大人の自閉症|自閉スペクトラム症(ASD)の特徴や対処法、向き合い方とは

デコボコベース株式会社 最高品質責任者(CQO)
東京大学大学院 教育学研究科
博士課程 単位取得満期退学
通信制高校教諭、障害児の学習支援教室での教材作成・個別指導 講師を経て、現在は療育プログラムの開発、保護者や支援者向けの研修を実施
▼この記事の3つのポイント
- 大人の自閉スペクトラム症(ASD)は、本人も気づかないまま社会生活で困難を感じて気づくことがあります
- コミュニケーションの苦手さや感覚過敏など、ASDに多い特徴を知ることで、自分に合った対処法が見つかります
- 必要に応じて専門機関のサポートや周囲の配慮を得ることで、生きづらさを軽減し、自分らしく暮らす道がひらけます
大人の自閉症って?自分も当てはまるかも……
「周囲とコミュニケーションがうまく図れない」「人間関係が思うように構築できない」と悩みや不安を抱えていませんか。
自閉症は発達障害の一種であり、先天的な特性です。なかには、子どもの頃は周囲の大人が自閉症の症状を個性として認識していたため気づかれなかったものの、成長してから周囲との関わりに悩み、自閉症がわかるケースがあります。
ここでは、自閉症とは何か、どんな特性があるのか、大人の自閉症に役立つ対処法などを紹介します。「自分は自閉症かもしれない」と悩んでいる方は、特徴が当てはまっているかどうか確認してみましょう。
自閉スペクトラム症(ASD)とは?大人の自閉症の基礎知識
自閉スペクトラム症(ASD)とは、発達障害の一種です。特徴やアスペルガー症候群との関係などを紹介します。
自閉スペクトラム症(ASD)の概要は?
自閉スペクトラム症(ASD)とは、相手とコミュニケーションを図るのが困難であったり、特定の物事に強いこだわりを持ったりするなどの症状が見られる発達障害です。自閉スペクトラム症の原因は明確にはなっていませんが、脳神経のシナプス構造の違いが原因で起こるとされています。
自閉スペクトラム症の特徴の出方は個人差が大きいため、なかには大人になるまで気づかないケースも。相手の気持ちを理解することに困難を感じたり、突発的な物事に対応できなかったりするなど、日常生活において悩みを抱えている場合は、自閉スペクトラム症の可能性があるかもしれません。
出典:スマイルクリニック イムス東京「大人のASD(自閉スペクトラム症)の特徴」
アスペルガー症候群との関係
以前は、知的障害の有無や言葉の発達などによって診断名が分類されており、アスペルガー症候群は知的障害を伴わない自閉症として使われていました。
しかし現在は、特性の程度に個人差があり、明確に分類するのは困難であるとされています。知的障害や言葉の発達などでわけるのではなく「自閉スペクトラム症」に統一されました。
そのため、アスペルガー症候群という名称は現在使われておらず、自閉スペクトラム症と診断名が変更されています。
大人になってから気づくケースはある?
大人になってから職場の人間関係に悩んだり、仕事がうまく進められなかったりするなどの困難を感じ「自閉スペクトラム症なのでは?」と気づくケースがあります。
というのも、自閉スペクトラム症の特徴の強度には個人差があり、幼少期には個性として捉えられる可能性があるためです。大人になって社会生活を営むことで初めて「自分は周りと違う」「うまく溶け込めない」などの困難を感じ、自閉スペクトラム症に気づくことがあります。
診断する必要性やメリットは?
自閉スペクトラム症の特徴があるからといって、必ず医師の診断を受けなければならないわけではありません。しかし、日常生活に困難や生きづらさを感じたり、うつ病などの二次障害を引き起こしたりする場合は、検査を受け診断されることで安心するケースもあります。
「自分は自閉スペクトラム症だった。今までうまくいかなかったのは発達障害のせいだった」と納得できるようになり、自分の特性と向き合うことで社会生活が円滑になる可能性もあるでしょう。
自閉スペクトラム症(ASD)に多い特徴
大人のASDでは、具体的にどんな特徴がみられるのかを紹介します。
出典:新宿うるおいこころのクリニック「ASD(自閉スペクトラム症)」
コミュニケーションの難しさ
ASDは、相手の気持ちを読み取ったり、その場の空気を読んだりすることが苦手です。相手の言葉をそのまま受け止めるため、冗談やたとえ話が通じないことがあります。
また、明記されていない暗黙のルールなども理解するのが難しい傾向です。例えば、始業時間の5分前には出社する、私服通勤の会社だが華美な服装は控えるなど、具体的に明記されていない物事でも周囲がなんとなく示し合わせているルールに対応するのが難しいといえます。
感覚過敏やこだわり
感覚過敏とは、光や音、匂いなど五感が過剰に反応しやすいことを指します。例えば、人の話し声や作業音が気になって仕事に集中できない、日光や照明など明るすぎる場所では目がチカチカするなどです。ASDの方は、感覚過敏があるケースが見られます。
また、特定の物事に対して強い執着やこだわりを持っているのもASDの特徴です。作業手順が決まっていたり、特定の素材や形状の服ばかりを着たりすることなどが挙げられます。
社会生活で直面する課題
社会生活において、次のような困り事や課題に直面する可能性があります。
- 相手の気持ちを理解できず怒らせたり悲しませたりする
- 曖昧な指示に対応できず仕事が遅れる
- 人間関係の構築や集団生活にストレスを感じる
- 突発的な予定変更にパニックになる
人間関係や臨機応変さが求められる場面で強いストレスを感じる場合があり、ストレスによってうつ病や適応障害など精神的な疾患を発症するケースがあります。
大人の自閉症に役立つ対処法
大人になってASDと診断された、ASDと同様の特徴で悩んでいる方向けに、具体的な対処法を紹介します。日常生活における悩みやストレスを軽減し、自分らしく暮らせるように工夫してみましょう。
