作成日:
2025年5月7日
更新日:
2025年9月4日

ASD(自閉スペクトラム症)の特徴とは?診断の指標も解説

[監修者]北川 庄治

デコボコベース株式会社 最高品質責任者(CQO)

東京大学大学院 教育学研究科
博士課程 単位取得満期退学

通信制高校教諭、障害児の学習支援教室での教材作成・個別指導 講師を経て、現在は療育プログラムの開発、保護者や支援者向けの研修を実施

▼この記事の3つのポイント

  • ASD(自閉スペクトラム症)は、生まれつきの脳の特性によって対人関係や感覚に違いが表れる発達障害のひとつです
  • ASDの特徴は人によって異なり、診断や支援の方法もさまざまです。自分の傾向を知ることが、暮らしやすさにつながります
  • 特性に合わせた環境づくりや支援制度の活用で、ASDがあっても自分らしい生活を送ることが可能です

ASD(自閉スペクトラム症)についてもっと理解したい

出典:photo AC

ASD(自閉スペクトラム症)は、コミュニケーションの困難や強いこだわりを持つなど、さまざまな特徴がみられる発達障害のひとつです。

1943年にアメリカの精神科医が論文を発表してから「自閉症」という言葉が認識されるようになりました。2013年にはアメリカの精神医学会が診断基準を発表し「自閉スペクトラム症」として表現されるようになりました。

ASDについて、詳しく確認してみましょう。

参考:日本自閉症協会「自閉スペクトラム症とは」

ASD(自閉スペクトラム症)とは?

出典:photo AC

ASD(自閉スペクトラム症)とは、おもにコミュニケーションに困難を感じたり、物事に強いこだわりを持ったりするなどの特徴を持つ発達障害を指します。

ASDの原因は明確にはわかっていませんが、生まれつき脳の働きの違いによって起こるものであるとされています。

人には活発・おとなしい・短気など、さまざまな性格があり、それも生まれ持った特徴です。ASDも同様に、生まれ持った特徴であるため、親子関係や家庭環境によって引き起こされるものではありません。

発達障害と聞くと、子どものときに診断されることが多いと思われるかもしれません。厚生労働省が公表した「成人期発達障害者の生活実態に関する調査」によると、ASDを含む発達障害と診断された時期は次のとおりです。

年齢割合
20~29歳36.6%
30~39歳16.9%
7~15歳13.4%

大人になってから診断される割合が高いのがわかります。生まれつきの特徴でありながら、大人になるまで本人や家族などは気づかなかったケースがあるのです。

他の発達障害との違い

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発達障害の代表的な症状には、ASD以外にも特徴に応じて次の2種類があります。なかには、ASDと併発しているケースもあるため、違いについて確認してみましょう。

ADHD(注意欠如・多動症)

ADHD(注意欠如・多動症)とは、身の周りのものに関心が移りやすく、動きが活発になったり、興味を引かれたものに集中し、注意力が不足するなどが特徴です。

違いASD(自閉スペクトラム症)ADHD(注意欠如・多動症)
集中力特定の分野において高い集中力を発揮する・集中力に欠ける
・気が散りやすい
コミュニケーション・相手の気持ちを読み取るのが苦手
・表情や身振りなどによるコミュニケーションが困難
・比較的図りやすい
・相手の話が終わるのを待てない、思いついたことを話し出す
などの特徴がある

ASDは特定の物事に集中する傾向があるのに対し、ADHDは関心が複数か所に移りやすいという違いがあります。

参考:厚生労働省「発達障害の特性(代表例)」

SLD(限局性学習症)

SLD(限局性学習症)とは、知的な遅れがないにも関わらず、読む・書く・数の理解などの困難がみられる発達障害です。特徴に応じて、3つに分類されます。

障害特徴
読字障害・読み間違いが多い
・文字や文章の理解が難しい
・音読中、行をとばして読むことがある
書字障害・文字のバランスをとるのが難しい
・書き写しに時間がかかる
・文章にまとめるのが難しい
算数障害・数の概念の習得が難しい
・計算や文章題を解くのが難しい

SLDは学習面のみに現れる特徴として診断されます。ASDは日常生活において困難を感じる場面がある一方、SLDは学習面に限定している違いがあります。

ASD(自閉スペクトラム症)の特徴

出典:photo AC

ASDには、日常生活で困難を感じるような特徴がさまざまあります。自分がどんな場面で困難や戸惑いを感じるのか、確認してみましょう。

社会性や対人関係に困難が生じる

ASDは相手の気持ちを理解したり、共感したりすることが苦手です。表情や視線などから気持ちを読み取ることが難しいため、周囲からは「空気が読めない」「冗談が通じない」と思われるかもしれません。

