うつ病で退職を考える人へ|休職との違いや診断書、利用できる制度とは
▼この記事の3つのポイント
- うつ病で「退職したい」と感じることは、甘えではなく心身を守るための自然な反応です
- 退職と休職にはそれぞれメリット・デメリットがあり、状態や支援制度を踏まえて選ぶことが大切です
- 経済的支援や生活支援の制度を知り、無理に結論を出さず自信の回復を優先させることが大事です
うつ病と診断された…仕事は退職すべき…?

うつ病と診断され「このまま仕事を続けるべきか、それとも退職したほうがいいのか」と悩んでいませんか。気力や集中力が落ち判断すること自体がつらい中で、退職という選択が頭をよぎるのは自然なことです。
一方で、生活や将来への不安から簡単に決断できない方も多いでしょう。この記事では、うつ病で退職を考えたときに知っておきたい考え方や選択肢を落ち着いて整理していきます。
うつ病で「退職したい」と感じるのは甘えではない
うつ病で「退職したい」と感じるのは甘えだと、自分を責めてしまう方は少なくありません。しかし、うつ病は気持ちの問題ではなく治療や休養が必要な病気です。
うつ病の症状によって思考力や判断力、体力が低下すれば、仕事を続けることが難しくなるのは当然の反応といえます。退職を考えるのは逃げではなく、心身を守るためのサインです。
まずは自分の状態を否定せず、うつ病の症状として受け止めることが大切です。
退職と休職、どちらを選ぶべき?それぞれのメリット・デメリット

うつ病で仕事がつらくなったとき、退職と休職のどちらを選ぶかは悩みやすい問題です。退職と休職には、それぞれ治療面や生活面でのメリット・デメリットがあります。
焦って決めるのではなく、自分の状態や支援制度を踏まえて比較することが大切です。
休職を選んだ場合のメリット・デメリット
うつ病で休職するメリットは、雇用関係を維持したまま治療に専念できる点です。復職を前提とした制度のため、うつ病の症状が回復すれば元の職場に戻れる可能性があります。
また、条件を満たせば傷病手当金を受け取りながら生活を支えることもできます。一方で休職期間には限りがあり、うつ病の症状の回復が追いつかない場合は退職を迫られることもあるでしょう。
復職へのプレッシャーや職場との連絡が負担になるケースもあるため、うつ病の状態によっては精神的な負担が増す点がデメリットです。
退職を選んだ場合のメリット・デメリット
うつ病で退職を選ぶメリットは、仕事や職場から一度完全に離れ、治療と休養に集中できる点です。出社や業務連絡のプレッシャーがなくなり、心身の負担が軽くなる方もいます。また、環境を変えることで症状の改善につながるケースもあります。
一方で、退職すると収入が途絶える可能性があり、生活費への不安が生じやすくなるため注意が必要です。
再就職への焦りやキャリアへの影響を心配してしまう点も、退職のデメリットといえるでしょう。
判断に迷ったときの考え方
うつ病で退職か休職かの判断に迷ったときは「今の自分に何が一番必要か」という視点で考えることが大切です。将来のキャリアや周囲への影響よりも、まずは心身の安全を最優先にしてみましょう。
うつ病の状態では冷静な判断が難しくなるため、一人で結論を出そうとせず、主治医や信頼できる人の意見を参考にすることも重要です。すぐに退職か休職を決めなくても、段階的に考えていく選択肢もあります。
焦らずに回復を考える姿勢が、結果的に納得のいく判断につながります。
退職・休職時に利用できる経済的な支援制度