日常生活を整えるコツ
日常生活において、予定を忘れてしまったり物事の優先順位を考えるのが難しかったりするのがASDの特徴です。生活面でできる対処法を紹介します。
- アラームを使用して予定を忘れないようにする
- その日にやることを書き出して優先順位をつける
- ラベルや収納ボックスなどで色分けして視覚的にわかりやすく工夫したり、整理整頓したりする
自分がどんなことに困っているか、どんな対処法が自分に合っているかなどを考えながら対処していくのが効果的です。上に挙げた対処法を参考に、自分に適した対処法を探してみましょう。
カウンセリングや認知行動療法
ASDの対処法として心療内科や精神科の医師、カウンセラーなど、専門家のサポートを受けることも挙げられます。専門医を受診することで、次のメリットが得られます。
- 自分の状態を深く知ることができる
- 適切な治療を受けることができる
- 会社に合理的配慮を求めることができる
また、カウンセリングや認知行動療法などを受けることで、日常生活で気をつけるポイントや気持ちの切り替え方法などを知ることができ、暮らしやすくなる効果が得られるでしょう。
職場や学校でできる配慮
ASDと診断された方や、ASDと同様の特徴に悩んでいる方は、自分がどんなところに悩んでいたり、困難を感じていたりするのかを職場や学校に伝えて協力を得ることも大切です。
例えば、音に敏感で話し声や作業音が気になって仕事に集中できない場合は、静かな場所で作業できるように調整してもらったり、書類やメモをデジタル化して忘れないように工夫したりするなどが挙げられます。
周囲の協力を得るためには、自分のことを深く知り、どんなところにどんな協力が欲しいのかを明確にすることが重要です。具体的な協力内容を伝えることで、周囲もサポートしやすくなります。
ASDと向き合い、生きやすさを高めるために
ASDの特徴によって、生きづらさや困難を感じる場面があるでしょう。ASDと向き合い、生きやすさを高めるための考え方や自分なりにできることを紹介します。
1. 自己理解を深めることが大切
日常生活や仕事を今以上に円滑に進めるには、ASDの特徴や自分の傾向を知ることが大切です。自分にとって苦手なこと、得意なことが理解でき、苦手なことに対して適切に対処できます。
また、自分の特性を理解しておくことで、周囲に協力を求める際、具体的にどんな部分に協力が必要かを伝えられます。自分の特性を理解するためには、次のことを実践してみるのがおすすめです。
- ASDに関する正しい知識を身につける
- 普段から自分のことを客観的に見るように意識する
- 困っていることや悩みを書き出す
- 得意なこと、苦手なことを書き出す
2. ストレスマネジメントを取り入れる
ASDの方は、他者とのコミュニケーションに困難を感じたり、感覚過敏があったりするなど、日常生活においてストレスを感じやすい特性があるといえます。
無意識のうちにストレスをため込み、うつ病や適応障害など精神疾患を併発する可能性があるため、ストレスと上手に付き合うことが大切です。次の具体例を参考に、ストレスを抱え込まないように意識してみましょう。
- 休憩時間は好きな音楽を聞いたり、目を閉じてリラックスしたりするなど気分転換を図る
- 過集中を予防するために、アラームを活用して適宜休憩を取るように心がける
- 休日は適度に身体を動かしたり、趣味に没頭したりするなど楽しみを作る
自分にとって気分転換できる方法を探してみましょう。
3. 仲間やコミュニティを活用しよう
学校や職場で友達を作ろうとするとうまくいかなかったり、かえって人付き合いがストレスになったりするかもしれません。ASDの特性を持ち、同じ悩みを持つ方々と交流できる場所を訪れてみるのもおすすめです。
自分と同じような悩みを持つ方の話を聞くことで、自分では思いつかなかった対処法が見つかる可能性があります。お互いに苦手とする部分が共通していることもあるため、苦手部分を回避でき、居心地のよい場所となる可能性もあります。
4. 必要に応じて専門機関に相談する
「仕事がどうしても続かない」「どんな仕事が自分に向いているのかわからない」と悩んでいる方は、就労移行支援やハローワークなどの支援サービスを利用することも、生きやすさを手に入れるために有効です。
また、障害者手帳の交付や職場に合理的配慮を依頼したい場合は、医療機関を受診し、医師の診断を受けましょう。
大人の自閉症と上手に付き合うために
大人になってからASDと診断されるケースも少なくありません。「人付き合いが苦手」「仕事が思うように進まない」など悩みやストレスを感じている方は、ASDの特徴が自分に当てはまっているか確認してみましょう。
ASDと上手に付き合うためには、ASDのことを深く理解すること、自分の特性を理解することが大切です。具体的に苦手な作業や環境などを知っておくことで、周囲に協力を求めることができます。
周囲にサポートを依頼することで、いまよりも暮らしやすさ、生きやすさを感じられるかもしれません。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の治療法や診断を推奨するものではありません。症状にお悩みの方は、必ず医師などの専門機関にご相談ください。
看護師・保健師資格保有。大学卒業後、大学病院集中治療室で7年勤務し、新生児から老年期まで幅広い患者の急性期ケアを経験。保健師として活動し、看護大学非常勤講師も務める。その後、高齢者施設や看護小規模多機能施設に従事し、老年期医療に携わる。急性期から慢性期まで、幅広い年齢層の患者ケアに携わる。現在は臨床経験を活かし、認知症や介護に関する記事、クリニックのコラムなど医療情報の執筆活動も行っている。