そのため、挨拶や情報共有、対人関係の構築などに困難を感じることが多いといえます。

コミュニケーション・言葉の発達に遅れが生じる

相手の気持ちが読み取れなかったり、たとえ話や冗談が理解できなかったりするため、コミュニケーションを図るのに困難を感じます。

また、言葉の発達には個人差が大きく、1歳半までに初めて言葉を発する子どもが多いといわれています。言葉の遅れはASDの特徴のひとつですが、それだけでASDと確定することは困難です。

参考:公益財団法人 母子衛生研究会「赤ちゃん子育てインフォ」

行動や興味に偏りがある

特定の物や場所などに強い興味を持ち、それが変化することを受け入れられなかったり、同じことを繰り返したりする特徴があります。

  • いつもと同じ道順で通学、通勤する
  • 急な予定変更でパニックになる
  • 物の定位置があるなど

感覚の特異性がある場合も

ASDは感覚に特異性がみられる場合があります。感覚の特異性とは、味・におい・触った感覚などが敏感になり、特定の感覚を苦手と感じることです。

感覚の特異性の具体例は次のとおりです。

  • 太陽や照明が異常にまぶしく感じる
  • 時計の秒針の音が気になり集中できない
  • 洋服のタグや縫い目の感触が気になる
  • ほかの人が気付かないほどのにおいに気づく
  • ねばねばしているものやサクサクしているものなど特定の食感が苦手

特異性の程度によっては、日常生活に支障が出ることもあります。苦手な感覚を克服するよりも、どうしたら軽減されるか対処法を考えてみましょう。例えば、時計の秒針が気になる場合は音の出ない時計を選んだり、耳栓などを使って音を遮断したりするなどです。

ASD(自閉スペクトラム症)の診断や治療について

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ASDの特徴を見て、自分と重なる部分があると「自分はASDなのではないか」と感じるかもしれません。ASDの診断基準や治療方法を紹介します。

診断基準

ASDの診断には、DSM-5という診断基準を使用します。DSM-5とは、精神疾患の診断基準や診断分類が明記されているものです。アメリカの精神医学会が出版し、国際的に使用されています。

ASDは「神経発達症群/神経発達障害群」というカテゴリーに分類され、次の診断基準が用いられています。

  • 社会的コミュニケーションおよび相互関係における持続的障害
  • 限定された反復する様式の行動、興味、活動
  • 症状は発達早期の段階で必ず出現するが、後になって明らかになるものもある
  • 症状は社会や職業その他の重要な機能に重大な障害を引き起こしている

参考:さっぽろ麻生メンタルクリニック「自閉症スペクトラム障害」

診断方法

ASDは上記で記載した、DSM-5に記載されている診断基準を用いるのに加え、次の項目も診察し、総合的に見て診断されます。

項目具体的な内容
医師の問診・今困っていることは何か?
・子どものころからこれまでの生活について
など
行動観察医師が当事者の様子を観察する
心理検査・発達水準や知能水準を見る検査を行う
・WISC-Ⅳや田中ビネー知能検査Vなど、年齢に応じて検査内容が異なる

ASDをはじめ、発達障害の特性の出方は人によってさまざまなため、特性はあっても明確に診断基準を満たさない可能性があります。

治療について

ASDは生まれつき脳の働きが異なるために起こる特徴であり「治療する」というより「特徴を理解し、社会生活がしやすくなるように対処する」ことが大切です。ASDで用いられる具体的な3つの対処法を紹介します。

対処法具体的な内容
心理療法・状況に応じて適切な対応ができるように練習する方法
・認知行動療法やソーシャルスキルトレーニング
が用いられる
環境調整・ASDの特徴が出やすい状況を回避できる環境を作る
・苦手な刺激を減らす
・見通しが立ちやすいようにする
・視覚的にわかりやすくする など
薬物療法・ASDに伴う睡眠障害やうつ病などを発症している際に適切な薬が使われる
・不安を和らげる薬や気持ちを落ち着かせる薬などが使われる

これらの対処法をすることで困難を感じる場面を減らし、ASDの特徴があっても社会生活が送りやすくなります。

大人のASD(自閉スペクトラム症)で抱えやすい課題

出典:photo AC

社会に出て仕事をするようになってから「自分はほかの人のように仕事がうまく進まない」など、困難を感じる人もいるかもしれません。ASDの特徴によって抱えやすい課題を紹介します。

社会的コミュニケーションに苦手意識を感じる

ASDは相手の気持ちを理解したり、表情や視線で伝えたいことを理解したりすることが難しいです。そのため、深刻な話をしているのに笑ったり、相手の話している内容が理解できなかったりすることで「空気が読めない」「話が通じない」と思われ、対人関係を築くことが難しいのが課題になるでしょう。

自分は普通に接しているつもりなのに、相手が怒ってしまうなど、他者とコミュニケーションが図りにくく、苦手意識を持ちやすいです。

自分のルールや方法にこだわってしまう

ASDは強いこだわりを持つことがあり、それを崩されるとパニックになったり不安になったりします。例えば、スケジュールにこだわりがあり、1日の予定を明確に決めてその通りに行動する特徴があるとします。10時に予定されていた会議が、急遽14時に変更されました。事前に決めていた予定通りにスケジュールが進まないことでパニックになってしまい困難を感じることがあります。

