メニエール病で仕事を休んでもいいの?休む期間や休職を決める判断の目安とは

デコボコベース株式会社 最高品質責任者(CQO)
東京大学大学院 教育学研究科
博士課程 単位取得満期退学
通信制高校教諭、障害児の学習支援教室での教材作成・個別指導 講師を経て、現在は療育プログラムの開発、保護者や支援者向けの研修を実施
▼この記事の3つのポイント
- メニエール病とは、耳の奥にある「内耳」に内リンパ液が過剰に溜まり、むくむことで症状が引き起こされます
- 症状はめまい、難聴、耳鳴りなどです
- メニエール病の症状は、仕事へ支障をきたしやすいものです。薬物治療や規則正しい生活を送りながら、働きやすい労働環境を整えていくことが大切です
メニエール病のめまいがつらい……仕事を休むべき?

突然起こる回転性のめまい(自分自身や周囲がぐるぐる回っているように感じる状態のめまい)は、メニエール病の特徴的な症状の一つです。普段は問題なく仕事をこなす方でも、症状が出てしまうと、一気に仕事や日常生活がままならなくなってしまいます。
「めまいで仕事を休んでいいの?」「仕事中にめまいが起こったら、周りに迷惑をかけてしまう」「メニエール病は休職申請できる?」といった不安を抱える方もいるのではないでしょうか。
この記事では、メニエール病とはどんなものか、症状や治療法、仕事との向き合い方について詳しく解説していきます。
そもそもメニエール病とは?概要を解説

突然起こるめまいや耳鳴りは、日々の生活に大きな影響を与えます。ときには仕事に支障をきたすことも……。メニエール病とはいったいどのようなものか、詳しく解説していきます。
メニエール病の概要
メニエール病は、耳の奥にある「内耳(ないじ)」という部分に起こる病気です。内耳の中は「内リンパ液」という液体が溜まっており、通常は一定の量に保たれています。ところが、何らかの原因で内リンパ液が溜まりすぎると、内耳がむくんだ状態になるのです。
内耳は、音を聞いたり、体のバランスをとったりする器官で、聴力やバランス感覚に影響を与えます。その内耳がむくむことで、ぐるぐる回るような「めまい」、音が聞こえにくくなる「難聴」、耳がつまった感じがする「耳閉感(じへいかん)」や「耳鳴り」などの症状が引き起こされます。これがメニエール病のメカニズムです。
メニエール病の原因
メニエール病の原因は、はっきりとは明らかにされていません。しかし、生活習慣やストレスが深く関係しているといわれています。何らかの原因で、内耳にあるリンパ液の流れに異常が生じ、めまいや難聴などの発作が引き起こされます。
患者は30〜50代の女性に多くみられ、几帳面でまじめな性格の方や、ストレスを感じやすい方がかかりやすい傾向です。
また、睡眠不足や過労、気圧の変化が激しいとき(台風や低気圧の日など)にも症状が出やすいようです。限定された原因よりも、さまざまな因子が組み合わさって症状が引き起こされます。
メニエール病の検査と診断方法
メニエール病かどうかを調べるには「聴力検査」がよく実施されます。低い音が聞こえにくくなるという特徴があるため、聴力検査で低い音の聴力に変化がないか確認します。
めまいがある人には、眼振検査・重心動揺検査と呼ばれる検査が有効です。これらの検査では、めまいの程度や体のバランスを測定します。
さらに「MRI検査」で耳の中がむくんでいないかを確認することもあります。脳が原因の病気でもめまいが表れることがあるため、MRI検査で原因がどこにあるかをはっきりさせることが大切です。
検査結果だけでなく、本人の訴えや症状が起こるエピソードなどの問診を組み合わせ、総合的に診断されます。
参考:順天堂大学医学部附属順天堂医院 耳鼻咽喉・咽頭科「メニエール病」
メニエール病の主な症状

