HSPとは?HSPの特徴や症状、セルフチェックの方法や向き合い方を解説

デコボコベース株式会社 最高品質責任者(CQO)
東京大学大学院 教育学研究科
博士課程 単位取得満期退学
通信制高校教諭、障害児の学習支援教室での教材作成・個別指導 講師を経て、現在は療育プログラムの開発、保護者や支援者向けの研修を実施
▼この記事の3つのポイント
- HSP(Highly Sensitive Person)とは、非常に感受性が強く、外部の刺激に敏感な人のことを指します。「個性」や「特性」の一つであり、病気や障がいではありません
- HSPの特性からくる困り事に対しては、自分の特性を理解し、刺激を避けたり休息を取ったりするなど対策することが大切です
- HSPの特性によって日常生活に支障がある場合は、適切な医療機関で治療を受けましょう
私って繊細?もしかしたらHSPかもしれない…
「ちょっとしたことで疲れやすい」「周囲の反応が気になりすぎる」「音や光に敏感すぎる気がする」そんな繊細さに悩んでいませんか? もしかしたら、それは「HSP(Highly Sensitive Person)」の特性かもしれません。
HSPは、生まれ持った「特性」の一つです。感受性が鋭く、深く考え込む傾向があるため、日常生活に困ることが生じることも少なくありません。
本記事では、HSPの特性や自己診断の方法、HSPの特性と向き合うためのヒントを詳しく解説します。
HSP(エイチエスピー)|Highly Sensitive Personとは?
HSP(エイチ・エス・ピー)とは、非常に感受性が強く、外部の刺激に敏感な人のことを指します。1996年にアメリカの心理学者エレイン・N・アーロン博士が提唱した概念で、生まれつきの特性です。
統計によると、人口の15~20%がHSPに当てはまるそうです。また、日本人は特にこの傾向が強いといわれています。HSPは、環境や性格ではなく「個性」の一つですが、他の人との違いに悩むこともあるようです。そのため、ストレスをためやすく、うつ病や睡眠障害などの症状に発展することも。
HSPの方は、脳の「扁桃体」という部分が活発に働くため、刺激に強く反応しやすい傾向があります。HSPは内向型(HSP)・外向型(HSE)・刺激追求型(HSS型HSP)刺激追求型・外向型(HSS型HSE)の4つに分類され、同じHSPでも特徴が異なる部分もあります。
参考:音や光がすごく気になる……過敏なあなたは「HSP」かも | 済生会
HSPの4つの特性について
エレイン・N・アーロン博士は、HSPの方にはDOSE(ダズ)という4つの特徴があり、すべてそろってHSPであると提唱しています。それぞれどういった特性か詳しく解説します。
D(Depth of Processing)|深く考えやすい
物事を深く考える傾向があり、相手の言葉や態度から多くの情報を察知します。細かいところまで気にしてしまうため、ちょっとした会話でも頭の中でたくさんの思考が巡り、疲れてしまうのです。
また、すぐに結論が出せることも、慎重になりすぎて時間がかかることも。表面的な話よりも、生き方や哲学について深く考えることを好みます。
O(Overstimulation)|刺激を受けやすい
他者の感情や空気の変化を敏感に感じ取るため、無意識に気を遣いすぎてしまいます。楽しい時間を過ごしても、帰宅後にどっと疲れを感じるのは、刺激を受けすぎた証拠です。環境の変化にも敏感で、新しい場所やルールに慣れるのに時間がかかることも。
また五感が鋭く、音・光・匂い・触感・気温の変化に敏感です。人混みや大きな音に圧倒されるため、すぐに疲れてしまいます。
E(Emotional Reactivity & Empathy)|共感力が高い
共感力が高く、他者の気持ちを深く理解することができます。その反面、相手が落ち込んでいると、自分も悲しくなり落ち込んでしまいます。ドラマや小説の登場人物に感情移入しやすく、涙することも多いでしょう。
さらに、相手の仕草や目線から気持ちを読み取るのが得意なため、場の空気を敏感に察知します。動物や赤ちゃんの気持ちを理解しやすいのも特徴の一つです。その反面、他者と自分の感情の境界があいまいになりやすく、精神的に疲れてしまうことも。
S(Sensitivity to Subtleties)|感受性が鋭い
周囲のわずかな変化に対し、すぐに気が付きます。例えば、他者の機嫌の変化、部屋の温度や香りの違い、衣類のタグや締め付けにも敏感です。静かな環境でも、機械音や時計の針の音が気になって集中できないことも。カフェインや食品添加物、タバコの煙に敏感に反応することも多いようです。
HSPは、びっくりしやすい、疲れやすい、敏感すぎる?
