障害者総合支援法とは|目的や障害福祉サービスの詳細をわかりやすく紹介

デコボコベース株式会社 最高品質責任者(CQO)
東京大学大学院 教育学研究科
博士課程 単位取得満期退学
通信制高校教諭、障害児の学習支援教室での教材作成・個別指導 講師を経て、現在は療育プログラムの開発、保護者や支援者向けの研修を実施
▼この記事の3つのポイント
- 障害者総合支援法は、障害のある人が地域で安心して暮らし、社会に参加できるようサポートするための法律です
- 介護・就労・医療など、本人の状況や希望に応じて受けられる福祉サービスが多岐にわたって用意されています
- 支援を受けるには申請や計画づくりが必要ですが、専門の相談窓口や制度も整っており、一人で抱え込む必要はありません
日本には、障害のある人を支えるためにさまざまな法律があります。法律というと「難しそう」「自分には関係ないかも」といったイメージを持つ人も多いでしょう。しかし、法律や制度は、人々の助けとなるものです。
障害者総合支援法という法律は、生活をより安心で豊かにするために重要なものです。誰にでも平等な生活を送る権利があり、共生社会の実現へ向け改正が繰り返されています。
当記事では、障害者総合支援法の目的や具体的なサービスをわかりやすく紹介していきます。
障害者を支援する法律や制度について知りたい!

厚生労働省の2020年の患者調査によると、国民のおよそ9.2%が何らかの障害を有しているそうです。その中でも精神障害者は600万人を越えており、身体・知的・精神障害の3区分の中でも高い割合を占めています。
日本はノーマライゼーションの実現に向け、障害のある人に関する支援や法律が制定されています。ノーマライゼーションとは、1950年代に北欧諸国から始まった、障害の有無に関わらず誰もが平等に生活できる社会を目指すという考え方です。
福祉サービスの充実により、障害者が地域で安心して暮らせるノーマライゼーション社会の実現を目指し、法律が制定されました。
参考:
内閣府「障害者の状況|令和5年版障害者白書(全体版)」
厚生労働省「障害者福祉:障害者自立支援法のあらまし」
「障害者総合支援法」とは?

障害者総合支援法とは、障害者の自立と社会参加の支援を目的とした法律です。障害の種類や程度に応じその人にあわせた生活や就労のサポートが行われます。2006年に施行された障害者自立支援法を基に制定されました。
身体障害者・知的障害者・精神障害者への支援は、2006年より以前は分けられていましたが、それらの支援を一体化して制定された法律が障害者自立支援法です。しかし、サービスの利用料は所得に関係なく一定割合の負担とされており、負担に不公平さが生じるという問題がありました。
不公平さをなくすために2013年に制定された法律が、障害者総合支援法です。サービス利用料は所得に応じて設定され、より公平な支援の提供を実現しました。また、これまで対象外であった難病患者も対象となり支援の幅も広がっています。
参考:厚生労働省「地域社会における共生の実現に向けて 新たな障害保健福祉施策を講ずるための 関係法律の整備に関する法律について」
障害者総合支援法の目的と基本理念は?

提供される福祉サービスは、目的や基本理念に沿って一貫した方向性を保ち続ける必要があります。政策に関わるすべての人が同じ意識をもてば、障害のある人にとってのより良い環境が整い、共生社会の実現へ向けての実効性が高まるでしょう。
目的
障害者総合支援法の目的は、「障害者及び障害児が基本的人権を享有する個人としての尊厳にふさわしい日常生活または社会生活を営むこと」です。
障害者一人ひとりのニーズに合った支援を提供し、社会生活への参加を促していきます。こうすることで、障害の有無に関わらず平等な権利をもち、その人らしい生活が送れる環境を整えていきます。
参考:厚生労働省「地域社会における共生の実現に向けて 新たな障害保健福祉施策を講ずるための 関係法律の整備に関する法律について」
基本理念
障害者総合支援法の基本理念は、障害のある人が能力や特性に応じて自立し、社会生活を送れるよう支援することを重視しています。
具体的なポイントは以下のとおりです。
- 自立支援と社会参加の促進
- 意思の尊重と選択の自由
- 共生社会の実現
- 地域に根付いた支援
誰もが平等に生活できる共生社会の実現に向け、一人ひとりの自立した生活を支援します。また、社会の一員としての生活をサポートし、社会参加できるように環境を整えていきます。これらの支援は、障害者本人の意思や希望を尊重することが前提です。支援を受けるときには利用者本人が主体的に選択できるようサポートを行います。
参考:厚生労働省「地域社会における共生の実現に向けて 新たな障害保健福祉施策を講ずるための 関係法律の整備に関する法律について」
他の法律との違い