メニエール病は、めまい・変動性感音難聴・耳鳴り/耳閉感といった症状が代表的です。気持ち悪さや嘔吐症状が表れることも。すべての症状が表れるわけではなく、単一または複数の場合もあるようです。それぞれの症状を解説していきます。
めまい(回転性めまい)
メニエール病の患者さんがよく訴える症状が、突然ぐるぐると視界が回る回転性めまいです。発作は突然起こり、立っていられなくなるほど強いこともあります。吐き気や実際に吐いてしまうこともあるため、発作後は強い疲労を感じることも少なくありません。
症状は10分ほどでおさまることもあれば、数時間続くこともあります。発作中は横になり、目をつぶって静かに過ごしましょう。
変動性感音難聴
耳の聞こえが悪くなる、難聴の症状が出ることもあります。とくに、低い音が聞き取りにくくなるのが特徴です。聞こえの変化は日によって変わるため「変動性」とよばれます。
聴力は一時的に回復することもありますが、症状の進行とともにだんだん悪化し、低音だけでなく、高音も聞こえにくくなるケースも。聞こえにくさは日常生活に支障をきたすだけでなく、周囲とのコミュニケーションにも影響を与えます。うまくコミュニケーションが図れない状況は、ストレスを増す要因になるでしょう。
耳鳴り / 耳閉感(圧迫感)
耳の中で「キーン」や「ジー」といった音が聞こえる耳鳴りや、耳が塞がる・圧迫されると感じる、耳閉感(じへいかん)が生じます。耳鳴りは、水中にいるような低い音が聞こえる・高い金属音が聞こえるなどさまざまな訴えが聞かれます。耳閉感は、耳抜きせずに飛行機に乗っているような、耳の奥が圧迫される感覚に近いそうです。
これらの症状も多くの場合は片耳に起こりますが、病気が重症化すると両耳に出ることもあります。耳鳴りが強いと、音が気になって眠れなかったり、集中できなかったりし、日常生活や仕事に支障をきたしたりすることもあるでしょう。
メニエール病の治療方法は?

メニエール病は、完治が難しい疾患の一つです。症状を緩和する薬物療法や、生活習慣を見直しながら、病気とうまく付き合っていきましょう。
薬物療法
メニエール病は、症状を抑えるための薬を用いた治療が一般的です。使用される主な薬は以下のとおりです。
- 利尿薬:内耳に溜まりすぎた内リンパ液を減らす薬。尿の量を増やして、むくみの軽減を目指す
- 抗めまい薬:ぐるぐると回るようなめまいの症状をおさえるために使われる薬
- 血流改善薬:内耳の血流を良くし、平衡機能の安定を図る目的で処方される
- ビタミン剤:主にビタミンB12。神経の働きを整え、内耳の回復を助ける
- 抗不安薬:ストレスや不安による症状悪化を防ぐため、心の緊張をやわらげる薬。
- 漢方薬:症状や体質に応じて使われることがあり、体にやさしい選択肢として用いられる場合もある
これらの薬を、体質や症状に合わせて調整することで、発作を減らしたり悪化を防いだりする効果が期待できます。
生活習慣の見直し
メニエール病をよくするためには、日頃の生活習慣を整えることがとても大切です。
とくに、睡眠不足だと影響が出やすいため、まずは毎日しっかり眠る習慣を身に付けましょう。早めに寝るように心がけ、睡眠時間を確保することが大切です。また、仕事や家事を一人で抱えすぎないようにし、疲れたらこまめに休息をとりましょう。ときには手を抜くことも必要です。
ストレスを解消するためには、趣味を楽しんだり、体を動かしたりすることがおすすめです。ジョギングなどの軽い運動を週3回くらい取り入れると、体質改善につながるといわれています。冷えやすい人は、毎日湯船に浸かるなど、からだを温めることも意識してみましょう。
外科的治療
薬物療法や生活習慣を見直しても、日常生活に著しい影響が表れる症例では、外科的治療が施されることがあります。メニエール病患者の約2割の方が、外科的治療を実施しているようです。
外科的治療には以下の種類があります。
- 内リンパ嚢手術
- 鼓膜内ゲンタマイシン治療
- 内耳加圧治療
- 前庭神経切断術
- 迷路破壊術 など
外科的治療は、薬物治療に比べ身体的リスクが高まります。手術の適応は、年齢、重症度、聴力レベル、もう一方の耳の状態、生活背景などを考慮し検討されます。
メニエール病は仕事に支障を抱えやすい病気

