作成日:
2026年2月23日
更新日:
2026年2月26日

双極性障害と仕事の両立|無理なく続けるための働き方と職場選びのコツ

▼この記事の3つのポイント

  • 双極性障害の特性や、躁状態・うつ状態が仕事に与える影響を整理して理解できる
  • 症状の波があっても無理なく働き続けるための工夫や、働き方・職場選びの選択肢がわかる
  • オープン・クローズ就労や障害者雇用など、自分に合った働き方を考える視点を持てる

双極性障害を抱えながら働くのはつらい…

悩む男性
出典:photoAC

双極性障害を抱えながら働くことに、つらさや不安を感じている方も多いのではないでしょうか。調子の良いときと落ち込むときの波があり「昨日できたことが今日はできない」と、自分に戸惑ったり周囲に理解されず苦しい思いをしたりした経験がある方もいるかもしれません。

仕事を続けたい気持ちはあるのに、体調や将来への不安が重なり、立ち止まってしまうこともあるでしょう。この記事では、双極性障害の特性を踏まえながら、無理なく働き続けるための考え方や選択肢を一緒に整理していきます。

そもそも双極性障害ってどんな障害?

頭を抱える女性
出典:photoAC

双極性障害は、気分が高揚する「躁状態」と、気分が落ち込む「うつ状態」を繰り返す精神疾患です。気分に波があるのが特徴で、本人の意思や努力だけでコントロールするのは難しいといわれています。

躁状態のときに起こりやすいこと

躁状態のときは気分が高まるため活動的になりやすく、仕事でも一時的に集中力や行動力が増すようです。一方で、睡眠時間が短くても平気に感じたり、仕事量を抱え込みすぎたりする傾向も見られます。

自分では好調だと感じていても判断を誤り、ミスや対人トラブルにつながる場合も。無理し続けた結果、あとから強いうつ状態に移行してしまうケースも少なくありません。

うつ状態のときに起こりやすいこと

うつ状態のときは心身のエネルギーが低下し、仕事や日常生活に大きな影響が出る可能性があります。具体例をみてみましょう。

  • 朝起きるのがつらく、出勤そのものが負担に感じる
  • 集中力や判断力が落ち、作業に時間がかかる
  • 以前は問題なくできていた業務が重く感じられる
  • 自分を責める気持ちが強くなり、意欲が湧きにくくなる

無理に頑張ろうとすると症状が長引いてしまう場合もあるため、注意が必要です。

双極性障害を抱える方が仕事で感じやすい悩み

考える女性
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双極性障害を抱える方は、気分の波によって仕事の調子に差が出やすく「安定して働けないのでは」と不安を感じやすい傾向にあります。周囲に理解されにくいことも、悩みのひとつです。

調子の波で仕事の成果にムラが出てしまう

双極性障害があると、気分や体調の波によって仕事の成果にムラが出てしまうかもしれません。調子の良いときはスムーズに進められても、うつ状態では同じ業務に強い負担を感じることも。

その結果、周囲から評価が安定しなかったり、自分自身も「なぜできないのだろう」と責めてしまったりすることがあります。本人の努力不足ではなく、症状の特性によるものだと理解することが必要です。

「調子が良いときはできるのに」と誤解されやすい

双極性障害の特性は周囲から見えにくいため、誤解されやすいようです。とくに調子の良い時期を知っている人ほど、次のような受け止め方をすることがあります。

  • 「やればできるのに、怠けているのでは」と思われる
  • 体調の波を理解してもらえず、無理を求められる
  • 説明しても納得してもらえず、孤立感が強まる

このような誤解は、本人の自己否定感や職場でのストレスを高める原因になり得ます。

通院と仕事のバランスが取りづらい

双極性障害の治療では、定期的な通院や服薬管理が欠かせません。しかし、仕事の忙しさや勤務時間の都合によって通院の時間を確保しづらく、負担を感じる方もいます。

通院のために早退や休みを取りにくかったり、職場に説明すること自体がストレスになったりする場合もあるでしょう。治療を後回しにしてしまうと症状が不安定になり、結果的に仕事への影響が大きくなることもあります。

症状の波があっても働き続けるために、できる工夫は?

