徴を具体的に紹介します。どんなところに困難を感じるのか、自分に当てはまっているか確認してみましょう。

人付き合いが苦手・コミュニケーションに課題を感じやすい

アスペルガー症候群には、周囲の空気を読む、暗黙のルールが理解できない特徴があります。そのため、人間関係の構築に困難を感じ、人付き合いが苦手だったり、コミュニケーションがうまく図れなかったりするのです。

例えば、会議中に別の仕事について質問したり、仕事中に大声で雑談したりするなどの行動が特徴です。

そのような行動は、周囲に「空気が読めない」「なぜあのような発言をするのか」などと思われ、孤立していく可能性があります。

特定のものや行動へのこだわりが強い

特定のものや行動に対して強いこだわりがあるのも、アスペルガー症候群の特徴です。

例えば仕事の手順を覚えた場合、順番通りに取り組むことはできても、変更すると取り組めなくなったり、話し声や時計の秒針の音が気になって仕事が手につかなくなったりするなどがみられます。

強いこだわりによって「仕事が遅い」「次の作業に切り替えられない」など、業務に影響を及ぼす可能性が考えられます。

一方で、強いこだわりを示す物事には集中して取り組めたり、覚えた手順を忠実に再現できたりするなど、強みとなる場面もあるでしょう。

感覚が過敏なケースもある

アスペルガー症候群には、次のような味覚・聴覚・触覚などの感覚が過敏なケースもあります。

  • 時計の秒針が気になる
  • 日光や照明の光が眩しい
  • 服の肌触りが気になる
  • においの強い食べ物が苦手など

アスペルガー症候群の方全員にみられる特徴ではありませんが、このような感覚過敏により困難を感じるケースもあります。

感覚過敏は「治す」よりも「軽減する」意識をもつことが必要です。どうしたら感覚過敏が軽減されるかを考えて対処することが大切なのです。

大人になってからアスペルガー症候群だと気づくことはある?

出典:photoAC

アスペルガー症候群は、知的障害や言葉の遅れなどを伴わない発達障害であるため、子どもの頃には気づかないケースがあります。

例えば、子どもの頃に一人で遊んでいても「一人遊びが好きな子」と思われたり、ひとつのおもちゃばかりで遊んでいても「そのおもちゃが好きなんだ」とみられるでしょう。困り事があっても、周囲の大人がサポートすることで乗り越えてきているかもしれません。

また記憶力がよく、成績優秀で学生時代を過ごす方もいるでしょう。そのため、大人になるまでアスペルガー症候群の可能性を考える機会がないケースがあるのです。

大人になってから社会に出て、日常生活に困難を感じたことで初めて気づく可能性も考えられます。おもに、学生時代とは異なる複雑な人間関係や、臨機応変な対応を求められてもできなかった場合などに「自分はアスペルガー症候群なのでは」と感じるかもしれません。

アスペルガー症候群かもしれないと思ったらどうする?

出典:photoAC

大人になって社会生活や日常生活に困難を感じ「アスペルガー症候群かもしれない」と思ったときに、どのような行動をとるのがよいのか紹介します。

自分の特性とアスペルガー症候群の特性を改めて確認してみる

政府や医療機関のウェブサイトや書籍などに、アスペルガー症候群の特徴が記載されています。自分の感じている困り事や特徴が、記載されている内容に当てはまっているか確認してみましょう。

当てはまる項目が多い場合は、アスペルガー症候群の可能性が考えられるため、専門機関への相談を検討しましょう。

専門機関へ相談する

大人のアスペルガー症候群は、心療内科や精神科など医療機関を受診するのがおすすめです。困難を感じたまま生活を続けると、不安やストレスが蓄積し、うつ病やパニック障害など二次障害を引き起こす可能性があります。

専門機関に相談し、自分の特性にあった対処法やサポートを受けることで、日常が暮らしやすくなるかもしれません。

治療・サポートとの付き合い方について

出典:photoAC

アスペルガー症候群は治療できるのか、どのようなサポートを受けると困難が軽減されるのかを紹介します。

アスペルガー症候群は「治す」より「理解する」がカギ

アスペルガー症候群は、生まれ持った脳の機能によって起こる特性だといわれています。そのため、薬や手術などで治療できるものではありません。

ただし、アスペルガー症候群によって日常生活に困難を感じ、気持ちが落ち込んだり、学校や仕事に行けなくなったりするなどの症状がある場合は、薬を使用することで軽減されることもあります。

アスペルガー症候群と診断された場合や同様の症状に悩んでいる方は、その特性を理解したうえで適切に対処すると暮らしやすくなるかもしれません。

適切な対処法はどこで教えてもらえるのか、次に紹介します。

相談できるサポート機関を活用する

アスペルガー症候群に悩む方向けに、さまざまなサポート機関があります。

サポート機関具体的なサポート内容
医療機関(心療内科・精神科)・アスペルガー症候群かどうか診断してくれる
・うつや適応障害など二次障害に対して内服治療が受けられる
発達障害者支援センター・保健、医療、福祉など総合的にサポートしている
・日常生活や仕事、人間関係の相談に対応している
障害者就労・生活支援センター・就職や就労に関して相談できる
・健康管理や金銭管理をしてもらえる
ハローワーク・地域障害者職業センター・就職を希望する方向けに就職先を紹介したり、就職活動をサポートしたりする

各都道府県や地方自治体によって、設置されている機関があるところと、ないところがあります。在住地域で相談できる窓口があるか、探してみましょう。

アスペルガー症候群と付き合っていくためのポイント

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アスペルガー症候群は治す意識よりも、上手に付き合っていくことが大切です。そのために必要なポイントを紹介します。