突然起こる回転性のめまいは、その場で立っていることが困難で、消失するまでの間は仕事ができる状態ではありません。場合によっては、その場で転倒しケガをしてしまう恐れがあります。
また、難聴や耳鳴りは、周囲とのコミュニケーションや電話対応、会議などにも影響を及ぼします。運転する必要がある職種であれば、事故につながる可能性も大いにあるでしょう。
そういった症状が出現するかもしれないという不安は、強い緊張やストレスとなります。心身ともに影響が表れ、自分のもつ能力を発揮することができなくなってしまうかもしれないのです。
しかし、不安だからといってやりたいことを我慢する必要はありません。治療を継続し、周囲の助けを借りながら、自分の希望することに挑戦してみましょう。やりがいや前向きな気持ちがストレスを解消させ、よりよい方向へ進むかもしれません。
メニエール病で仕事を休む際の判断の目安

めまい発作を繰り返したり、仕事や日常生活に支障が出たりしているときは、無理をせず休むことが大切です。特にめまいがひどいときは、体を休めることを優先しましょう。
ただし、自分だけで判断せず、必ず医師に働けるかどうか相談することも必要です。休職する場合、仕事を休む期間や復帰のタイミングは、人によって異なります。医師の意見を踏まえ、職場と話し合いながら、自分の体調に合った無理のない復帰方法を考えていきましょう。
メニエール病で仕事を休む場合のQ&A

メニエール病の症状が強い場合、思い切って仕事を休み、療養に専念してもよいでしょう。仕事を休む際に不安や疑問に思うことを解説していきます。
メニエール病で仕事を休む期間はどれくらい必要?
メニエール病の発作が強いときは、数日から数週間、長いと1か月以上の休養が必要なケースがあります。めまいの頻度や症状の重さは人によって異なるため、医師と相談しながら自分に合った回復ペースを考えることが大切です。
会社を長く休む場合は「休職制度」を使うこともできます。一般的に多くの企業では、3か月~1年ほどの休職期間を設けているケースが多いようです。職場によって取得できる日数は異なるため、休職を考える際は、勤務先の就業規則をしっかりと確認しておきましょう。
休職を申請することは可能?
休職の対象となる病気に明確な決まりはありませんが、多くの場合、以下の条件を満たせば休職を申請することができます。
- 医師から「就労困難」と診断書が出されている
- 業務遂行に明らかな支障が出る
- 治療・休養によって回復が見込める
メニエール病で働くのが難しい場合は、医師の診断書があれば休職を申請できます。
ただし、休職制度はあくまでも復帰を前提とした制度です。休職中の病状や復帰については、職場とコミュニケーションをとり調整していきましょう。
傷病手当金を受け取ることは可能?
傷病手当金とは、病気やけがで会社を休み、給与が出ないときに生活を支えるための制度です。会社の健康保険に加入している人が対象です。病気などで連続3日間休んだあと、4日目から最長1年6か月まで受け取れる可能性があります。
メニエール病で休職した場合も、医師の診断書が必要です。就労が困難と判断されれば申請できます。
ただし、自営業や国民健康保険の人は対象外です。退職後でも、一定の条件を満たせば引き続き受け取れる場合もあるので、保険の種類や手続き方法を事前に確認しておくと安心です。
メニエール病と仕事を両立するポイントは?

