作成日:
2025年5月19日
更新日:
2025年10月17日

大人のADHDとは?注意欠如・多動症の症状や特徴、よくある困りごと

[監修者]北川 庄治

デコボコベース株式会社 最高品質責任者(CQO)

東京大学大学院 教育学研究科
博士課程 単位取得満期退学

通信制高校教諭、障害児の学習支援教室での教材作成・個別指導 講師を経て、現在は療育プログラムの開発、保護者や支援者向けの研修を実施

▼この記事の3つのポイント

  • 大人のADHD(注意欠如・多動症)は、仕事や人間関係での「小さなつまずき」が積み重なることで気づかれることがあります
  • 注意散漫・多動性・衝動性といった症状が、日常生活にどんな影響を与えるのか、具体的な例と対策を交えて解説します
  • 自分の特性を理解し、環境調整や支援制度を活用することで、「生きづらさ」は少しずつ軽くしていくことができます

大人のADHD…生活で困る場面が多い…

出典:photo AC

「どうして毎日上司に怒られるんだろう…」「会議中にまた余計な一言を言ってしまった…」こういった悩みからストレスを抱く人もいるのではないでしょうか。もしかしたら「ADHD(注意欠如・多動症)」が隠れているのかもしれません。

大人のADHDとは、これまでの生活では対処できていたものの、社会に出てから困難さや困りごとが生じることで発覚する場合が多いようです。

大人のADHDとはどういったもので、社会生活を送ることでの困りごとについて解説していきます。

そもそも、大人のADHD(注意欠如・多動症)とは?

出典:photo AC

ADHD(注意欠如・多動症)とは、注意散漫・多動性・衝動性といった症状が持続的にみられ、その結果、日常生活に困りごとが生じる障害です。幼少期から症状がみられ集団生活に困難さを感じることで、学童期以降に診断される場合が多い傾向です。

ADHDの原因は明らかにされていません。しかし、脳の発達や働きに関係しているのではと考えられています。また、遺伝的要因も指摘されています。

幼少期に強くみられるADHDの症状は、発達とともに薄れていくことも。また、成長過程で症状に対する対処方法を学び、注意できるようになります。

しかし、大人のADHDとは家庭や職場など複数の場面において、これまでの対処方法では対応できないほどの困りごとが生じる状態です。困りごとに対処できず自己肯定感が下がることで、うつ病や不安障害といった二次障害に繋がる可能性もあります。

参考:ADHD(注意欠如・多動症)|国立精神・神経医療研究センター

大人のADHD(注意欠如・多動症)の診断について

出典:photo AC

大人のADHDとは、注意散漫・多動性・衝動性といった症状がみられる状態です。診断に至るまでの重要なポイントは、6か月以上持続しているという点です。

ADHDの診断には、「DSM-5(診断と統計マニュアル第5版)」というアメリカ精神医学会が発行する診断基準が用いられます。

大人のADHDの診断は、幼少期からの症状や現在の生活における困りごと、行動評価スケールの結果から総合的に判断されます。ご自身の主観だけでなく、家族や周囲の方の情報も判断材料のひとつです。

大人のADHD(注意欠如・多動症)の主な症状

出典:photo AC

大人のADHDとは、持続する症状が、社会生活に支障をきたすものです。社会に出ると自分のことをよく知っている相手だけでなく、初対面の相手とも円滑に仕事を進めなければなりません。

しかし、注意散漫・多動性・衝動性といった症状が表れることで、業務がスムーズに進まない、相手とコミュニケーションをうまく図れないといった問題が生じます。自分のミスで相手からの信頼を失い、会社に大きな損失を与えてしまう可能性も…。

そのため、ご自身の症状を理解し、対処方法を身に付けておくことが非常に大切です。大人のADHDの方の困りごとが起こりやすい症状には以下のものがあります。

参考:発達障害の特性(代表)|厚生労働省

注意散漫

注意散漫な状態とは、集中力の欠如や人・物に注意を払えない状態、計画性がない状態のことです。

仕事中に、周囲の当たり前にある音(例えばコピー機の動く音など)や、視界の隅に入っているもののことが気になってしまう状態では、とても集中できているとはいえません。そのため、作業効率は下がり、業務に影響が出ます。

反対に、注意がひとつのことに集中してしまい、他の人や物に注意を向けることが難しい場合もあります。目先のことだけしか考えられず、先の行動を予測することが難しい場合も。そのため、忘れ物が多かったり、予定を忘れてしまったりといったミスが生じやすくなります。

参考:各障害の定義|国立障害者リハビリテーションセンター

多動性

多動性は、じっとしていることが難しく、会議中に席を立ってしまったり、手足を動かす・貧乏ゆすりをしたりしてしまう症状です。突発的で、思い立ったらすぐに動かないと気がすまないといった行動も含まれます。自分の感情のままに行動してしまうため、周囲の方からは「計画性がない」「落ち着きがない」と評価されてしまうことも。

また、多動性の中には内面的な落ち着きのなさも含まれます。じっと座っていることはできても、頭の中ではコロコロと考えが変化していき、思考がまとまらないといった症状です。思考といった自覚症状は、他者からはわからないため、大人のADHDであっても発見されにくいといった特徴もあります。