障害のある人に関連する法律は他にもあります。障害者総合支援法は自立した生活に向けた福祉サービスの提供を目的としていますが、障害者基本法や児童福祉法は、主に障害者・障害児の権利を保障するための法律です。
障害者基本法
障害者基本法は、国連の「障害者の権利条約」に基づき、障害のある人の法律や制度についての基本的な考え方を示したものです。1979年に制定された心身障害者対策基本法を元に、1993年に制定されました。2011年には一部改正が行われ、共生社会の実現が含まれました。
障害の有無に関わらず、全ての人に人権があるということが明示されており、障害者の自立・社会参加の支援に関する基本理念や地方公共団体の責務が定められています。
児童福祉法
児童福祉法は、子どもの健全な育成の保障と、子どもに関する福祉サービスを提供するための基本となる法律です。1974年に制定され、時代に応じて改正がされています。
「すべての子どもが健やかに成長し、幸せな生活を送る権利を持つ」という理念に基づき、子どもの人権や、家庭・社会の責任について定められています。具体的な取り組みは虐待防止と対応、児童福祉施設の運営、障害児への支援、子育て支援などで、18歳未満の子どもが対象です。
障害者総合支援法による支援制度・サービスは?

障害者総合支援法は、具体的な支援サービスについて定めています。支援サービスの内容は、経済的負担を軽減させるものや、食事・排泄・移動など日常的な介護に関するもの、働くための訓練など就労に関するものなどがあります。さまざまなサービスの中から、利用する人に必要なサービスが提供されます。
自立支援医療
自立支援医療は、障害のある人の医療にかかる負担を軽減するための公的負担医療制度です。医療費の負担が大きくなりすぎないように、所得に応じて負担上限額が設けられています。自立支援医療は大きく以下の3つに分けられます。
| 精神通院医療 | 規定された精神疾患がある人で、通院による精神医療が継続的に必要な人 |
| 更生医療 | 身体障害者手帳が交付されている人で、その障害を取り除くまたは軽減する手術などの治療により確実に効果が期待できる人(18歳以上) |
| 育成医療 | 身体に障害がある児童で、その障害を取り除くまたは軽減する手術などの治療により確実に効果が期待できる児(18歳未満) |
自立支援医療には所得により負担上限額が設定されています。
| 所得区分 | 更生医療 精神通院医療 | 育成医療 | 重度かつ継続 | |
|---|---|---|---|---|
| 生活保護 | 生活保護 | 0円 | 0円 | 0円 |
| 低所得1 | 市町村民税非課税 | ※1 | 2,500円 | 2,500円 |
| 低所得2 | 市町村民税非課税 | ※1 | 5000円 | 5,000円 |
| 中間所得1 | 市町村民税所得割 33,000円未満 | 1割負担 | 5,000円 | 5,000円 |
| 中間所得2 | 市町村民税所得割 33,000円以上235,000円未満 | 1割負担 | 10,000円 | 10,000円 |
| 一定所得以上 | 市町村民税所得割 235,000円以上 | 対象外 | 対象外 | 20,000円 |
介護給付
介護給付とは、障害のある人の日常生活や自立支援を促すためのサービスのことです。具体的には以下のサービスが提供されます。
| 居宅介護(ホームヘルプ) | 自宅で過ごす人の入浴・排泄・食事などの介護 |
| 重度訪問介護 | 障害により生活に著しい困難が生じている人に対し、自宅での入浴・排泄・食事などの介護や、外出時の移動支援、入院時の支援などを行う |
| 同行援護 | 視覚障害のある人に対し、退出時における情報提供や移動援護などの支援を行う |
| 行動援護 | 自己判断能力が制限されている人が行動するときに、危険を回避するための支援や外出支援を行う |
| 重度障害者等包括支援 | 介護の必要性が高い人に対し、居宅介護等複数のサービスを組み合わせて支援を行う |
| 短期入所(ショートステイ) | 介護者の何らかの理由により、一時的に施設へ入所し、入浴・排泄・食事などの介護を行う |
| 療養介護 | 医療と常に介護が必要な人に対し、医療機関で機能訓練や療養上の管理、看護、介護、日常生活の支援を行う |
| 生活介護 | 常に介護が必要な人に対し、日中の入浴・排泄・食事などの介護の提供と、創作的活動や生産活動(軽作業など)の機会の提供を行う |