メニエール病と向き合いながら働くには、無理せず自分らしい働き方を目指しましょう。メニエール病と仕事を両立するポイントを解説していきます。
無理をしない働き方を意識する
体調が優れない日には、無理に働こうとせず、自分のペースを守ることが大切です。めまいや耳の不調が強いときはしっかり休み、症状の回復を優先しましょう。
天気や過労など、症状が起こりやすいきっかけがある方は、予測しながら仕事を調整することも必要です。こまめに休憩をとったり、リモートワークを取り入れたりして、自分にとって無理なく働ける環境を整えましょう。
職場とこまめにコミュニケーションを取る
メニエール病について、あらかじめ職場の上司や同僚に話しておくと、症状が表れたときに対処しやすくなります。日頃から周囲の方と体調について話す機会をもち、よい関係性を築いておきましょう。
病気について細かく話す必要はありません。「今日は少し調子が悪いです」など、簡単に声かけしておくだけでも、症状が表れたときに相談しやすくなります。
こまめにコミュニケーションを取ることで、病気への理解が得られやすく、働きやすくなります。また、発作時の対応をあらかじめ伝えておくと、職場も配慮しやすいでしょう。
生活リズムとストレス管理を徹底する
生活リズムを整えることは、メニエール病の症状を安定させるうえでとても大切です。しっかり寝る、バランス良く食べる、軽い運動を続けることを心がけましょう。
しかし、ときには残業が続いたり飲み会や接待が入ったりすることもあるでしょう。仕事であれば断れない場合もあるはずです。睡眠不足が続いたりストレスが溜まったりすれば、症状が出やすくなり翌日の仕事に支障が出ることも……。
体調が優れないときには、理由を話し断ることも必要です。そのためにも、日頃から同僚や上司とコミュニケーションを取り、体調を優先した働き方ができる環境を整えましょう。
症状が出たときの対処法を決めておく
めまいなどの症状が出たときの対処法を事前に決めておくと、安心して働けます。
たとえば「めまいが起こったら、休憩室で休ませてもらう」「体調が回復しないときには早退を願い出る」といった希望を職場に伝えておきましょう。
すべて希望通りにするのは難しいかもしれませんが、対処法を伝えておくことで、自分だけでなく、職場の方も配慮しやすくなります。
働き方の調整を検討する
高所作業、立ちっぱなし、重いものを運ぶ、運転するといった作業が日常的にある仕事では、危険を伴う場面も出てくるでしょう。自分だけではなく、周囲の方を巻き込んでしまう可能性もあります。
リスクが高い業務は避け、他の業務に変更できないか相談してみましょう。フレックスタイム、時短勤務、在宅勤務など、働き方を柔軟に変えることも選択肢の一つです。
症状に波がある人は、調子の良い日は出社、悪い日は在宅など、自分の体調に合った働き方ができるよう工夫していくことが大切です。
支援の活用も検討しよう

メニエール病と仕事を両立するためには、制度や支援を活用することも大切です。以下のような公的な支援制度を、症状や生活状況に合わせて検討してみましょう。
| 障害者手帳 | メニエール病により、難聴や平衡感覚に障害があると認められれば取得可能。 就労支援、通院時の交通費助成、税の控除などが受けられる。 |
| 就労移行支援 ・就労定着支援 | 働くための準備やスキル習得を支える「就労移行支援」と、就職後の職場定着を支える「就労定着支援」がある。 体調管理や相談支援が受けられる。 |
| 障害年金 | 障害の程度により、年金を受け取れる制度。 聴力やバランス感覚への障害が対象になることがある。 |
| 医療費補助制度 (自治体) | 自治体によって、通院や薬の費用の一部を助成してもらえる場合あり。詳しくはお住まいの市区町村に相談を。 |
参考:厚生労働省「障害者手帳について」
厚生労働省「障害者の就労支援対策の状況」
日本年金機構「障害年金」
無理をせず、少しずつ仕事復帰を目指そう

今回は、メニエール病の症状や原因、治療方法に加えて、仕事への影響や休職制度、支援制度の活用方法について紹介しました。
メニエール病は、日によって症状に波があり、仕事に支障をきたすことも少なくありません。しかし、症状とうまく付き合いながら働いている人はたくさんいます。医師と相談しながら無理のない働き方を見つけることが大切です。
体調や環境に不安がある場合は、休職制度や傷病手当金、障害者手帳や就労支援などの制度の活用をおすすめします。無理せず、自分らしくいられる働き方を見つけていきましょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の治療法や診断を推奨するものではありません。症状にお悩みの方は、必ず医師などの専門機関にご相談ください。

看護師として総合病院で10年間勤務。循環器科・救急科にて急性期看護を学びました。結婚を機にクリニックへ転職。現在はWebライターとしても活動しています。子どもの発達に不安を抱き、児童発達支援士を取得。障害のある方の不安に寄り添った記事を執筆します。


