作成日:
2025年11月21日
更新日:
2025年11月26日

うつ病の再就職は難しい?失敗を防ぐ転職活動の始め方と支援制度

▼この記事の3つのポイント

  • 「うつ病の再就職は難しい」と感じる理由を整理し、焦らず準備することが大切です
  • 自分に合った働き方や企業の選び方、再発を防ぐ環境づくりのポイントがわかります
  • 一人で悩まず、支援制度や専門サービスを活用しながら、自分のペースで再就職を進められます

うつ病から再就職を目指しているけれど、難しいのかな…?

頭を抱える女性
出典:photoAC

「もう一度働きたいけれど、自信がない」
「うつ病のことを職場に話したら、不利になるのでは?」
そんな不安を抱えていませんか?

うつ病を経験すると、体調への心配や長いブランクから「再就職は難しいかも」と感じてしまうことがあります。しかし、正しい準備とサポートを受けながら進めていけば、無理のない社会復帰は十分に可能です。

この記事では、うつ病を経験した方が再就職に向けて、安心して一歩を踏み出すためのポイントや支援制度を紹介します。

なぜ、うつ病の再就職は「難しい」と感じてしまうの?

悩む女性
出典:photoAC

うつ病を経験した方の中には「再就職できるのかな」と不安を抱く方が少なくありません。それは決して弱さではなく自然な気持ちです。ここでは「難しい」と感じる心の背景を整理しながら、まずは自分の気持ちに寄り添っていきましょう。

再発への不安が大きい

うつ病は、自分では良くなったと思っても、新しい環境や生活リズムの変化が再発のきっかけになることがあります。

うつ病の回復までにかかる時間は、個人差が大きいといわれています。ふとしたことがきっかけで再発・悪化してしまうため、再発を不安に思うのは当然です。

職場の人間関係や勤務時間、仕事のプレッシャーなど、何が心の負担になるかは人それぞれです。頑張りたい気持ちがあるからこそ「怖い」と身構えてしまうのでしょう。

参考:うつ病|厚生労働省
   うつ病の治療と予後|こころの耳

ブランク(離職期間)があることへの焦り

休職や退職によって、社会から切り離された気持ちになることがあります。時間がたてばたつほど「もう再就職は難しいのでは」と焦りを感じてしまうことも……。履歴書に空白ができると「企業にどう思われるだろう」「不利になるのでは?」と不安になるのも自然な感情です。

焦る気持ちのあまり「これまでのキャリアが無駄になってしまう」「以前のように働けないのでは」という感情が生まれます。しかし、ブランクは決してマイナスではありません。

体調を整える期間は次の仕事への準備期間と考え、まずは自分の体調と向き合うことが大切です。

周囲から理解を得られる環境かが心配

うつ病の経験を職場や同僚に話すかどうか迷う方は多いでしょう。「話したら偏見を持たれるのでは」「再発したらがっかりされるのでは」と考えると隠しておきたくなるものです。

病歴をオープンにすれば障害者雇用や合理的配慮などの制度を利用でき、必要な配慮が受けられる場合があります。一方で距離をおかれたり気を遣われすぎたりと、周囲の反応に戸惑うこともあるでしょう。

こういった葛藤を抱くのはあなただけではありません。自分にとって安心できる働き方をゆっくりと見つけていきましょう。

働けない期間があったことで自信を失っている

働けない期間は収入が得られず、社会的な役割を失いがちです。そのため「自分は社会で通用しないのでは」「必要とされていない」とネガティブに考えてしまうことがあります。

しかし、それは働けないという後ろめたさからくる一時的な感情であり、決してそんなことはありません。

自信を失うことがあっても、少しずつ社会に復帰していくことで社会的役割は得られます。今は療養に専念する時期ととらえ、自分を責めすぎないようにしましょう。

焦りは禁物!復職活動を始める前にやるべき「3つの準備」

ステップ
出典:photoAC

復職活動を始めるには、まずは心と体が整っていることが前提です。焦らず、じっくりと「準備の時間」をつくることで、安心して次の一歩へ踏み出せます。復職活動前にやるべき3つの準備を解説します。