| 施設入所支援 | 施設入所者の入浴・排泄・食事などのケア(夜間や休日) |
訓練等給付
訓練等給付は、障害のある人が日常生活や社会生活を送る能力を身に付けられるよう訓練する支援です。就労に関する支援も含まれます。訓練内容は以下のものがあります。
| 自立訓練 | 生活が自立できるよう、一定期間、身体機能や生活能力の向上のために必要な訓練を行う 機能訓練と生活訓練がある |
| 就労移行支援 | 一般企業等への就労を希望する人に、就労に必要な知識や能力の向上のために必要な訓練を行う |
| 就労継続支援(A型:雇用型、B型:非雇用型) | 一般企業での就労が困難な人に、働く場の提供と、知識・能力向上に必要な訓練を行う A型は雇用契約を結び就労する |
| 就労定着支援 | 一般企業に移行した人に、就労したことにより生じる生活面の課題に対応するための支援を行う |
| 自立生活援助 | 一人暮らしに必要な理解力・生活力を補うことを目的とし、定期的な居宅訪問などを行い、日常生活に関する課題把握と支援を行う |
| 共同生活援助(グループホーム) | 共同生活を行うグループホームで、相談や日常生活上の援助を行う また、介護を必要とする人に対し、介護サービスを提供する |
相談支援
相談支援は、介護給付や訓練給付などの支援を利用するための計画書の作成や、生活の相談を行っています。
2012年の改正により、計画相談支援が障害者福祉サービスを申請した障害者まで拡大されました。また、相談支援の拠点として各市町村に設置されたのが、基幹相談支援センターです。これにより、相談支援体制が強化されました。相談支援の具体的な内容は以下の通りです。
| 計画相談支援 | 障害福祉サービスの申請時に必要なサービス等利用計画案の作成、支援決定後に各サービス事業者との連絡調整やサービス等利用計画の作成を行う。(サービス利用支援) また、支給決定されたサービス等の利用状況をモニタリングし、サービス事業者との連絡調整などを行う。(継続サービス利用支援) |
| 地域移行支援 | 障害者施設・精神科病院・保護施設・矯正施設等を退所する障害者、児童福祉施設を利用する18歳以上の人を対象に、地域移行計画の作成、相談、外出への同行支援、住宅の確保、関係機関との調整を行う。 |
| 地域定着支援 | 一人暮らしをしている障害者を対象に、常に連携体制を確保し、緊急時に必要な支援を行う。 |
その他
障害者総合支援法では、補装具の購入や修理に関する制度があります。
補装具は、身体機能を補ったり、代わりとなる装具のことで、長期間、継続的に使用されるものです。義肢・装具・車いす、杖などが対象です。また、コミュニケーションが困難な人に対し、文字等走査入力方式という専用機械も対象です。
利用には申請が必要で、市区町村により支給の可否が決定されます。また、利用者負担額は世帯収入により変動し、負担上限月額が設けられています。負担上限月額は、生活保護・低所得世帯は0円、一般世帯は37,200円です。
参考:社会福祉法人 全国社会福祉協議会「障害福祉サービスの利用について」
障害者総合支援法の福祉サービスの対象者

障害者総合支援法の対象範囲は、「身体障害者、知的障害者、精神障害者(発達障害者を含む)に加え、制度の谷間となって支援の充実が求められていた難病等」とされています。つまり、18歳以上の身体・知的・精神・発達障害のある人と、難病の人ということです。
| 身体障害 | 身体に何らかの障害がある人 | 視覚障害、聴覚障害 四肢の欠損など |
| 知的障害 | 知的発達の障害(精神遅滞) | (原疾患として) 染色体異常、先天性代謝異常症、 胎児期の感染症、脳奇形など |
| 精神障害 | 思考や感情、行動の障害 | うつ病、統合失調症、 てんかん、依存症など |
| 発達障害 | 脳の機能的な問題が関係している障害 | 自閉スペクトラム症 注意欠如・多動性障害 学習障害 |
障害者総合支援法の指定難病は適宜見直しがされており、2024年4月1日よりこれまでの366疾病から369疾病へ拡大されました。
参考:
厚生労働省「地域社会における共生の実現に向けて 新たな障害保健福祉施策を講ずるための 関係法律の整備に関する法律について」
厚生労働省 e-ヘルスネット「知的障害(精神遅滞)」
厚生労働省 e-ヘルスネット「発達障害」
厚生労働省「障害者総合支援法の対象疾病(難病等)の見直しについて」
障害者総合支援法の福祉サービスの申請方法