このように、自分なりのルールやこだわりを持つことが多く、その通りに実行できないと焦りや不安などを感じ、対処が難しく感じるのが課題といえるでしょう。

感覚過敏を持つ場合が多い

視覚・聴覚・味覚・触覚などの感覚が過敏に反応するのもASDの特徴です。例えば、多くの社員がひとつの部屋で働くオフィスでは、社員同士の会話や電話の呼び出し音、パソコンのキーを叩く音などさまざまな音が聞こえてきます。聴覚が過敏の場合は、そのような音に反応し、仕事に集中できなかったり、パニックになったりするかもしれません。

感覚過敏により、社会生活に困難を感じることもあります。

マルチタスクが苦手

マルチタスクとは、2つ以上の作業を同時に行ったり、短時間で作業を切り替えながら進めていく方法を指します。

ASDをはじめ、発達障害のある人は、目や耳から入ってきた情報を頭で整理して処理するという一連の流れに時間がかかるという特徴があります。

そのため、複数の仕事を同時に行ったり、短時間で切り替えたりすることは苦手になりやすく、困難をかんじるでしょう。

社会的なルールやマナーの理解に苦労する

ASDは言葉や文章で明確になっていないことは、理解するのが難しいという特徴があります。社会において当たり前とされているが、明確に文章になっていないようなルールやマナーは理解が難しいです。

例えば、上司や取引先など敬語を使う相手でもフレンドリーな言葉を使ってしまう、ときと場合に適した服装がわからないなどが挙げられます。

障害特性を活かして生活するコツは?

出典:photo AC

ASDの特徴は、社会生活を送るうえで困難を感じることがありますが、活かせる場面もあります。障害特性を活かすコツを紹介します。

自分の障害の傾向を理解する

まずは自分の特徴を理解することが大切です。どんな物事に強い関心があるのか、苦手な感覚はあるかなど、現れる特徴は人それぞれ異なります。

自分の特徴を理解することで、苦手な場面や感覚などは回避できるように対処したり、一緒に仕事をする同僚や職場に苦手なことを伝えて支援を求めたりすることもできます。

社会生活を送りやすくするためには、自分を理解するところから始めてみましょう。

コミュニケーションの訓練をする

社会生活において、他者とコミュニケーションを図る機会は多く、困難を感じる場面の多くはコミュニケーションによるものだと考えられます。

コミュニケーションの訓練を受けることで、相手の気持ちを理解する方法や会話を進めていく流れなどを身に着けることができます。訓練を受けると、他者とコミュニケーションが図りやすくなり、円滑に対人関係の構築ができるようになるでしょう。

自分にあった環境を整える

ASDはこだわりが強いという特徴があるため、自分のこだわりが活かせる環境を整えることが大切です。

例えば、規則や業務手順にこだわりがある場合は、組立作業や経理業務など、規則や手順が大切になる職業を選ぶと自分にあった環境で仕事に取り組めます。

また、感覚過敏で音に敏感の場合は、静かな環境で作業ができるように配慮してもらうなどの工夫も可能です。

障害者雇用枠を活用する

ASDの特徴により、どんな仕事も長続きしない、どんな職業に就いたらいいかわからないなど、就業に悩んだ場合は、障害者雇用枠を活用するのも選択肢のひとつです。

障害者雇用枠は、企業側が障害を考慮したうえで雇用する制度であり、自分にあった環境で就業できる可能性があります。

社会的な支援を活用する

ASDの特徴により、日常生活に困難を感じる場合は、社会的な支援を利用することも可能です。まずはどのようなことに困難を感じているのか、どのような支援があるのかなどを相談できる窓口を確認してみましょう。

  • 発達障害者支援センター
  • 障害者就業・生活支援センター
  • 相談支援事業所

また、障害者手帳の交付を申請し、受理されれば公共交通機関や公共料金、医療費などの助成が受けられます。就業が困難な方は就労移行支援を活用して、自分にあった職場を探すことも可能です。

ASD(自閉スペクトラム症)について深く知ってみよう!

出典:photo AC

ASDは対人関係の構築が難しかったり、感覚過敏があったりするなどの特徴があります。そのため、日常生活や社会生活に困難を感じる場面が多いといえるでしょう。どんな場面で困難を感じるのか、苦手なことは何かなど、自分の特徴を理解することで対処法がわかり、暮らしやすくなる可能性があります。

ASDを深く理解し、特徴に応じた対応を考えてみましょう。

[ライター]木村 美穂(看護師)
2008年に正看護師免許取得。一般内科、消化器外科、回復期などの病院・外来で実務。息子それぞれがASD・ADHD、次男はADHDと診断されたことをきっかけに、特性に合わせて生活できるように看護師を退職。現在は医療・福祉ジャンルを中心に執筆活動を行うWebライターです。

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