まずは生活リズムを整え、体力を回復させる

休職や療養の期間が長くなると外出の機会が減り、体力が落ちてしまうことがあります。
再就職を目指すうえでは、まず“通勤できる体力”を少しずつ取り戻していくことが大切です。

朝決まった時間に起きて朝日を浴びる、軽いストレッチや散歩をする、食事の時間を整える、夜はしっかり休む。そんな日常の積み重ねが心身のリズムを整えます。

服薬している場合は、日中どれくらい動けるか、眠気の出やすい時間帯はいつかなど、自分の体調の波を知ることも大切です。

主治医に相談し「働ける状態か」を客観的に判断してもらう

「そろそろ働けるかも」と感じたときこそ、自己判断ではなく主治医に相談しましょう。症状の安定具合、通院や服薬の状況、ストレスへの耐性などを医学的な観点から見てもらうことが大切です。

自分では「もう大丈夫」と思っていても、家族はまだ早いと感じていることもあります。そんなとき、主治医の客観的な意見は、再就職のタイミングを見極める貴重な判断材料となるでしょう。

また、医師から社会復帰に向けた支援を紹介してもらえることもあります。一人で考えすぎず、さまざまなサポートを受けながら進めていくと安心です。

「リワークプログラム」などで働くためのリハビリをする

リワークプログラムとは、うつ病などで休職した人が“再び働くための力”を取り戻す支援プログラムです。

病院、地域障害者職業センター、就労移行支援事業所などで実施されており、生活リズムの立て直しや働くための集中力・対人スキルを少しずつ回復していきます。

いきなりフルタイム勤務に戻るのは、心にも体にも負担が大きいものです。リワークや就労支援の場で「働くリハビリ期間」を持つことで、今の自分のペースを知り、再就職に向けて大切にすべきポイントが見えてくるでしょう。

参考:リワークプログラムとは|日本うつ病リワーク協会

うつ病から社会復帰した2人の事例

社会人
出典:photoAC

ここでは、うつ病から社会復帰を果たした方の体験を紹介します。

事例A:課長昇進後にうつ病となったAさん

課長昇進後、プレッシャーと疲労からうつ病を発症したAさん。6か月に及ぶ自宅療養で体力と気力を少しずつ取り戻し、医師や産業医の支援を受けながら復職を目指しました。

復職直後は時短勤務から始め、少しずつ仕事のペースを取り戻していく形に。上司の理解もあり、約1年後には再び課長職に復帰できました。

今では、無理せず周囲に頼ることの大切さを実感しているそうです。

参考:課長昇進後にうつ病となった技術者の6か月間自宅療養の経過の事例|こころの耳

事例B:自責感の強さからうつ病となったBさん

管理職として多忙な日々を送っていたBさんは、心身の限界からうつ病を発症し、休業することになりました。

責任感の強いBさんは「職場に迷惑をかけた」と自分を責めていましたが、治療とカウンセリングを続ける中で、自分のこれまでを振り返る時間を持ちました。

「何のために働くのか」を見つめ直すうちに、気持ちが少しずつ安定。6か月後には職場復帰を果たし、以前より穏やかな気持ちで仕事に向き合えるようになったそうです。

参考:休業中に自分の生き方や仕事への姿勢を考えることで症状が安定し職場復帰に至った事例|こころの耳

再発を防ぐ企業選び。注目するポイントは?

スーツ姿の女性
出典:photoAC

求人情報から得られる情報だけでは、その職場が自分に合う環境かどうかの判断は難しいものです。入社後のギャップを減らすためにも、企業選びの段階でチェックしておきたいポイントを見ていきましょう。

自分の性質や特性にマッチした環境か

自分の性質や特性を理解したうえで、新しい職場が自分にとって働きやすい・理解を得られやすい環境であるかを考えましょう。

集中しやすい静かな環境やコミュニケーションが多すぎない職場、業務量が安定している仕事など、負担を感じにくい職場は人それぞれです。在宅勤務や時短勤務など、自分の体調に合わせた働き方を選ぶのも一つの方法です。

求人を見るときは、労働時間や残業の有無だけでなく、実際に働いている方同士の関わり方や雰囲気を見るとよいでしょう。可能であれば職場見学に参加し、普段の様子をチェックしておくと安心です。

