発達障害の診断は何をする?予約から初診、心理検査、診断確定までの流れ
▼この記事の3つのポイント
- 発達障害の診断は、主に精神科や、発達障害の検査に対応している心療内科で相談できます
- 診断は、問診や心理検査を経て行われ、結果がわかるまで1〜3か月程度かかるのが一般的です
- 診断はゴールではなく、ご自身の特性(取扱説明書)を理解し、今後のサポートや工夫につなげるための「スタート」です
発達障害かもしれないけど、病院に行くのは怖い……

「発達障害かもしれない」と感じても、病院に行くのは勇気がいるものです。どんなことを聞かれるのか、どんな検査を受けるのかわからないと、不安になるでしょう。
この記事では、発達障害の診断の流れをやさしく解説します。受診の前に知っておくと安心できるポイントをまとめました。発達障害かもしれないと不安を感じている方が、安心して一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。
どこで診断を受けられる?精神科・心療内科の違い

発達障害の診断は、主に「精神科」と「心療内科」で受けることができます。
どちらも、心や行動の困りごとを相談できる場所ですが、得意とする分野やサポートの体制に少し違いがあります。 ご自身に合った診療科を選ぶために、それぞれの特徴を知っておきましょう。
精神科
精神科は発達障害をはじめ、うつ病や不安症など幅広い精神の不調を専門的に診る診療科です。主に次のような不調を扱います。
- うつ病/双極症
- 不安症(パニック症、社交不安など)
- 強迫症
- PTSD/トラウマ関連障害
- 統合失調症
- 適応障害
- 睡眠障害
- 摂食障害
- 依存症(アルコール・薬物・ギャンブル等)など
大人の発達障害の診断は、主に精神科で行われることが多いようです。
というのも、大人の発達障害は、もともとあった特性が、社会に出て環境が変わったことで目立つようになり、仕事や人間関係の「うまくいかなさ」として強く感じられるケースが多いためです。
その結果、うつ病や適応障害、不安症といった二次的なこころの不調(二次障害)として精神科を受診し、その背景に発達障害の特性が見つかることも少なくありません。
そのため精神科では、医師が検査結果やご自身のお話を伺いながら発達特性を確認し、必要に応じて薬の調整やカウンセリング、仕事や生活のサポートにつなげていきます。
目の前の困りごとに合わせて、医療と支援の両面から(二次障害の治療と特性への対策を同時に)サポートを受けられるのが特徴です。
心療内科
心療内科は、主にストレスや心理的な負担が原因で、体に不調(胃痛、頭痛、動悸など)が表れたときに相談できる場所です。主に次のような症状を扱います。
- 胃痛や腹痛
- 頭痛
- 動悸や息苦しさ
- めまい
- 食欲不振
- 不眠
- 慢性的な疲労感 など
心療内科のなかには、発達障害の診断を行っている医療機関もありますが、すべての病院で対応しているわけではありません。
受診する前には、ホームページなどで「発達障害の診断・検査に対応」と書かれているかを必ず確認すると安心です。
失敗しない病院の選び方!3つのチェックリスト