HSPの方は周囲の刺激に敏感なため、常に気を遣い、疲れやすい傾向です。楽しい場面でも相手のテンションに合わせすぎてしまい、後でどっと疲れることも。また、何もしていないときでも、周りの音や雰囲気を無意識に拾い集めるため、心が休まりません。他者のネガティブな感情に影響されやすく、自分では気がつかないうちに消耗してしまうこともあります。
さらに、繊細さゆえに相手ではなく自分を責めがちです。自己肯定感が低く、人間関係が苦手な人も多いでしょう。また、日頃から周囲の変化に敏感なため、予期せぬ出来事に驚きやすく、大きな音や突然の声掛けに強く反応することがあります。
HSPは疾患ではなく「特性」
HSPは病気や障がいではなく、生まれ持った「特性」や「気質」の一つです。そのため治療方法はありません。しかし、特性から生じる困り事が原因で、うつ病や睡眠障害など二次障害を引き起こす可能性もあります。その場合は医療機関で適切な治療を受けましょう。
HSPに関する情報がネットを中心に広まったり、複数の芸能人がHSPの特性があると公表したりしたことで、2020年頃より幅広く認知されるようになりました。「生きづらさ」の原因が「特性」であることがわかり、対応方法を模索する方が増えたのではないでしょうか。
HSPと他の疾患との違いは?
HSPと似たような症状が現れる疾患の中には、治療で改善するものもあります。HSPと他の疾患の違いを解説します。
不安症
不安症は精神疾患の一つで、過剰な不安や恐れが続き、動悸やめまいなどの身体症状を引き起こす疾患です。HSPの方は共感力の高さや自己肯定感の低さが影響し、他者の気持ちに引きずられ、心身ともにストレスを抱えやすいため、不安症を発症しやすいといわれています。
また、家庭や会社で大きなストレスを抱え対応が難しくなると、適応障害やうつ病と診断されることも。その場合は適切な治療や療養が必要です。
発達障害
HSPの敏感さは、自閉症スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動性障害(ADHD)と共通する部分があります。
発達障害は脳機能の発達の偏りが原因で、コミュニケーションや問題解決に困難を抱える特性です。一方HSPは、情報や刺激を受け取りすぎることで疲労しやすくなる特性のことです。
症状として、対人関係の苦手さや変化への適応の難しさといった共通点がありますが「障がい」と「特性」は異なります。発達の状態や困り事などを考慮した、専門の医師による鑑別が必要です。
HSPセルフチェックリスト|簡単にできる自己診断
ご自身にHSPの特性があるかどうか、自宅で簡単にチェックしてみましょう。
社会福祉法人済生会病院がセルフチェックリストを作成しています。以下の項目のうち12個以上当てはまる場合、HSPの傾向が高いそうです。
- 自分をとりまく環境の微妙な変化によく気づく
- 他人の気分に影響を受けやすい
- 痛みにとても敏感だ
- 忙しい日々が続くと一人になれる場所にこもりたくなる
- カフェインで体調に変化が起こりやすい
- 明るい光や強い臭い、肌触りの悪い服が苦手だ
- 想像力が豊かで、空想にふけることが多い
- 騒音が気になりやすい
- 美術や音楽に深く心を動かされる
- とても良心的である
- 些細なことでもすぐに驚く
- 短期間にたくさんのことをしなければならないときに混乱する
- 誰かが不快な思いをしていると、快適になる方法にすぐ気づく
(電気の明るさを調節するなど) - 一度にたくさんのことを頼まれるのが嫌だ
- 物を忘れるといったミスをしないよう、いつも気をつけている
- 暴力的な映画やテレビ番組は見ないようにしている
- あまりにも多くのことが身の回りで起こると、不快になり神経が高ぶる
- 空腹になると、集中できなくなったり気分が悪くなったりする
- 生活パターンが変化すると、混乱しやすい
- デリケートな香りや味、音、音楽を好む
- 普段の生活では動揺する場面を優先して避ける
- 仕事などで競争させられたり観察されていたりすると、緊張して実力が発揮できない
- 子どもの頃、周囲の大人から「敏感だ」「内気だ」といわれた
引用元:音や光がすごく気になる……過敏なあなたは「HSP」かも | 済生会
※このセルフチェックは一般的な傾向を把握するためのものであり、正確な診断を提供するものではありません
HSPかもしれないと思ったらどうする?