うつ病で退職や休職を考える際は、経済的な支援制度を知っておくことが安心につながります。状況に応じて利用できる制度が異なるため、事前に概要を把握しておくことが重要です。
傷病手当金
傷病手当金は、うつ病を含む病気やけがで働けなくなった場合に、健康保険から支給される制度です。会社を休職して給与が支払われない期間に、生活を支える目的で支給されます。
支給額はおおよそ給与の3分の2程度で、最長1年6か月受け取ることが可能です。退職前から条件を満たしていれば、退職後も継続して受給できる場合があります。
ただし医師の意見書や申請手続きが必要であるため、主治医や会社の担当者、健康保険組合に早めに確認しましょう。
失業保険
失業保険(雇用保険の基本手当)は、退職後に次の仕事を探す間の生活を支える制度です。うつ病で退職した場合でも、一定の条件を満たせば受給できる可能性があります。
自己都合退職が原則ですが、医師の診断書などで「正当な理由のある退職」と認められると、給付制限が短縮または免除されることもあります。受給にはハローワークでの手続きが必要であるため、体調や就労可能性に応じた支援を受けながら進めることが大切です。
障害年金
障害年金は、うつ病などの精神疾患によって日常生活や仕事に大きな支障が出ている場合に受給できる可能性がある公的年金制度です。退職後でも申請は可能で、長期的な生活の支えになることがあります。申請にあたっては、次のような点が確認されます。
- 初診日が年金制度に加入している期間であること
- 一定期間以上、症状が継続していること
- 日常生活や就労に制限があると判断されること
受給の可否や等級は一律ではなく、個別の状況に応じて判断されます。そのため主治医や年金事務所、専門窓口に相談しながら進めましょう。
自立支援医療制度
自立支援医療制度は、うつ病などの精神疾患で継続的な通院や治療が必要な方の、医療費の自己負担を軽減する制度です。通常3割負担となる医療費が原則1割負担に抑えられるため、治療を続けやすくなります。
対象は次の通りです。
- 精神科や心療内科での診察
- 薬代
- デイケア など
退職や休職の有無にかかわらず利用でき、経済的な不安を軽減しながら治療に専念する助けとなります。市区町村の窓口で申請できます。医師の意見書や診断書が必要となるため、早めに主治医へ相談しておくと安心です。
【退職・休職】今すぐできる3つのアクション

うつ病で退職や休職を考え始めたときは先のことを考えすぎず、今できる行動から整理することが大切です。状況を悪化させないためにも、無理のない範囲で次の3つのアクションを意識してみましょう。
1. まずは主治医に相談する
うつ病で退職や休職を考え始めたら、最初に主治医へ相談することが大切です。現在の症状や仕事による負担を正確に伝えることで、治療や休養の必要性を医学的な視点から判断してもらえます。
退職や休職が適切かどうか、診断書が必要かなど、主治医と話し合うことで整理できます。一人で結論を出そうとせず、専門家の意見をもとに次の行動を考えることが安心につながるでしょう。
2. 会社の就業規則を確認する
退職や休職を考える際は、会社の就業規則を確認しておくことも重要です。うつ病による休職制度や手続きの流れは会社ごとで異なります。事前に内容を把握しておくことで、不要な不安を減らすことができます。
就業規則では、次のような点を確認してみてください。
- 休職制度の有無や最長期間
- 休職中の給与や手当の扱い
- 診断書の提出が必要かどうか
制度を知って判断することで、退職か休職かをより冷静に検討できます。
3. 会社の上司や人事に相談する
退職や休職を検討する段階になったら、会社の上司や人事に相談することも一つの選択肢です。うつ病の状態や業務の負担について正直に伝えることで、制度の案内や配慮を受けられる場合があります。
すべてを詳しく話す必要はなく、診断書をもとに説明する方法もあります。直接伝えることが難しい場合は、メールや人事担当を通すなど無理のない方法を選びましょう。
診断書の役割と取得方法

うつ病で退職や休職を進める際、診断書は重要な役割を果たします。診断書の意味や取得方法を事前に知っておくことで、会社とのやり取りや手続きを落ち着いて進めやすくなります。
退職・休職における診断書の役割とは
退職や休職を検討する場面で、診断書は医師が現在の状態を医学的に示す重要な書類です。うつ病の症状によって就労が難しい状況であることを客観的に伝える役割があります。診断書があることで、本人の希望だけでなく、医療的な判断に基づく対応として会社に理解してもらいやすくなります。
主に、次のような場面で役立ちます。
- 休職の必要性や期間を会社に説明する
- 業務の軽減や配慮を求める根拠として示す
- 退職理由が病気であることを明確にする
診断書は強制力を持つものではありませんが、話し合いをスムーズに進めるための大切な資料です。
診断書の取得方法と費用
通院している心療内科や精神科で主治医に依頼することで、診断書は取得できます。うつ病の症状や仕事への影響について普段の診察時に伝えておくと、スムーズに相談できるでしょう。
診断書の内容は、休職が必要か、一定期間の就労が難しいかなど、目的に応じて記載されます。費用は医療機関によって異なりますが、一般的には3,000円〜5,000円程度が目安です。
健康保険は適用されないため自費負担となります。当日に発行が難しい場合もあるため、余裕をもって依頼しましょう。
退職・休職を会社に伝える際の具体的な進め方