自分の特性を理解する

まず、自分にとってどんなことに苦手意識があり、どんな場面で困難を感じるかなど、自分の特性を理解することが大切です。

アスペルガー症候群にはさまざまな特性があり、どの特性が強く出やすいのかによって対策が異なるためです。

例えば、急な予定変更に対応できずパニックになる、口頭で受けた仕事を忘れてしまう、作業に集中していると周りの声が聞こえなくなるなど、その人によって出やすい特性があります。

自分の特性を理解して、それに合う対処法を実践していきましょう。

日常生活やコミュニケーションでのルールを決める

自分の特性を理解したら、日常生活やコミュニケーションに関する自分なりのルールを決めましょう。次の例を挙げます。

  • 口頭で受けた仕事はメモを取るように習慣づける
  • 自分の希望通りに作業が進まない場合は代わりの計画を考えておく
  • 相手が怒っている原因がわからないときは、誰かに確認する

日ごろから意識することで他者とのコミュニケーションが円滑になったり、日常生活の困り事が軽減されたりする可能性があります。自分なりのルールを考えてみましょう。

自分にとって安心できる環境を整える

アスペルガー症候群は他者とのコミュニケーションに困難を感じたり、感覚過敏があったりと、日常生活において苦痛を感じる場面が多いといえるでしょう。とくにストレスや不安が強いときは、感覚過敏が強く出やすい傾向にあるといわれています。

そのなかで安心して日常生活を送るためには、次のような環境を整えることも大切です。

  • 自分が苦手とする刺激が緩和できるところで過ごす
  • 気の合う友人と過ごす
  • 集中できる作業や好きなことをして過ごす時間を作る

例えば、感覚過敏で周囲の音が刺激になる場合、静かな部屋や席で仕事ができるように配慮してもらうのも対処法のひとつです。

外部や周囲にサポートをお願いする

家族や友人、会社の同僚など周囲にサポートをお願いするのも、自分が日常生活を送りやすくするために大切です。

まず、自分にどんな特性がありどんな物事や場面が苦手なのかを伝え、どのようにサポートしてほしいのかを明確にすると、周囲もサポートしやすいでしょう。

例えば、仕事の指示を出すときは口頭ではなく、文字や図を交えたメモで出してもらったり、音に敏感な場合は静かな部屋で作業できるように配慮してもらったりすると取り組みやすいかもしれません。

特性を生かして自分に向いてる仕事を見つける方法

出典:photoAC

音に過度な刺激を感じる方が、騒音の多い職場で働くのは困難といえるでしょう。自分の特性を考慮し、働きやすい仕事を探すことも働き続けるために大切です。

どのように、自分の特性を生かした仕事を見つけるかを紹介します。

得意なことから仕事を洗い出してみる

まずは、自分が得意だと思う物事が仕事に生かせるか考えてみましょう。

  • 一連の作業を集中して繰り返すのが得意→プログラマー、校正者など
  • 論理的分析が得意、記憶力が高い→研究者、技術者など
  • 絵を描くことが好き、自分の想像を形にできる→デザイナーなど

アスペルガー症候群は、特定の物事に対するこだわりが強い傾向にあります。そのこだわりは、高い集中力を発揮したり、こだわって完成させたもののクオリティーが高かったりと、強みとして生かせる可能性があります。

自分の得意なことや好きなことを振り返り、生かせる仕事がないかを探してみましょう。

興味のあることと自分の特性がマッチする職業を選択する

自分の興味のあることには、高い集中力を発揮したり、こだわりを持って粘り強く取り組めたりするのが、アスペルガー症候群の特徴です。

例えば、細かいデータ分析など他者が「面倒だな」と感じるような作業も、自分が興味のあるものは集中して取り組むことができるかもしれません。

自分が何に興味を持ち、どんな作業が得意なのかを振り返ってみてください。

サポートを活用して無理のない働き方を見つける

自分に合う仕事や条件が見つからない場合は、次のようなサポートを活用して無理のない働き方を見つけることも可能です。

  • 障害者雇用で見つける
  • 就労移行支援を活用する

障害者雇用とは、一般企業の身体・知的・精神に障害のある方の雇用枠を指します。障害者雇用では、時差通勤や就業時間の短縮、労働環境の配慮などが適用されるため、無理なく働ける環境が作れるかもしれません。

就労移行支援は、一般企業への就職を目指す障害者が、働くためのスキルを身につける公的サービスです。就職活動や職場に定着できるようにサポートしてくれます。

これらのサポートを活用して、安心して働ける環境を作ることも選択肢のひとつです。

自分らしく生きるためのコツを身につけよう

出典:photoAC

アスペルガー症候群は、強いこだわりやコミュニケーションに困難があるなどの特徴があります。そのため、学校や仕事、日常生活で困り事が発生しやすいといえるでしょう。

しかし、自分の特性を理解して適切に対処すれば困り事が軽減されるため、アスペルガー症候群の特性と上手に付き合っていくことが大切です。
デコボコエージェントでは、アスペルガー症候群や注意欠如多動性障害(ADHD)などがある方の就職・転職をサポートしています。自分の強みを生かせる仕事を見つけてみましょう。

[ライター]木村 美穂(看護師)
2008年に正看護師免許取得。一般内科、消化器外科、回復期などの病院・外来で実務。息子それぞれがASD・ADHD、次男はADHDと診断されたことをきっかけに、特性に合わせて生活できるように看護師を退職。現在は医療・福祉ジャンルを中心に執筆活動を行うWebライターです。

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