障害者雇用の合理的配慮とは?詳細や具体例を当事者向けに簡単に解説!

デコボコベース株式会社 最高品質責任者(CQO)
東京大学大学院 教育学研究科
博士課程 単位取得満期退学
通信制高校教諭、障害児の学習支援教室での教材作成・個別指導 講師を経て、現在は療育プログラムの開発、保護者や支援者向けの研修を実施
▼この記事の3つのポイント
- 合理的配慮とは、障害のある人が無理なく働けるように、職場での環境や働き方を調整してもらうためのサポートです
- 障害の特性や希望する配慮を、面接や書類で具体的に伝えることが、安心して働く第一歩になります
- 過度な負担にならない範囲での対応が原則のため、自分の状態や必要な支援を整理しておくことが大切です
「合理的配慮」ってよく聞くけど、どういう意味なんだろう

障害者雇用枠を活用する際に課題となるのが、自身の障害と合理的配慮に関する説明です。障害者雇用では、合理的配慮の必要性や具体例を正確に伝えることで、より自分らしく無理のない働き方がかなえられます。
今回は、障害者雇用における合理的配慮の基本情報や、面接時に伝える際のポイントなどをご紹介します。自分にとっても企業にとってもミスマッチを起こさないために、合理的配慮の必要性や重要性を学び、面接や履歴書の作成に役立てていきましょう。
合理的配慮とは

ここでは、障害者雇用における合理的配慮の意味をご紹介します。合理的配慮とは、障害のある人が社会生活において平等に参加するために欠かせない要素です。合理的配慮の定義や基本的な考え方を学び、面接時に障害を伝える際の参考にしていきましょう。
そもそも、合理的配慮の定義は?
文部科学省による定義によれば、合理的配慮とは「障害者が他の者と平等にすべての人権および基本的自由を共有し、行使することを確保するための変更・調整」です。合理的配慮における「変更・調整」は、その範囲が適当・適切なものであることが前提です。
障害者雇用における合理的配慮では上記の事項に加え、社会生活・就業・教育において平等に参加できることが定義されています。合理的配慮は2016年に施行された「障害者差別解消法」により、行政・学校・企業などの事業者に「可能な限り提供すること」が求められるようになりました。
参考:文部科学省「障害のある子どもが十分に教育を受けられるための合理的配慮及びその基礎となる環境整備」
定められている法律
合理的配慮を定めている法律は、前項に上げた「障害者差別解消法」です。障害者差別解消法は、すべての国民が障害の有無によって分け隔てられることなく、人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現のために制定されました。
よりわかりやすく表現するのであれば「障害を理由とする差別の解消」のために制定された法律ということになります。障害者差別解消法では、障害者雇用や合理的配慮などのほか、国が障害に関する知識や啓発を広げるよう取り組むことも示されています。
合理的配慮の基本的な考え方は?
合理的配慮の基本的な考え方は「共生社会の実現」です。具体的には、以下の要素を前提としています。
- 障害の有無にかかわらず、すべての命は平等である。
- 上記の価値観は「当たり前」のものであり、社会全体であらためて共有していくことが大切。
- 取り組みの積み重ねによって、「お互いにその人らしさを認め合いながら共にいきる社会=共生社会」が実現する。
障害を持つ人は、社会のなかに存在するバリアによって生きにくさを抱えている場合があります。合理的配慮では、事業者にとって負担が重すぎない範囲で対応することが求められています。
合理的配慮の重要性について

合理的配慮は、障害者自身が安全に社会生活に参加するためだけではなく、健全な社会の維持においても重要です。社会の合理的配慮が欠け、障害者が不当に差別されることが当たり前な世の中になれば、命の平等性が欠けてしまいます。
障害の有無によって命の価値に差が生まれた社会では「自分」と「自分とは違う存在」の間に優劣が生じ、新たな差別や孤立を生みます。合理的配慮によって障害者の権利や生活が守られることは、結果的に安定した社会の維持につながるのです。
ただし、障害者への配慮によって、障害のない人たちが負担を背負いすぎることは健全とはいえません。なぜなら障害を持たない人や企業も、障害者と同じように自らの生活や営みを守る権利があるからです。
だからこそ合理的配慮では「過度な負担のない範囲で調整し、できる限りの制限を取り除くこと」が前提とされています。
合理的配慮の具体例を見てみよう