仕事
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症状の波がある中でも働き続けるためには、無理に安定を目指すのではなく、波があるのを前提に工夫する考え方が大切です。日々の体調変化に目を向け、早めに調整することを心がけましょう。

生活リズムを整えて、波のサインに早めに気づく

双極性障害と付き合いながら働くうえでは、まず生活リズムをできる範囲で整えることを意識します。睡眠時間や起床・就寝のタイミングが乱れると、躁状態やうつ状態の引き金になる可能性があるためです。

毎日の体調や気分を簡単に記録することで「寝不足が続くと調子が上がりすぎる」「疲れがたまるとうつに傾きやすい」など、自分なりのサインに気づきやすくなるでしょう。早めに異変を察知できれば、仕事量を調整したり休息を取ったりする判断につながります。

主治医と連携しながら治療を続ける

双極性障害と仕事を両立するためには、主治医と連携しながら治療を続けることが不可欠です。仕事の状況や負担のかかり方を共有することで、薬の調整や生活上のアドバイスを受けられます。

「仕事をしているから我慢しなければ」と無理せず、調子の変化や不安を率直に伝えることが大切です。治療と働き方を切り離さずに考えることで症状の悪化を防ぎ、長く仕事を続けることにつながります。

仕事量やペースを意識的に調整する

症状の波がある場合、仕事量やペースを意識的に調整することが、無理なく働き続けるために必要です。調子が良いときほど、次の点を意識しておきましょう。

  • 余力を残すつもりで業務量を決める
  • 短期間で成果を出しすぎないようにする
  • 疲労や睡眠不足を感じたら早めにペースを落とす

一時的な好調に合わせすぎず、安定を優先した働き方を選ぶことで、反動による不調を防ぎやすくなります。

症状が重い場合は休職するのもひとつの方法

スーツ姿の女性
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症状が強く出ている時期は無理に働き続けるよりも、休職という選択肢を取ることもひとつの方法です。

双極性障害は、治療と休養を大切にすることで状態の安定を目指しやすくなる病気とされているため、一時的に仕事から離れることが回復につながる場合もあります。

休職は「逃げ」ではなく、長く働き続けるための調整期間です。制度を利用しながら体調を立て直し、復職している方も少なくありません。

あわせて読みたい ▼ 休職制度の仕組みや利用の流れについて

転職や社内異動で環境を変えればストレスが軽減する場合も

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今の職場や業務内容が大きな負担になっている場合、転職や社内異動によって環境を変えることでストレスが軽減する可能性もあります。人間関係や業務量、求められるスピードが合っていないと、症状の波が強く出やすくなる恐れがあるからです。

部署異動で役割を調整したり、より自分のペースで働ける職場に移ったりすることで、体調が安定しやすくなるケースもあるでしょう。環境を変えることは、無理しないための前向きな選択肢のひとつです。

自分に合った職場選びのコツは?

ポイント
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双極性障害と付き合いながら働くには、仕事内容だけでなく「働きやすさ」を重視した職場選びが大切です。ここで詳しくみてみましょう。

柔軟な働き方ができる職場を探す

症状の波がある場合、柔軟な働き方ができる職場は心身の負担を抑えやすくなるものです。次のような条件があるかを確認してみてください。

  • フレックスタイムや時短勤務など、勤務時間を調整できる
  • 在宅勤務やリモートワークに対応している
  • 業務量や締切を相談しやすい体制がある
  • 体調不良時に休みを取りやすい雰囲気がある

このような条件がそろっている職場では、体調に合わせた働き方を選びやすくなるでしょう。調子を無理に整えようとせず、その日の状態に合わせて調整していくほうが、結果的に長く勤められます。