制度の有無だけでなく利用実績を見る

メンタルヘルスのサポート制度がある企業でも、実際にサポートを受けている方がいるかどうかはわかりません。そのため企業を選ぶときは、制度の“有無”よりも“利用実績”を確認してみましょう。

カジュアル面談や職場見学の機会があれば「実際に利用している人はいますか?」「どんなサポートがありますか?」とさりげなく聞いてみるのもおすすめです。

入職時には制度を利用する予定がなくても事前に確認しておくことで、心に余裕が生まれます。万が一に備えて、企業側の取り組みや実績を確認しておくのは大切なポイントです。

障害者雇用の「定着率」も要チェック

うつ病のある方の再就職では「長く働き続けられるか」が重要なポイントです。その目安となるのが、入社後にどれだけの人が職場にとどまって働いているかを示した障害者雇用枠の定着率です。

定着率が高い企業は、日頃から職場の理解やフォロー体制が整っていることが多く、安心して働ける傾向があります。また、療養後に職場復帰しているケースが多い企業も、サポート体制が整っていると考えられます。

入社後も面談や支援担当者によるフォローアップがある職場は、不調を相談しやすく、病状が悪化する前に対策を講じやすいでしょう。再発を防ぎながら長く働くには、支えとなる存在や制度があると安心です。

「難しい」を乗り越える。再就職の進め方を5ステップで解説

ステップ
出典:photoAC

うつ病からの再就職は、体調を整えながら一歩ずつ準備を進めていくことが大切です。焦らず進めることで、無理のない社会復帰が実現できます。ここでは、再就職までの流れを5つのステップで紹介します。

参考:心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き|厚生労働省

STEP1. 自分の「得意」と「苦手」を知る

まずは、今の自分の状態を見つめ直すことから始めましょう。うつ病の経験を通して気づいた「自分の体調の波」や「ストレスを感じやすい状況」を整理することが大切です。

仕事ができる時間帯や集中力が続く時間、得意な作業、人との関わり方など、今の自分が無理なくできることを具体的に書き出してみましょう。

また、過去の仕事で何が負担になっていたのか、どんな環境なら安心して働けるのかを振り返ることも大切です。

自己分析を通して「強み」と「配慮が必要な点」を理解することが、再就職成功への第一歩となります。

STEP2. オープン就労とクローズ就労について知る

うつ病の再就職では「病歴を伝えて働くか(オープン就労)」または「伝えずに一般枠で働くか(クローズ就労)」を選ぶことができます。

オープン就労では、職場の理解や配慮を得やすいのですが、仕事内容の幅が限られる場合もあります。一方で、クローズ就労は希望の収入を得やすいのですが、体調に合わせた配慮を受けることが難しいケースも……。

どちらかの働き方が良い・悪いということではありません。メリットや注意点を考え「どんな働き方が自分に合うか」「配慮を受けながら働きたいか」など、自分の希望や体調に合わせて選ぶようにしましょう。

STEP3. 働き方の形式や雇用形態を知る・選ぶ

企業の雇用形態は正社員だけではありません。契約社員・パート・アルバイト・在宅勤務など、さまざまな働き方があります。

うつ病の回復期には、まずは身体的・精神的な負担が少ない働き方から始めるのがおすすめです。体調に波がある時期は無理せず、できる範囲の時間や働き方で社会とのつながりを持つ方が安心です。

自分のペースで働くには、これまでと違う働き方を視野に入れるとよいでしょう。働き方の形式や雇用形態を知ることで選択肢が広がり、より柔軟な働き方がしやすくなります。

障害者の転職を取り扱う凸凹エージェントでは障害者雇用枠のほか、パートやアルバイトの求人なども数多く扱っています。

STEP4. 応募書類を作成する

求人へ応募する際には、応募書類の作成が欠かせません。しかし、療養の時間が長くブランク期間があると、空白の期間に不安を覚える方もいるでしょう。

その時間を「回復のために必要な期間」「自分を見つめ直す時間」と前向きにとらえ、うつ病の経験を通して得た気づきや、今後どのように働きたいかを丁寧に表現しましょう。

「体調管理を意識して生活している」「主治医と連携しながら就職を目指している」といった具体的な言葉は、前向きな印象を与えます。

また、支援機関やエージェントを利用している場合は、その取り組みを記載することで再就職に向けて真剣に準備している姿勢を伝えられます。

STEP5. 面接対策をして安心して当日を迎える

面接では、うつ病や離職期間について聞かれることがあります。その際は「以前はこういう状況でしたが、今はここまで回復しています」と、正直かつ前向きに伝えることがポイントです。