参考:各障害の定義|国立障害者リハビリテーションセンター

衝動性

ADHDの方は、頭に思いついたことを衝動的に口に出してしまい、一方的に話し続けてしまうといった症状があります。相手の言葉を遮り自分のことだけを話してしまうと、相手からは「コミュニケーションがとりにくい」と思われることも。

行動面でも衝動的に動くことがあり、衝動買いや計画性なく散財してしまいます。収入に見合った欲しい物ではなく、目についたものや人が持っているものなどがどうしても欲しくなり、借金をしてでも手に入れたいと考えることも。

また、感情のコントロールにも苦手さをもち、イライラや悲しい気持ちなどを抑えることができません。ときに暴力的な行動や人目を気にせず号泣してしまうなど、不安定な印象を持たれる可能性があります。

参考:各障害の定義|国立障害者リハビリテーションセンター

大人のADHDが日常に与える影響

出典:photo AC

大人のADHDは、自分だけでなく周囲の方へも影響を及ぼします。とくに、職場や日常生活で関わりが強い方は影響を受けやすく、ときには不利益を被ることも…。自分では気が付いていないこともあるため、まずはご自身の特性を認めることから始めましょう。

職場への影響

ADHDのある方が職場で生じやすい困りごとには以下のものがあります。

  • 小さなミスを毎日のように繰り返す
  • 時間を管理できず、会議に数分遅刻してしまう
  • 部下のミスに対し、感情的に叱責してしまう
  • 集中できず時間内に決められた業務をこなせない

これらは数回だけであれば小さなミスと捉えられるかもしれません。しかし、何度も繰り返すことで、努力していない、指導しても改善されないなどと評価されてしまうことも。

仕事は自分一人でするわけではなく、相手がいるものです。自分の評価や会社の信頼を損なわないよう、特性を認め、困りごとが起こりやすい状況を作らない対策が必要です。

また、ミスを繰り返すことで自信を失い、自己肯定感が下がります。仕事に行くのが嫌になったり、相手とのコミュニケーションを避けたりするようになるかもしれません。場合によってはうつ病や適応障害など二次障害を引き起こし、休職や退職となる可能性もあります。

私生活への影響

ADHDの方は、不注意や衝動性の特性により、人間関係に影響が出ることがあります。

例えば、友人と出かけたとき、相手の話を聞かずに一方的に話し続ける、スケジュールを決めていたのに思いつきで変更してしまうといった行動です。

相手のペースや気持ちを考えず、自分の衝動に任せて行動してしまうため、相手からは「自分の話を聞いてもらえない」「一緒にいると疲れる」など、自分勝手なイメージを持たれてしまう可能性も…。

また、注意散漫な特性により、待ち合わせ時間に遅刻するなど約束を守れないことがあります。何度も繰り返すことで、相手からの信頼を失い、友人関係が疎遠になる恐れもあるでしょう。

日常生活を送りやすくするためにはどうすればいい?

出典:photo AC

まずはご自身の特性とじっくり向き合い、どういった状態のときに症状が起こりやすいかを明確にしましょう。原因がわかれば、困りごとが起こりにくい対処法を考えることができます。大人のADHDの方がうまく症状と付き合うための対処法を解説します。

環境を整理しよう

大人のADHDの方がまずできる対策は、環境を整えることです。

とくに、職場においては環境整備がとても大切です。人の出入りや会話などが気になって注意が散漫になってしまうのであれば、入口から遠い席へ配置換えしてもらったり、パーテーションを使用してもらったりするなどして対処します。

忘れ物をしたり、予定自体を忘れてしまう場合には、目につくところに付箋でスケジュールを張ったり、リマインダー機能などを利用したりするとよいでしょう。

規則正しい生活リズムを心がけよう

ADHDの症状をコントロールするためには規則正しい生活が欠かせません。とくに、睡眠不足には注意が必要です。

たとえば、仕事が思うように進まず睡眠時間を削ったり、趣味に没頭するあまり夜更かししたりするかもしれません。ADHDの特性による衝動的な行動は、生活リズムを崩し睡眠不足に陥り、作業効率が上がらないといった悪循環を引き起こす可能性があります。

メリハリのある規則正しい生活リズムを心がけることで、集中力や注意力の低下を防ぐことができるでしょう。

公的な支援や合理的配慮などのサポートを活用しよう

精神障害のある方は、精神障害者手帳を取得できます。手帳を取得すれば、さまざまな公的サービスが受けられます。たとえば、補助金の支給や障害者雇用枠の利用などです。

一般的に会社の労働時間は8時間です。しかし、障害者雇用枠を利用すると、症状に合わせて働き方に配慮が受けられます。集中力が続かず8時間勤務することが難しければ、時短勤務へ切り替えるなどの配慮が受けられるかもしれません。

企業側は障害のある方に対し、合理的配慮をすることが義務化されています。そのため、ADHDがあると会社に申告することで、労働環境や労働条件などの配慮が受けやすくなり、働きやすい環境が整えられます。