障害への配慮がある職場を選ぶ

双極性障害と仕事を両立させるためには、障害への配慮がある職場かどうかも大切な視点です。体調の波や通院の必要性について理解があり、相談しやすい環境では、不安を抱え込まずに働けます。

業務の進め方や役割分担について柔軟に調整してもらえるかどうかも確認しましょう。制度や実績だけでなく、実際の職場の雰囲気や対応姿勢を見ることが、ミスマッチを防ぐためには大事です。

障害を職場に伝えるべき?オープンとクローズで迷ったら

自己分析
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障害を職場に伝えるべきかどうかは、仕事を考えるうえで悩みやすいテーマです。双極性障害について職場に伝えて働く方法と、あえて伝えずに働く方法があります。それぞれ特徴があるため詳しくみてみましょう。

オープン就労を選ぶメリットとデメリット

オープン就労は、双極性障害があることを職場に伝えたうえで働く方法です。体調や症状について共有することで働きやすさにつながる一方、注意点もあります。

メリット・通院や体調に配慮した働き方を相談しやすい
・症状の波を前提に業務量や役割を調整しやすい
・体調不良時に無理せず、早めに対応しやすい
デメリット・障害への理解に個人差があり、誤解されることがある
・業務内容や昇進に制限がかかる場合がある
・伝えたことで不安やストレスを感じることがある

「体調の安定をいちばんにしたいのか」「仕事の幅やキャリアを重視したいのか」など、何を大切にしたいかは人それぞれです。自分が安心して働き続けるために譲れないポイントを整理することが、オープンかクローズかを選ぶ際には重要です。

クローズ就労を選ぶ場合に気をつけたいこと

クローズ就労は、双極性障害があることを職場に伝えずに働く方法です。自由度は高いのですが、次のような注意点があります。

  • 体調不良時に配慮を求めにくく、無理しやすい
  • 通院や休養の調整を一人で抱え込んでしまう
  • 症状が悪化した際、説明が難しくなることがある

周囲に頼れない状態が続くと負担が大きくなるものです。自分の症状の傾向や限界を把握したうえで、無理のない働き方を考えましょう。

障害者雇用を選択する方法もある

笑顔の女性
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双極性障害がある場合、障害者雇用という働き方を選択する方法もあります。障害者雇用では、あらかじめ障害があることを前提に採用されるため、通院への配慮や業務量の調整などを相談しやすい点が特徴です。

勤務時間を短く設定できたり役割を限定して働けたりするケースもあり、体調の波がある方にとって安心感につながることがあります。しかし、職種の選択肢が限られたり一般雇用と比べて給与水準が低くなったりする恐れがあり注意が必要です。

自分の体調や生活、将来の希望を踏まえ、無理なく続けられるかどうかを基準に考えてみてください。

波があっても、自分に合った働き方はきっと見つかる

スーツ姿の女性
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双極性障害があるからといって、働くことをあきらめる必要はありません。症状の波があることを前提に、環境や働き方を選ぶことで、無理なく続けられる道は見つかります。

これまでうまくいかなかった経験があっても、それはあなたに合わなかっただけかもしれません。自分のペースを大切にしながら、少しずつ選択肢を広げてみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の治療法や診断を推奨するものではありません。症状にお悩みの方は、必ず医師などの専門機関にご相談ください。

参考:国立精神・神経医療研究センター 精神疾患情報サイト「双極性障害(躁うつ病)」
   双極性障害(躁うつ病)|こころの情報サイト

[ライター]コニーリー 麻弥(看護師 / 保健師)

看護師・保健師資格保有。大学卒業後、大学病院集中治療室で7年勤務し、新生児から老年期まで幅広い患者の急性期ケアを経験。保健師として活動し、看護大学非常勤講師も務める。その後、高齢者施設や看護小規模多機能施設に従事し、老年期医療に携わる。急性期から慢性期まで、幅広い年齢層の患者ケアに携わる。現在は臨床経験を活かし、認知症や介護に関する記事、クリニックのコラムなど医療情報の執筆活動も行っている。

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