繊細すぎる気質によって日常生活で困る出来事が生じると、自分がHSPではないか疑う方もいるでしょう。ここでは、HSPの特性があると感じたら、どうしたらよいか解説します。
HSPの特性や自分自身の傾向を正しく把握する
自分がどんなことに耐えられないか、どんな刺激が苦手なのかを正しく知ることが大切です。
これまで「クヨクヨ悩む自分が悪い」と思っていたことは、実はHSPの特性が原因だったのかもしれません。書籍を読んだり同じHSPの人の経験を聞いたりすると「困っているのは自分だけじゃない」と気づくのではないでしょうか。
うまくいかなかった状況を見つめ直し、自分が感じた思いを明らかにすると、だんだんと自己理解が深まります。また相手と自分の考え方は違うという視点も生まれてくるでしょう。
HSPの気質とうまく付き合う方法を実践する
HSPの特性を理解したら、日常生活でうまく付き合えるよう工夫しましょう。
「できない」のではなく、特性によって過敏に反応しているだけと考え、自分を責めないことが重要です。また、周りの期待に応えようとしすぎず、自分の気持ちを大切にしましょう。
HSPの方は神経が高ぶりやすいため、十分な休息時間の確保や、SNSなど情報過多になりやすいものから距離を置くことも効果的です。安心できる環境を選ぶことが、心の安定につながります。
日常生活への影響が大きい場合は専門家に相談する
HSPの特性によって仕事や日常生活に支障をきたす場合は、専門家に相談するのも一つの方法です。心療内科や精神科のカウンセリングを受けることで、客観的な視点からアドバイスをもらえます。
また、HSPが原因でストレスを抱え、うつ症状や体調不良がある場合は、医療機関の受診を検討しましょう。自治体の相談窓口など、公的なサポートを活用するのも有効です。専門的なサポートを受けることで、より良い対策が見つかるかもしれません。
HSPと向き合って生きていくためには…?