【具体例】大人のADHDによる困りごとと対策

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大人のADHDの困りごとは、起こりやすい状況を避けることで解決する場合もあります。とくに、仕事面においては自ら働きやすい環境を整えなければいけません。困りごとの例を参考に、具体的な対策を考えていきましょう。

仕事や私生活でのタスク管理がうまくできない…

提出する書類の期日を守れない、買い物で買い忘れしてしまうなど、ADHDの方はタスク管理が苦手な傾向にあります。

対策としては、ツールの活用・タスクを書き出す・2分ルールを設けるといった方法が有効です。

タスク管理アプリやリマインダー機能を使い、タスクごとに期限を設定しておきます。このとき、タスク自体を細分化しておきましょう。たとえば書類の提出であれば、「〇日書類記入」「△日書類提出」などと設定し、1つのタスクの難易度を低くしておきます。期限は余裕を持った日付に設定しておきましょう。

また、タスクを付箋に書き出し、パソコン周りや手帳の表紙など目のつくところに貼っておくのもよいでしょう。2分以内にできるタスクはその場で解決し、先延ばししないことでやり忘れを防ぐことができます。

集中力が続かない…

仕事をしていてもついスマホでSNSを見てしまう、話に集中できず会話を聞き逃してしまうといった困りごとがある場合は、まず集中できない原因を明らかにしましょう。人の出入りや会話、エアコンの音など集中を妨げる原因は人それぞれです。

他の人の動きや声が気になる場合は、入口に背を向けた席や人の出入りの少ない位置への配置換えを希望したり、不快な音が気にならないようヘッドフォンを装着したりしてもよいでしょう。仕事中はSNSを利用できないように設定しておくと、物理的に原因から距離をとることができます。

自分だけでは解決できない環境は、上司へ理由を話し協力を依頼しましょう。

時間の管理がうまくできずに遅刻してしまう…

外出前に時間のかかる作業を始めてしまいキリがつかなくなる、時間に余裕があると別のことを始めてしまい結局遅刻してしまう。そんな経験がある方は時間を意識できるような対策が必要です。

行動するときにはアラームをかけるよう習慣づけます。出発時間だけでなく、準備を始める時間、出る5分前などこまめにアラームを設定し、遅れないよう調整しましょう。また、残り時間が色でわかるタイマーなどを利用し、視覚的な情報に変換することで、時間への意識が高まります。

また、日頃から余裕を持った行動を心がけ、予定時間より10~15分程度早く行動すると、遅刻を防ぐことができます。

人間関係をつくるのが難しい…

相手の話している内容からズレた会話をしてしまう、場にそぐわない発言をしてしまうなど、「空気が読めない」と言われた経験がある方もいるかもしれません。コミュニケーションがうまくいかないと、人間関係に悩みを抱えることもあるでしょう。

相手の会話の中で興味のある話が出ると、自分のことも話したくなります。しかし、相手が話しているときは、うなずきやあいづちでリアクションし、相手の話が終わってから話し出すようにしましょう。相手の話を遮らないだけで「ちゃんと聞いてくれる」という印象を与えられます。

また、家族や友人など信頼できる方に、ご自身のコミュニケーションのクセを聞き、アドバイスをもらうと注意するポイントがより具体的になります。

感情をコントロールできない…

他人のミスを厳しく責めてしまう、注意された内容が些細なことであっても必要以上に落ち込んでしまうなど、感情がうまくコントロールできないこともADHDの特性のひとつです。

感情の高ぶりを抑えられず過剰に反応してしまい、周囲の方へぶつけてしまうこともあります。また、してしまった行動を後悔し自己嫌悪に陥ることも…。

自分がどのような状況で感情的になるのかを振り返り、ピックアップしてみましょう。紙に書き出すことで可視化でき整理しやすくなります。怒りや悲しみなど感情ごとにきっかけを明らかにしていくと、対処しやすいかもしれません。

また、感情が高ぶったときには「10秒数える」「深呼吸する」など間を作ることで、衝動的な言動を防ぐことができます。

自分の特徴を理解して、生きやすい環境を見つけよう!

出典:photo AC

大人のADHDとは、社会生活に困りごとが生じることで発覚します。さまざまな場面において長期間症状が持続し、生活に影響が及ぶことも。

注意散漫・多動性・衝動性といったADHDの症状は、仕事の効率が悪くなるだけでなく、人間関係にも関わります。ストレスも大きく、二次障害に繋がる可能性があるため、対処法を身に付けることは重要です。
まずは自分の特性を認めることが大切です。そのうえで、環境を整えたり生活リズムを整えたりするなど対策します。また、適切なサポートを受けることで、過ごしやすい環境が整うのではないでしょうか。

[ライター]牧野 夏乃(看護師)

看護師として総合病院で10年間勤務。循環器科・救急科にて急性期看護を学びました。結婚を機にクリニックへ転職。現在はWebライターとしても活動しています。子どもの発達に不安を抱き、児童発達支援士を取得。障害のある方の不安に寄り添った記事を執筆します。

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