発達障害の診断を受けるときは、病院選びも大切です。
「ここなら安心して相談できそう」と感じられる場所を見つけるために、専門性や検査体制、通いやすさを確認しておきましょう。 ここでは、安心できる病院を見つけるための3つのチェックポイントを紹介します。
大人の発達障害の診断実績が豊富か?
発達障害の診断を受ける際は、その病院に「大人の発達障害の診断実績」がどのくらいあるかを確認することが大切です。
発達障害は年齢によって特性の現れ方が異なり、大人の場合は仕事や人間関係での「うまくいかなさ」として感じられることが多いためです。
経験豊富な医師や臨床心理士がいる医療機関では、これまでの事例も踏まえながら、丁寧に話を聞いたり、検査を進めてくれたりすることが期待できます。
ホームページに「発達障害外来」や「成人の発達障害に対応」と明記されている病院を選ぶと、一つの目安になるでしょう。
さまざまな検査(心理検査など)を実施しているか?
発達障害の診断を受ける際は、心理検査など「さまざまな検査」が可能かを確認しましょう。
発達障害の特性は人によって本当にさまざまなので、複数の検査を組み合わせて、その人全体を理解しようとします。主な検査は次の通りです。
- WAIS-IV(成人知能検査)
- WISC-IV/V(児童知能検査)
- AQ(自閉スペクトラム指数)
- CAARS(コンナーズ成人ADHD評価スケール)
- 性格検査(MMPI、P-Fスタディなど) など
このような検査を組み合わせることで、ご自身の特性をより丁寧に理解していきます。
予約の取りやすさ・通いやすい場所にあるか?
発達障害の診断は、一度の受診で終わらず、何回か通院が必要になることがほとんどです。 そのため、予約が取りやすく、ご自身が通いやすい場所にある医療機関を選ぶことも、意外と大切なポイントです。
人気のある発達障害専門外来では、初診(最初の診察)まで数か月待つケースも珍しくありません。
仕事や生活の予定に合わせて無理なく通える距離か、予約の変更はしやすいかなどを事前に確認しておくと、通院の負担を減らせます。無理のないペースで通える環境を整えることを考えてみましょう。
診断を受ける前に知っておきたいこと

発達障害の診断を受ける前に、かかる期間や費用、検査内容を大まかに知っておくと、心の準備ができて安心です。
事前に流れをイメージしておくことで、当日は落ち着いて受診でき、ご自身に合ったサポートを受けやすくなるでしょう。
所要期間
発達障害の診断には、何回か通院が必要な場合がほとんどです。初診から診断がわかるまでの期間は、一般的に1〜3か月程度が目安です。
心理検査の予約が混み合っている場合は、さらに時間がかかることもあります。 結果を焦らず、ご自身のペースで進めることが大切です。
費用の目安
発達障害の診断にかかる費用は、健康保険適用でおおよそ5,000円〜15,000円程度です。(※心理検査を複数受ける場合は、1〜2万円を超えることもあります)
ただし、自由診療(保険が使えない)のクリニックでは、検査内容によってさらに高額になる場合もあります。
病院によって異なるため、心配な方は事前にホームページなどで費用を確認しておくと良いでしょう。
セカンドオピニオンという選択肢
もし、一度で納得できる結果が得られなかったり、医師や検査の進め方に不安を感じたりしたときは、ほかの医療機関で「セカンドオピニオン(第二の意見)」を聞くことも考えてみてください。
一か所だけでなく、複数の専門家の意見を聞くことで、ご自身がしっくりくる理解や、自分に合った支援方法を見つけやすくなります。
セカンドオピニオンは、決して悪いことではなく、自分に合った関わり方を見つける大切なきっかけになります。
発達障害診断を受けるまでの流れを解説