ここでは、合理的配慮に関する具体例をご紹介します。当然ながら、合理的配慮の概要は障害の種類や程度によって異なるものです。障害者雇用を活用する際は、あらためて自分の障害の状態や特徴を把握しつつ、面接官に伝わりやすい言葉選びを心がけましょう。
採用のときの配慮
採用時の合理的配慮では、以下の例が挙げられます。
- 人ごみや騒音が苦手なので、出勤時間はラッシュ時を避けてほしい。
- 糖尿病を患っており、決まった時間にインスリン注射を打つ場所を用意してほしい。
職場の環境整備
職場の環境整備における合理的配慮では、以下の例が挙げられます。
- 眩しい明かりで症状が悪化するため、太陽光の当たらない場所で働きたい。
- 外的刺激で集中力が阻害されやすいため、外の音が聞こえないような場所で働きたい。
業務するうえでのサポート
業務サポートにおける合理的配慮では、以下の例が挙げられます。
- 車椅子を使っているので、業務や会議ではデスクの高さを調整してほしい。
- 肢体に関する障害を持っているので、補助具や握りやすい筆記用具などを提供してほしい。
コミュニケーションのサポート
コミュニケーションサポートにおける合理的配慮では、以下の例が挙げられます。
- 聴覚障害があり、コミュニケーションでは筆談や手話などで意思疎通してほしい。
- わかりやすい表現を使ったり、ホワイトボードを活用したりして説明してほしい。
その他、障害特性を踏まえたサポート
その他の合理的配慮の例では、以下の例が挙げられます。
- 情報処理が苦手なので、タスクを整理しやすいシンプルなツールを用意してほしい。
- 聴覚過敏であるため、机や椅子の脚に緩衝材をつけてほしい。
- 仕事中に耳栓(サングラス)を付けさせてほしい。
- スロープが無い場所の移動では、誰かに補助してほしい。
- 体力や疾患の状態により、業務量を調整できる働き方をしたい。
合理的配慮はどのように伝えればいい?

ここでは、障害者雇用で面接を受けたり履歴書を書いたりする際に、合理的配慮についてどのように伝えればいいのかを解説します。合理的配慮では、自分の伝えやすい言い方ではなく、相手にとって伝わりやすい言い方であることが大切です。コミュニケーションの要所をつかみ、納得感のある雇用につなげていきましょう。
まずは自分の障害特性についてわかりやすく伝えよう
合理的配慮を伝える際は、まず自分の障害特性についてわかりやすく伝える必要があります。障害の名称や特徴のみを伝えるだけでは、相手は「どのような働き方ができるのか」をイメージしにくいもの。障害のない人でも、自分の状態や環境が想像できる言葉を選びましょう。
たとえば「突然大きな音が鳴るとパニックに陥りやすい」と伝えれば、相手は「電話対応やインターホン対応は避けたほうがいいだろう」とイメージできます。障害が仕事の弊害になる条件が伝わるように、具体例を交えながら説明しましょう。
どのようなサポートが必要なのかを明確にしよう
合理的配慮について伝える際は、企業に対してどのようなサポートを求めているのかを明確にする必要があります。「相手が察してくれるだろう、実際に働きながら合わせてくれるだろう」と楽観視せず、面接時点から具体的なサポート内容について適切に伝えましょう。
例としては「車椅子を使用しているので、エレベーターやスロープがある場所のみの業務を希望します」や「視覚障害によって文章資料を視認しにくいため、テキストの場合は音声で説明していただきたいです」などが挙げられます。
伝える人とタイミングについて
合理的配慮を伝える際の流れは、おもに以下のとおりです。
1. 当人(もしくは代理店)が配慮を伝える
2. 当人と事業者で話し合う
3. 事業者が対応を検討する
4. 実施
合理的配慮は面接時の応募書類に記載しつつ、面接でも直接説明することが必要です。説明を受けた事業者は、自社のリソースを加味して配慮が可能かどうかを考えたうえで、実施の有無を決定します。
就労後も配慮は定期的に見直され、改善が図られます。会社に定着支援やジョブコーチなどが入っている場合は、担当者に相談しながら改善を検討してもらいましょう。
※定着支援:障害のある方が職場に長く安定して働けるよう、就職後も職場環境や業務への適応をサポートする取り組みです。支援機関が本人や企業と連携し、悩みの相談や業務調整などを通じて継続就労を支援します。
※ジョブコーチ:障害のある方が職場に定着できるよう、現場に同行して直接支援を行う専門職です。本人の理解や職場内の調整、周囲への助言などを通じて、働きやすい環境づくりを支えます。
合理的配慮について伝えて、無理なく働こう!

今回は、合理的配慮の定義や意味、合理的配慮を伝える際のポイントなどをご紹介しました。
障害者が長く働ける社会を実現するためには、障害者自身が自らの障害を理解している必要があります。客観的な障害への理解は、面接時の適切なコミュニケーションにもつながるでしょう。
企業へ合理的配慮について説明する際、どのように説明すべきか不安な場合は、主治医や周囲の方に相談するのもおすすめです。合理的配慮に関する正しい説明は、自身の長期的な働きやすさに直結するため、しっかりと考えることが大切です。

2017年にWebライターとして活動を開始し、数多くのメディアでライターとして活動。年間1,000本以上記事を制作する専門ライター。子ども教育やメンタルヘルス関連のメディアでの活動実績が多い。