また、働くうえで受けたい配慮があれば遠慮せずに伝えましょう。たとえば「通院のために月1回午前休が必要」など、具体的に伝えることで、企業側も対応しやすくなります。

さらに、入社後のフォロー体制や相談窓口について確認しておくと安心です。不安な点を共有しておくことで、お互いの理解が深まり、働くイメージもより明確になります。

一人じゃない。うつ病からの再就職を支えるサービス・制度

仕事中の男性
出典:photoAC

支援制度や専門のサービスを活用することで、焦らず、自分に合った形で社会復帰を目指すことができます。ここではうつ病の方が利用できるサポートや制度を紹介します。

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所は、うつ病などの精神疾患や障害のある方が「一般企業への就職」を目指すための支援施設です。利用期間は原則2年で、ビジネスマナーや職業訓練、体調管理の練習などを通して、働くための力を少しずつ身につけていきます。

多くの事業所では、うつ病を経験した方の再就職実績が豊富で、就職後も定着支援を受けられます。

利用にあたっては、自治体の障害福祉課やハローワークで申請し、自分に合った事業所を選択することが大切です。

ハローワーク(専門援助部門)

ハローワークには、うつ病や精神障害のある方専門の窓口(専門援助部門)が設けられています。ここでは、専任の職員が相談に応じ、求人の紹介や職業訓練、就労準備をサポートしています。

うつ病を経験した方が利用できる求人が多く、障害者雇用枠での応募や通院・体調に配慮した働き方の相談も可能です。

また、失業保険や再就職手当などの制度と併用することで、経済的な不安を軽減しながら転職活動を進められます。

就労に関する悩みは、まず最寄りのハローワークに相談してみましょう。

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、働くことに不安のある方を支援する公的機関です。職業リハビリテーションや心理・職業相談、リワークプログラムなどを通して、再就職に向けた準備を支援しています。

うつ病をはじめとした精神障害のある方も多く利用しており、職場復帰の練習や就職後のフォローアップが受けられます。就職前後の不安を専門スタッフと共有できるので、具体的なアドバイスが受けられます。

利用する際は、ハローワークや主治医の紹介を受けるとスムーズです。

障害者雇用に特化した転職エージェント

うつ病や精神疾患の経験がある方に向けた、障害者雇用専門の転職エージェントもあります。
こうしたエージェントは、体調や特性を踏まえた求人の紹介や企業との調整・面接をフォローしてくれるのが特徴です。

「再就職は難しいかも」と感じている方もエージェントからの紹介で選択肢が広がり、自分に合う職場を見つけやすくなります。

企業側の配慮の内容や定着支援といったサポート体制についても、障害者雇用に特化しているからこそ事前にチェックすることができます。

無理なく、再就職を目指すための一歩を

オフィスの女性
出典:photoAC

うつ病から回復し「もう一度働きたい」と思う気持ちは、すでに前向きな一歩です。再就職には準備が必要ですが、焦らず進めていけば自分に合った働き方を見つけることができます。

まずは、体調と生活リズムを整えること。そして、体調が安定したら、リワークプログラムや就労移行支援、転職エージェントなどの支援を上手に活用することが大切です。

再就職は一人で進めるものではありません。支えてくれる人や制度を頼ることも大切です。自分のペースで一歩ずつ確実に進めていきましょう。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の治療法や診断を推奨するものではありません。症状にお悩みの方は、必ず医師などの専門機関にご相談ください。

[ライター]牧野 夏乃(看護師)

看護師として総合病院で10年間勤務。循環器科・救急科にて急性期看護を学びました。結婚を機にクリニックへ転職。現在はWebライターとしても活動しています。子どもの発達に不安を抱き、児童発達支援士を取得。障害のある方の不安に寄り添った記事を執筆します。

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