HSPの特性は生まれ持ったものです。そのため自分自身を受け入れ、向き合って生きていく必要があります。HSPと向き合うポイントを紹介します。
HSPの長所にも目を向ける
HSPの方は繊細で敏感ですが、優れた長所がたくさんあります。共感力が高く人の気持ちをくみ取るのが得意で、丁寧に話を聞くことができます。小さなことから喜びを感じ、人の幸せを心から喜べるのもHSPの素敵なところです。
また、仕事においては細かいことに気づくため、クオリティが高く、リスクを回避する能力にも優れています。深く考えることができるので、鋭い質問や的確な意見など、仕事と真面目に向き合う様子は周囲に好印象を与えます。
HSPの特性は「欠点」ではなく、自分らしさと変換してみましょう。
自分の苦手な要素について理解を深める
HSPの人は、何に対して敏感なのかを知ることが大切です。苦手な要素を突き止めることで、対策しやすくなります。
例えば光が苦手な場合、太陽や電球の光など、どのような光が苦手なのかを明確にすることで、サングラスを使用したり照明を調節したりすることができます。音が苦手な場合、その音が人の声なのか雑音なのか、機械音なのかを突き止める、服の締めつけが苦手な場合は、リラックスできる素材を選ぶなど、対策しやすくなるでしょう。嫌なにおいを避けるためにマスクをしたり、お気に入りの香りを持ち歩いたりするのもおすすめです。
特性に合わせて環境を整える
刺激の少ない環境は、周囲からの刺激を受けにくく、リラックスして過ごすことができます。そのため、自分にとって安心できる環境を整えるよう意識しましょう。会社では、疲れすぎる前に休憩時間を設ける、一人でリラックスできる空間があると安心です。
また人間関係においては、苦手な方とは無理に関わらず、自分にとって心を許せる相手と過ごしましょう。相手の感情を先回りして考えすぎないことも大切です。
自分の特性を周囲にうまく伝える方法
HSPの方は少なくありませんが、すべての方にHSPの特性が受け入れられるわけではありません。周囲の理解や配慮を得たい場合、自分の特性についてうまく伝えてみましょう。
HSPの特徴を具体的に伝える
HSPであることを伝えるときは、HSPがどんな特性でどういった症状があるのかを具体的に説明しましょう。「私は人より繊細なんです」と伝えられても、相手は何に気を付けたらいいのかわからないものです。また、特徴には個人差があるため、すべてのHSPの方に同じ対策が適切とは限りません。
例えば「大きな音が苦手で、急に鳴る音に驚いてしまう」「蛍光灯の光がまぶしくて頭が痛くなる」など、自分の感じ方を具体的な例を交えて伝えましょう。そうすることで、相手も理解しやすく、適切に配慮してもらいやすくなります。
HSPの特性をポジティブに伝える
HSPの特性により日常生活に困り事が生じると、ついできないことばかりに目を向けてしまいがちです。しかし、HSPの特性には長所もたくさんあります。例えば、観察力に優れている、相手の気持ちを考えて行動できる、丁寧に考察できるといった面は、仕事で役立つスキルばかりです。
ネガティブに考えず、自分の特性をアピールポイントとしてポジティブに伝えることで、上司や同僚からの印象が変わり、働きやすい職場環境が整えられます。
周囲に求めることをシンプルに伝える
自分が求める配慮は、できるだけシンプルに伝えましょう。「大きな怒鳴り声に驚いてしまうので、急な大声は出さないでほしい」や「太陽光のまぶしさが苦手なので、廊下側の席へ変えてもらえますか?」など、希望することを的確に伝えるのがポイントです。
また、日常的に耳栓やサングラスなど個人で対策できることはしておきましょう。対策した上で配慮が必要であると伝えれば、周囲も受け入れやすくなります。その際は、会社や上司へ使用許可を取りましょう。
自分の特性を理解して、生きづらさを和らげよう
HSPとは、生まれつき感受性がとても強く、さまざまな刺激に敏感に反応する特性を持つ方のことです。深く考えやすい、刺激を受けやすい、共感力が高い、感受性が鋭いという4つの特性により、日常生活に困ることが生じることも少なくありません。
HSPは疾患や障がいではなく「特性」です。そのため治療方法はありません。自分自身の特性や傾向について理解し、うまく付き合う方法を探していきましょう。
「特性」をポジティブにとらえ、過ごしやすい環境を整えることで、日常生活や社会生活への影響が減り、生きやすい世界が広がるかもしれません。

看護師として総合病院で10年間勤務。循環器科・救急科にて急性期看護を学びました。結婚を機にクリニックへ転職。現在はWebライターとしても活動しています。子どもの発達に不安を抱き、児童発達支援士を取得。障害のある方の不安に寄り添った記事を執筆します。