発達障害の診断は、いくつかのステップを経て進められます。ここでは、予約から初診、心理検査、そして診断結果を聞くまでの大まかな流れを紹介します。
問診/面接
発達障害の診断では、最初に問診(お医者さんや専門家からの質問)や面接(お話)があります。
医師や臨床心理士が、あなたが今、生活の中でどんなことに困っているか、どんな様子かを丁寧に聞き取り、特性を一緒に整理していきます。
質問される内容の例をみてみましょう。
- 仕事や学校での困り事(ミスが多い、集中が続かないなど)
- 人間関係の悩みやコミュニケーションの傾向
- 感情のコントロールやストレスへの反応
- 幼少期の発達や性格の特徴
- 日常生活で苦手に感じる場面
ご自身のことをよく知ってもらうために、無理のない範囲で、できるだけ具体的に伝えることが大切です。
心理検査・発達特性検査
心理検査や発達特性検査は、ご自身の特性を客観的に理解するための大切なステップです。 言葉や数の理解力、記憶力、注意力などを調べることで、ご自身の得意・不得意の傾向を見ていきます。
| 検査名 | 内容 |
|---|---|
| WAIS-IV(成人知能検査) | 知的能力や思考の得意・不得意を調べる |
| WISC-IV/V(児童知能検査) | 子どもの発達段階に合わせた知能を測る |
| AQ(自閉スペクトラム指数) | 発達特性の傾向を自己回答の形式で確認する |
| CAARS | 注意欠如・多動性症(ADHD)の傾向を評価する |
| 性格検査 | ストレス耐性や対人関係の傾向を把握する |
これらの検査結果を総合的に見ることで、ご自身の特性や困りごとの背景をより深く理解しやすくなります。検査結果をもとに、今後の支援や生活の工夫を考えていくことも可能です。
その他の検査が実施される場合も
発達障害の診断では、必要に応じて、これら以外の検査が実施されることもあります。
たとえば、うつ病や不安症など他のこころの要因を確認するための質問票や、場合によっては脳波検査やMRIなどの医学的検査が実施されることもあるでしょう。
これは、いま感じている困りごとが、発達障害以外の要因で起きていないかを確認するためです。複数の視点から丁寧に見ることで、より正確な診断と適切なサポートにつながります。
診断結果はどう伝えられる?グレーゾーンの場合は?

検査結果は、数週間後に、医師から面談(お話)の形で伝えられるのが一般的です。
結果の説明では、心理検査の数値や行動の特徴などをもとに、あなたの得意・不得意の傾向や、「こんな工夫をすると生活しやすくなるかもしれません」というアドバイスがもらえます。
発達障害と診断される場合もあれば、「特性はあるものの、診断基準には当てはまらない」、いわゆる「グレーゾーン」だと伝えられることもあります。
グレーゾーンとは、日常生活での困りごとはあるものの、医学的な診断基準をすべて満たしてはいない状態を指す通称です。
たとえ診断名がつかなくても、困りごとに応じたサポートを受けられることがあります。 大切なのは診断名のある・なしではなく、ご自身の特性を理解し、より過ごしやすい環境を整えていくことです。
診断名だけがゴールじゃない。診断後の作戦会議が重要

診断名はゴールではなく、自分をより深く理解するための「スタート地点」です。
発達障害の診断を受けたあとは、医師や臨床心理士と一緒に、「自分はどんな場面で困りやすいか」「どのようなサポートがあると過ごしやすいか」を整理していきます。
必要に応じて、職場での配慮や支援制度の利用方法を相談することもできます。 診断後の面談は、今後の生活をより良くするための、前向きな作戦会議だと考えてみてください。
自分の「取扱説明書」を手に、自分らしい未来へ進もう

発達障害の診断は、「本当の自分」を理解するための大切なステップです。 診断結果をもとに、ご自身の「取扱説明書(トリセツ)」を作るような気持ちで、得意なことや苦手なことを整理してみましょう。
ご自身の特性(個性)を正しく知ることで、これまでの無理を減らし、自分らしく生きるための新しい工夫がきっと見つかります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の治療法や診断を推奨するものではありません。症状にお悩みの方は、必ず医師などの専門機関にご相談ください。
参考文献:
・厚生労働省/政府広報オンライン「特集:2011年4月」発達障害って、なんだろう? | 政府広報オンライン
・国立精神・神経医療研究センターこころの健康総合研究センター「疾患・障害・こころの健康情報」発達障害(神経発達症)|こころの情報サイト
看護師・保健師資格保有。大学卒業後、大学病院集中治療室で7年勤務し、新生児から老年期まで幅広い患者の急性期ケアを経験。保健師として活動し、看護大学非常勤講師も務める。その後、高齢者施設や看護小規模多機能施設に従事し、老年期医療に携わる。急性期から慢性期まで、幅広い年齢層の患者ケアに携わる。現在は臨床経験を活かし、認知症や介護に関する記事、クリニックのコラムなど医療情報の執筆活動も行っている。