退職や休職を会社に伝えるときは、順序立てて進めることが大切です。事前に準備しておくことで、精神的な負担を抑えながら話を進めやすくなります。
伝えるタイミングと方法
退職や休職を会社に伝えるタイミングは、体調や業務状況を踏まえて無理のない時期を選ぶことが大切です。うつ病の症状が強いときは、早めに伝えたほうが負担を減らせる場合もあります。直接話すのが難しい場合は、次のように工夫しても問題ありません。
- 体調が比較的落ち着いているタイミングを選ぶ
- 上司または人事のどちらに伝えるかを決める
- 対面が難しければ、電話やメールを利用する
診断書がある場合は、あわせて提出することで話が進みやすくなります。
引き継ぎや手続きの進め方
退職や休職が決まった後の引き継ぎや手続きは、無理のない範囲で進めることが大事です。うつ病の状態によっては、通常どおりの引き継ぎが難しい場合もあるかもしれません。そのようなときは自分だけで抱え込まず、上司や人事に状況を伝えて相談しましょう。
業務内容を簡単にまとめたメモを作成する、最低限の情報だけ共有するなど負担を減らす方法があります。会社側が主導して手続きを進めてくれるケースもあるでしょう。体調を優先しながら進めることが、結果的に円滑な対応につながります。
退職後の生活を支える選択肢について

うつ病で退職したあと「これからどう生活していけばいいのだろう」と不安を感じる方や、「もう戻れないのでは」「選択を間違えたのでは」と自分を責めてしまう方もいるかもしれません。
仕事を離れた今だからこそ、自分のペースで生活を立て直すための選択肢があります。選択肢の具体例を解説するので詳しくみてみましょう。
グループホーム
グループホームは、うつ病をはじめとする精神疾患がある方が、支援を受けながら地域で生活するための住まいです。日常生活のサポートを受けつつ、自分のペースで暮らせる点が特徴です。
家事や金銭管理、生活リズムの整え方などを支援してもらえるため、退職後に一人で生活することに不安がある場合の選択肢になります。医療機関や福祉サービスと連携している施設も多く、治療と生活の両立を図りやすい環境です。
すぐに就労を目指さなくてもよく、安心できる居場所を確保することが回復への第一歩になることもあります。
就労移行支援・リワークプログラム
就労移行支援やリワークプログラムは、うつ病などの精神疾患を経験した方が、無理のない形で社会復帰を目指すための支援です。退職後すぐに働くことが不安な場合でも、段階的に生活リズムや働く力を整えることができます。具体的なサポート内容をみてみましょう。
- 生活リズムの安定や体調管理のサポート
- 軽作業やプログラムを通じた就労準備
- 復職や再就職に向けた相談や支援
就労を急がず、回復のペースを大切にできる点が特徴です。「働けるかどうか」ではなく「整える時期」として利用する人も少なくありません。医療機関と連携している事業所も多く、安心して利用を検討できます。
障害者雇用枠での就職
障害者雇用枠での就職は、うつ病の方が必要な配慮を受けながら働くための選択肢です。勤務時間や業務内容について事前に相談しやすく、体調に合わせた働き方を検討できます。
退職後の再就職に不安がある場合でも、自分の状態を理解してもらったうえで働ける環境を選びやすい点が特徴です。障害者手帳の取得が必要となるケースが多いため、主治医や自治体に相談しながら進めることがポイントです。
今は急がず、焦らず、無理のない範囲で行動しよう

うつ病で退職や休職を考えるとき、先のことを一気に決めようとする必要はありません。今は「早く答えを出すこと」よりも「心身を守ること」を優先して大丈夫です。回復のペースは人それぞれで、立ち止まることも大切な過程の一つです。
利用できる制度や支援を知り、頼れる人に相談しながら、無理のない範囲で一歩ずつ進んでいきましょう。あなたの選択は、これからの生活を立て直すための大切な行動です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の治療法や診断を推奨するものではありません。症状にお悩みの方は、必ず医師などの専門機関にご相談ください。
参考:厚生労働省「こころの健康相談統一ダイヤル/メンタルヘルスQ&A うつ病とは?」
第10回 メンタルヘルス不調で休職中の社員が退職する場合雇用保険はもらえるの?
看護師・保健師資格保有。大学卒業後、大学病院集中治療室で7年勤務し、新生児から老年期まで幅広い患者の急性期ケアを経験。保健師として活動し、看護大学非常勤講師も務める。その後、高齢者施設や看護小規模多機能施設に従事し、老年期医療に携わる。急性期から慢性期まで、幅広い年齢層の患者ケアに携わる。現在は臨床経験を活かし、認知症や介護に関する記事、クリニックのコラムなど医療情報の執筆活動も行っている。