障害者総合支援法の福祉サービスを利用するまでの流れは以下の通りです。
1. 各市区町村の窓口に申請し、障害支援区分の認定を受ける。
2. 利用者(福祉サービスの利用を希望した人)は、「指定特定相談支援事業者」で「サービス等利用計画案」を作成し、市区町村に提出する。
3. 市区町村で計画案などを基に総合的に判断し、支給が決定される。
4. 支給決定されたら、指定特定相談支援事業者は、サービス担当者会議を開催する。
5. 指定特定相談支援事業者が、サービス事業者などと連絡調整を行い、実際に利用する「サービス等利用計画」を作成する。
6. サービス利用が開始される。
障害者区分は、1~6の区分に分けられており、6区分が必要とされる支援の度合いが高い分類です。移動や日常生活、コミュニケーション、行動障害、医療介入の有無などの80項目を調査し、医師の意見書とあわせて総合的に判定が行われます。
指定特定相談支援事業者は、各市区町村で定められた相談支援事業です。そのため、申請の際に窓口で該当の事業所を確認しておきましょう。
参考:社会福祉法人 全国社会福祉協議会「障害福祉サービスの利用について」
障害者総合支援法の福祉サービスの利用料

福祉サービスの利用には利用料金がかかります。しかし、利用者の負担を軽減するために負担額には上限が設けられています。所得に応じて4区分の負担上限額が定められており、利用額が超過した場合にも、上限額を超える請求はされません。
4区分は以下の通りです。
| 区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限月額 |
|---|---|---|
| 生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
| 低所得 | 市町村民税の支払いをしていない世帯 (世帯収入概ね300万円以下) | 0円 |
| 一般1 | 市町村民税の支払いをしている世帯 (世帯収入概ね670万円以下) | 9,300円 (※1) |
| 一般2 | 上記以外の世帯 (20歳以上の入所施設利用者、グループホーム利用者で市町村民税の支払いをしている世帯も含む) | 37,200円 |
※1 児童福祉法(18歳未満対象)と障害者総合支援法(18歳以上対象)によって、負担上限の月額が異なるため、詳しくはお近くの自治体等にご相談ください。
所得を判断するときの世帯の範囲は、以下の2つに分けられます。
- 18歳以上の障害者の場合:障害のある方とその配偶者の収入
- 障害児(18歳以下)の場合:保護者の属する住民基本台帳での世帯の収入
ただし、施設に入所する18歳、19歳の場合は、保護者の属する住民基本台帳での世帯となります。
障害者総合支援法について知り、支援を受けよう!

障害者総合支援法は、障害の有無に関わらず誰もが平等に過ごせる共生社会を目指すための制度です。
障害のある人の自立や社会参加を促進するために、さまざまなサービスが提供されます。サービス内容は介護や訓練といった生活をする上で必要な支援や、経済的負担の軽減などで、利用に関しては障害者本人の意思決定が重要視されています。
2022年度の改正では、多様化する障害者のニーズに応えるために、就労に関する支援が強化されました。障害者総合支援法への理解を深め、サービスを利用しながら、社会活動に参加していきましょう。
デコボコエージェントでは、障害のある方がやりがいを持って自分らしく働くための、就職・転職をサポートしています。自分の特性とマッチした障害者雇用の求人を検索したり、スカウトを受け取ったりと、気になる企業とつながることができます。
ぜひ、一度ご利用ください。

看護師として総合病院で10年間勤務。循環器科・救急科にて急性期看護を学びました。結婚を機にクリニックへ転職。現在はWebライターとしても活動しています。子どもの発達に不安を抱き、児童発達支援士を取得。障害のある方の不安に寄り添った記事を執筆します。


